第二十二話「幕切れはあっけなく」(最終回)
第二十二話「幕切れはあっけなく」(最終回)
am2:55
愛美、雪那、若狭、翠の4人は、遂に逃げるのを諦めた。四方を完全にアイツらに囲まれてしまったのだ。
手にした武器で最後の抵抗と近づく異形の物と化したアイツらを打ち倒すのだが、倒れる数より遙かに多くの者達が迫って来るのだからたちが悪い。
その上、打ち倒したアイツらは、90秒程で起き上がり、再び襲って来るのだ。最早防ぎようが無い。
愛美「ここで・・・ 終わりなのね」
雪那「みんな・・・ 今まで本当によく頑張ったわね」
若狭「あーあ、ここがゴールなのね」
翠 「もーちょっと違うエンディングが見たかったにゃぁ」
相変わらず4人共に言う事も考え方もバラバラである。だが、そんな4人を囲むアイツらの動きは、鈍く、少しずつではあるがジリジリと包囲の輪が狭まっている。
雪那「思えば、雫ちゃんから始まったのよね」
若狭「今じゃ雫ちゃんがどこに居るかも見えなくなっちゃたけどね」
翠 「これだけ集まってたら近くにいるかもしれないのにゃ」
愛美「あたしもあの時雫ちゃと同じくアイツらの仲間になってたら楽だったのかなぁ」
雪那「心配しなくても、嫌でも直ぐに仲間入りしそうだけどもね」
常ならば強気な発言で、他者の弱音を叱咤激励する事が多い雪那が、心挫けたような発言をし出した。これは先が無いな、と一同が思い出したその時だった。
愛美「ねぇ! なんか変だよ?」
翠 「あれぇ! アイツらにゃ」
若狭「こんな事ってあるのね・・・」
雪那「これって・・・ 奇跡かしら?」
五人を包囲していたアイツらの姿が、次々と消えて逝くのだ。まるで悪夢から覚めて、成仏でもしたかのように。包囲網の先頭に居た者達から一斉に消えて行くのだから、奇跡と思ったことも不思議では無いのだろう。
愛美「でも・・・ 何でかしら?」
雪那「このタイミングでねぇ?」
若狭「このタイミングでねえw」
翠 「オークが何か仕掛けたかにゃ?」
やがて、四人の周囲に居たアイツらは全て浄化された様に居なくなった。
まるで、アイツらが消滅したことを見極めたかの様なタイミングで、システムによる一斉通知が流れた。
am3:00|(システム一斉通知)
「Currently all servers are undergoing maintenance. A person who is logging in is forcibly terminated.
Loss due to this termination does not occur」
『現在、全てのサーバーがメンテナンス中である。ログイン中の者は強制終了させられる。
この強制終了による損失は発生しない。』
愛美「本当にオークが動いたみたいね!」
翠 「遅いののにゃ もっと早くだったら良かったのにゃ!」
若狭「まあまあ、問題が無事解決したなら良かったじゃないの」
雪那「そうね。失った者も多かったけど・・・」
四人が光に包まれて、強制ログアウトされたのはこの会話の直後だった。
am3:00 ようやく事態は終息した。
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am11:30(北米時間)
愛美達が助かったと胸を撫で下ろして、ログアウトする少し前に時間は遡る。
開発部長であるカークに命じられたロジャーは、SLを管理する全サーバーに仕込まれたウィルスへの対策について彼のオフィスでレベッカと共にBチーム全員の意見を聞いて、再度判断を仰ぐ為にカークのオフィスに戻っていた。
「対策の2つ目ですが、ハッキリ言って邪道もいいところです。
やはり、俺としてもお勧め出来ません。
が、現状でならば、仕方無いとも言えるでしょう。
Bチーム全員の意見も同じでした。
あえて選ぶのでしたならば、こちらの方がリスクを低く抑えられるかもしれないという意味でですが。」
「勿体ぶらないで、早く実行したまえ!」
カークに促された対策の方法についてだが
【対策2つ目】 問題の先送り
これは、個人が所有しているPCでも出来る方法だった。
即ち、『復元ポイントでデータを復元する』方法。
SLそのものは、膨大なデータを管理する為に、幾つものサーバーを利用している。
その管理元であるオーク社所有のサーバーを全部一斉に復元ポイントでデータを復元させる為に、一時的にダウンさせるのだ。
だが、先にロジャーも述べた様に、この方法は邪道であり、何の対策にも解決策にもならないのだ。
ウィルスを仕込んだ相手が再びサーバーにウィルスを送ったならば、そのまま再度感染してしまうのだから。
しかし、現状で何も対策を施さずに、ウィルスを蔓延させたままでは、オーク社の信用と技術力への不安や疑問が高まるばかり。
説明を聞いた時には、流石のカークもしばらく黙り込んでしまった。
それから、自分のデスクの上にある蓋付きのマグカップからコーヒーを啜った。
「・・・。
宜しい。その第二案をスグにでも実行したまえ。」
「部長!?
