表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢十六夜 第三夜 ヒーロー

作者: こたつみかん

夏の終わりの夕暮れ

陽が沈み切る直前の暗い空

西には分厚い黒い雲があり、その隙間から暗い赤が切れ切れに覗いている。


僕は暗く狭い団地の部屋の中で

明かりも点けずにテレビを見ている。

僕は小学4年生ぐらいだろうか。

ブラウン管の小さなカラーテレビの中では

怪獣とヒーローが戦っている。

ウルトラマンのようなヒーローだ。

外と同じように暗い所で戦っている。


やがて怪獣が倒れ、ヒーローが怪獣に向けて口から光線を出した。

青い光線を受けた怪獣はそれでも爆発しない。


僕はふと疑問に思う。・・・・・・・・・口から光線?

ウルトラマンは、いや、その兄弟たちも

誰一人として口から光線など出さないはずだ・・・・・・


見ているうちに青い光線は真っ赤な炎に変わっていった。

怪獣に降りかかる炎は放物線を描きながら黒煙を舞い上げている。

まるで火のついたガソリンをホースの先から浴びせるように・・・・・


気が付くと僕はテレビを見ているのではないのだった。

団地のベランダ通路の柱の影から怯えながらそれを見ているのだった。

もうそれはヒーローでは無かった。

それは口から炎を吐く巨大な人間だった。


炎を吐きながらそれは僕の方を見た。

大きな目が恐ろしくゆがんでいる。

その巨大な人間は、炎を吐き歪んだ目をした怪物は・・・・・僕の母親だった。


僕は柱の陰に隠れて体を丸めてしゃがみこんだ。

柱の向こうから母親がこっちを見ている。痛いほどの視線を感じた。


僕は頭を抱えながら何かを思い出しそうになっていた。

どうして僕が1人でテレビを見ていたのか、

どうして団地の暗い部屋にいたのか、

思い出すと気が狂ってしまうと思った。


思い出したくない。

思い出したくない。

僕は頭を抱えながらそれだけを思っていた。



分厚い黒い雲の隙間から


切れ切れに覗いている暗い夕日の赤が


禍々しく光っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お母さんに対するトラウマが夢となったのでしょうか……。 母の子に対する独占欲は、ときとしていびつに見えることもありますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