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『Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第五話「Descent」

『Pandemic』 第五話「Descent」


pm22:43 準備が整い、降下作戦が開始された。


 2000m程上空からの降下とは言え、SL内なので落下死の心配も無い。ダメージアリ設定でも、僅かにライフが削られるが、直ぐに全快する程度なので気にする必要も無い。


 落下中、瑞人は心中で密かにこの状況は、佐武朗やクラブ『現実逃避』のスタッフ達が作り出した謂わば、自作自演のイベントなのではないだろうかと考えていた。

 最初に愛美が怯えたフリをして店内に入って来た時から、どうも話が上手く進み過ぎているように見えてならないのだった。


 愛美は雫と親しい様子であったし、その雫が異変をきたしたと言うので呼び出したが、店内では一度も姿を現さずに、床下からいかにもなソレっぽくしか見えない鉤爪を使って攻撃して来た。

 いつの間にか、店の客の一人である矢唖も仲間に引き入れて、悲鳴を上げる演技までさせて床下へと潜らせた。周囲の者達が怯える中で佐武朗が降下すると言い出すではないか。


 こんな状況はきっと、佐武朗やスタッフによるハプニングを装った臨時のイベントであろう。それならば、なるべく積極的に参加して、楽しむのが礼儀であろう。


瑞人 「佐武朗さん。ボクちゃんと分かってますから」

佐武朗「うん。助かります」


 佐武朗は瑞人の理解が早くて良かったなんて呑気に思っていたが、無論、この二人の会話は微妙に噛みあってなんか無い。

 実は佐武朗は、内心で別の作戦を秘めていた。愛美が逃げ込んできた当初は、雫と愛美の悪ふざけかと思っていたのだが、壺の下に落下した雫が鉤爪で襲い掛かって来た時から、いつもの雫の悪ふざけでは済まされないモノを感じていた。


 もしも、愛美の言う通り、雫がなんらかの異変を来たしていて、助けを必要としているのならば、自分なりに思いついた対処法を試してみたいと思っていたのだ。

 

佐武朗「皆、もうすぐ地上だけど、俺が雫ちゃんを引き付けるから、皆は隣へ向かって全力で移動してください」

春  「私も足止めを引き受けます」

一同 「「「了解しました」」」


 地面までの距離がグングン近づくと同時に、光点だった者達の姿が肉眼で確認出来るくらいになってきた。


衛  「これは・・・」

Milli「ちょっと・・・」

夜目 「罠だったかな(汗)」

瑞人 「ウソだろ・・・!?」


 光点だった化身達は、既に全員が雫同様に通常ではあり得ないような状態の化身と成り果てた異形の姿に成り果てて待ち受けていたのだ。


>pm22:42(ささやき)雪那「大丈夫?」

>pm22:42(ささやき)佐武朗「地上は変貌した化身しか居なかった。アイツらで一杯だけどどこからこんなに来たんだろう。これから切り込んでみる」

>pm22:42(ささやき)雪那「分かったわ。無理しないで気を付けてね」


佐武朗「とりあえず、皆で先に進んでくれ!!」

春  「後ろは引き受けました!」

一同 「「「ご武運を!!」」」


 佐武朗が黒龍刀Subuを両手に閃かせながら、手近に居た一体に切りかかるのとほぼ同時に、降下した化身達が手にした武器を使いながらアイツらを薙ぎ払いだした。


瑞人 「アレ? 思ったよりも結構簡単に倒せますねw」

統  「あっけないかも?」

春  「とりあえず、佐武朗さんと私と同じ班の人達だけ残って、アイツらの足止めをしましょう。残りは隣の島を目指してください」

瑞人 「なーんだ、僕はまたてっきり・・・ いいえ。何でもありません。了解です。」


 当初の計画通り、無理はしない。だが、佐武朗が切りかかった時といい、銃で薙ぎ払われる時といい、アイツらは何度か繰り返し切り付けたら比較的簡単に倒れてくれている様に思えた。


 「これならイケる!」全員の心に安心感と拍子抜けした思いが満ちてきた。


衛  「これなら、佐武朗さんの班だけ残らなくても、2つの班で掃討しちゃって、隣の島へは、様子だけ見に一班だけを送ってもイイんじゃないかな?」

Milli 「賛成!」

佐武朗「それじゃあ、作戦変更で、俺と統さんの班が掃討作戦で、Milliさんの班を隣へ偵察でいいかな? もしかすると隣でもアイツらが発生してるかもしれないから、その時は直ぐに知らせるように」