本当に宜しいのですか?」
思いがけない実行命令に、隣で黙って聞いていたレベッカからも疑問の声が出た。
「現状では、君のAチームでさえ、短時間でのワクチンソフトの開発は難しいのだろう?
であれば、ワクチンソフトの開発が間に合うまでの時間稼ぎだって構わない、と私は考えたのだ。
このままいたずらに時間を掛けているこの瞬間でさえ、莫大なマネートレードを失っているのと同じなのだからな。
決断するなら、これしか無いだろう。」
カークが真摯な態度と冷静だと分かる声のトーンで語り掛けたので、二人も本気なのだと分かった。そんなやり取りがあっての冒頭の会話だった。
「それでは、部長決済という事で、宜しいですね?」
「無論だ。
私には、専門知識は皆無だ。
だが、君達専門家が、私に提案して来た中で、最も即効性があり、尚且つ、被害を最小限に抑えられそうな提案が、この方法だと判断したのだ。
だから、私は君達を信じる事にしたのだよ。
何、もしこの方法で上手く行かなかったとしても、私が首を挿げ替えられれば済む話さ。
しかも、この会社がダメでも、私なら幾らでも元の営業畑で欲しがる会社は在る。
気にする事は無いさ。」
「「部長・・・」」
思いがけないカークの漢気を見せられた気がした。
今までは反目した事も多かった二人だが、これからは、カーク派になっても良いかなと少しだが心が揺すぶられた。
それからの展開は早かった。
欧米型企業ならではの、決断の早さと、一度決めたら突き進む潔さで、ラボでのミニ検証実験が行われた。
「成功だな、ビル!」
「ええ、クローズドではありますが、ベータ版での検証実験では、復元ポイントに戻すだけなので、スグに感染前の状態に戻りました。」
無論、復元ポイントに戻すだけなので、商売や物品の受け渡し等のデーターは失われてしまう。商取引やネットマネーを売買した者達にとっては、不満も出る事だろう。
それでも、現在の状態になる直前での復元ポイントが保存してあるので、感染直前までの取引には何ら支障は出ないのだ。
検証実験の結果も出たので、SL全体のサーバーを感染直前の復元ポイントまで戻す作業が始まったのが、北米時間で正午。日本時間で午前3時だったのだ。
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エピローグ
愛美「雫ちゃ~」
雫 「なぁにぃー 愛美ちゃ~」
愛美「あの時って何考えてたの??」
雫 「あの時ってー??」
愛美「この前の大騒ぎの時のアレ!」
雫 「あーw んとねぇー」
雫があちこち脱線しながら話した内容によると、どうやら『beast mode』騒動の最中もちゃんと意識は保ったままだったらしい。
それどころか、積極的に自分たちの仲間を増やそうとしたのだと言うではないか。
愛美「どーしてそーなったの!!」
雫 「えとねぇ~」
『beast mode』中に雫やアイツらと化したプレイヤーが見ていた風景は、実は自分たちが今見ている風景と全く異なった物であったと聞かされた愛美は、アイツら化したプレイヤーたちが写真をアップしているブログやインスタグラムを見て唖然とした。
愛美「ナニコレ・・・!?
ってゆーか、どーしてこーなったのよ!!」
『ファンタジー』という言葉でしか説明がつかなかったのだ。
空を流れる雲や海で反射する水や波。登場しているプレイヤーに至るまで、全てがデフォルメ化されてファンタジー一色に染められた世界。
そんな世界の中で、自分たちのように感染しなかった者達だけが妙にRLに近い化身のままで逃げ惑う姿がしっかりと写真に焼き付けられていた。
雫 「うん。だからさー
愛美ちゃたちに声かけたり、近づくんだけど、めっちゃ逃げられちゃったじゃん?」
愛美「それで・・・ 追いかけまわしてたの?」
雫 「うんw」
愛美「・・・雫ちゃ・・・今度からはあたしを追いかけないでね?」
雫 「どーしてよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!!!」
愛美「そっとしといてつかあさいっ!!」
雫 「納得行かなーい!!」
そんな平和な会話が交わされた事件から数日後のpm21:00
SL内は今夜も平和だ。このまま何事も無く終われればだが・・・。
~プチ❤オマケ~
某島上空sky-box『雫の巣』内にて、とある日の夜。
雫 「愛美ちゃー」
愛美「なぁに、雫ちゃ?」
雫 「んとねー なんぞ見つけたー♪」
愛美「・・・え?」
雫 「あのねぇー Berserkerって書いてあんだけども、コレって米国語?
バーサンカイ? 晩餐会??
あ。バーサーカ・・・」
愛美「もーーーーーーーーーーーーーーーー
嫌ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
終
今回で最終回です
ご愛読ありがとうございました♡
~次から裏編を書く予定ですけど蛇足かも?
(雫視点からのお話しがメインの予定です)




