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胡蝶の夢

心地よい夢を見た。

いつまでも見ていたい____、母体に抱かれるが如くの包容。

自身の全てを許容してくれる程の寵愛。

この世界は透き通った鏡の様な水面と、眼前の蒼空は青色のキャンバスに白の絵の具を垂らした雄大さを持っていた。

僕の顔は弛緩していた。息をするでもなくだらしなく開いた口はこの世の未練を感じさせないほどの羨ましさを持っていた。

僕は力が上手く入らないのに、寝そべった体を必死に起こした。

震える脚に重心を落とす様に僕は立ち上がった。

どうやら水面は立てる。蒼空と水面の果ての見えない境界は僕を祝福しているように感じた。

大空に右手を伸ばす。何かを掴むかの様に必死に探る右手はどこか痛々しさを醸し出していた。

だんだんと熱を帯びて行く。心臓から右肩へ、そして間接から指先へ。

感覚が鋭敏になる。五体からマグマの如く熱湯が湧き出る様な感覚。同時に針で全身くまなく串刺しにされるが如くの痛み。

耐えきれ無いほどの感覚の高ぶりを感じながらも、僕は掴もうとするのを止めない。

きっと、この手は自由を掴もうとしているのだ。かりそめの与えられた自由ではなく、不格好でも自分で手に入れるための自由を。

そう考えたとき、痛みや熱湯は形を持って僕を型どる。

大いなる力を引き出すための通路。何かを成すためのトリガーを痛みと共に体に刻まれたソレは____、魔術や呪術。ひいては魔法でさえも必要とされる回路_____。

魔術回路。


体の内部に這うようなソレは、完全に僕自身の肉体として変化した。

同時に、思考に映るその呪文(Spell)______

半ば無意識、そして殆ど意識的に呟く。

心を込め魂を燃やす様に、一点に。

この世界の形を___


「_____基本構造、把握」

その心理を知るべきと、頭のなかに強引に入れられていく情報。そして考えうるなかで最上位の哀れみ、不安、悲しみ、吐き気を催すほどの邪悪。

「構成元素、把握」

世界が世界で有るために、必要不可欠なその要素。この世全ての苦しみを凝縮したその構造に心が豆腐の様にぐしゃり、と潰されそうになり、耐える。

右手から集めている'この世全て'のあまりの膨大さに体全ての回路が悲鳴を上げ、濁流になすすべのない川や森や岩に成り果てる。

千切れそうになる体、途絶えそうになる意識を振り絞り言う。


____世界を自由へと昇華する、その言葉(Spell)を。


「制御、解放(Control release)」



そして、世界は崩れ去る。ただ一人の英雄を閉じ込めて________

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