Milli 「了解」


 佐武朗から指示を受けると直ぐにMilliの班は隣の島へ向かう道を目指した。途中でアイツらが立ち塞がろうとしたが、乱打する銃火器の前では大人しくなる様だ。


佐武朗「雫ちゃん・・・ 見つけた!!」

春  「どうするつもり?」

佐武朗「落とす!」

春  「え?」

雫  「グルルルルルルルルルルrrrrrrrr!!!」


 佐武朗は、手にしたSubuを上段に構えると、一直線に雫へ切りかかって行った。春はその近くで佐武朗の行く手を遮ろうとするアイツらを狙っては撃ち殺していた。


 実は、佐武朗には降下前に思いついた秘策があった。以前から雫のPCパソコンの性能が低く、負荷を掛け過ぎるとログアウトしてしまうという弱点があった。それならば、強制的に負荷を掛け続ける事で、雫自身をログアウトさせてしまえば良いのだ。

 

 呆気ないほど、アイツらは銃火器や刀である程度ダメージを与えさえすれば、倒れ伏して行くのだ。この程度のものであれば、脅威ではない。これならば、雫のPCが処理しきれなくなるまで攻撃を続ければ良いだろう。「いける!」そう佐武朗達が思った時だった。


雫  「グアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

佐武朗「え!? 雫ちゃん!!」


 グキッ! ボキ! ベキッ!


佐武朗「ぐあぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・」


春  「佐武朗さん!!」

 

 佐武朗の攻撃を躱しながら背後に回った雫が、佐武朗を羽交い絞めにしたかと思ったら、信じられない行動を取り出したのだ。佐武朗の後頭部を割ったのだ。佐武朗の頭部はザックリと抉られ、有るハズの無い内容物まで剥き出しで見えている。


 ベシャッ! グシュッ! ブシャッ!

 ペチャ、クチャ、ジュルジュルジュル・・・


 つい先程、『現実逃避』の床下で聞こえたのは、化身の後頭部を割り、その中身を咀嚼する音だったのだ。本来化身の身体の一部とはいえ、割るとか目に見える傷を負わせることなど、不可能なハズである。パーティクルやテクスチャーを用いた効果であれば、血が流れた様に見せる事も可能ではある。しかし、それは装着すればの事であり、雫の様に他者の頭を割って、脳味噌を咀嚼するなど在り得ない。


瑞人 「そんな・・・・ まさか! あり得ないし!!」

衛  「ウソだろ・・・」


 後頭部を割られて、中身を咀嚼されてしまっている佐武朗は、何故か直立不動で時々ビクンビクンと痙攣を繰り返すだけだったが、背にした雫ごと倒れこんでしまった。


 周囲に居た者達も茫然とその光景を眺めてしまった。


春  「皆!!」

一同 「「「うわぁっ!!」」」


アイツら「クフゥ~ カッハァ~ グアアアアアアア」


 茫然と佐武朗が襲われる姿を眺めてしまったのが判断ミスだった。四方からアイツらに囲まれてしまい、次々と降下した者達が頭部を割られて喰われて行く。全身に噛みつかれている様に見える犠牲者達も居る。


 それは、別動隊として隣の島へ向かっていたMilli達の班でも同様であった。


Milli 「ちょっと! 立ち止まったらヤバイって!!」

夜目 「そんな事言われても・・・ 囲まれてるし!」

Milli 「SOSださなきゃ!!」

夜目 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 Milli達の班も、最初は快進撃を続けていられた。ところが、倒しても倒してもいつの間にか四方からアイツらが現れて来て囲まれてしまうのだ。一体この島だけで何体のアイツらが居るというのだろうか。SOSを発信する間もなく、降下した者達は全滅しそうになっていた。


>pm22:45(ささやき)雪那「どうしたの? 佐武朗と連絡がつかなくなっているんだけど」

>pm22:45(ささやき)春「ダメです! 全滅です!! 今すぐ助けて・・・」

>pm22:45(ささやき)雪那「呼ぶわ!」

>pm22:46(ささやき)春「・・・」


 春からの要請を受けて、雪那は即座に春を呼び寄せる事にした。同時に周囲に残っている者達に、降下した者達を手分けして呼び寄せるように指示を出した。


翠  「もし、雫ちゃんみたいな姿になってたらどうするにゃ?」

若狭 「そうね。心配だから、壁だけ作っておきましょうか」

真弓 「壁の向こう側にだけ呼び戻すんですね」

若狭 「そうすれば、戻った人が暴れだしても安全かもしれないから」


 若狭の言う通り、即席の壁を作り出して、その向こう側に呼び戻した者達が入れるようにしたのだが、肝心の降下した者達からの応答が途絶えたままになってしまった。


>pm22:47(ささやき)雪那「春ちゃん?」

>pm22:47(ささやき)春「・・・」

>pm22:48(ささやき)雪那「返事が無いけど、どうしたの?」

>pm22:48(ささやき)春「・・・・・・・」


 雪那の心にも不安が忍び寄っていたpm22:50。

 





降下班7分で全滅しちゃった・・・^^;

も少し引っ張っても良かったかしら?

などと迷いながら書いてます。

夜中に書いてるせいか数字間違ったり。。。(言い訳です;

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