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『Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第二十話「犠牲は後味が悪いと思うのだけども」

第二十話「犠牲は後味が悪いと思うのだけども」




am2:24


 階下から来たアイツらが、徐々にだが確実に最上階にある屋上とモールを仕切る壁際に近付いて来ている。この状況では、一人でも『座る』を利用すれば、最早障害物は無い。


 モールの屋上に設置してあるフェンスに近付いて行った翠がポツリと呟いた。


翠  「・・・仕方ないにゃ」

 

 果たして、これは諦めの敗北宣言なのだろうか?


雪那 「・・・ココで終着点という意味かしら?」


愛美 「そんなぁ・・・」


 他の者達も皆一様に不安を顔に浮かべている。

 

 逃げられるところまで逃げ切った。

 もう十分でしょう。

 ならいっそう・・・


翠  「仕方ないから隣の建物に、ジャンプして逃げるにゃ!!」


一同 「「「ホワッ!?」」」


 ここに来て翠は、起死回生の策をサラリと言ってのけたのだ。


 翠の説明によると、現在一同が居る五階建てのモールから、隣接している建物の屋根や屋上部分に向けて、ジャンプする事で、路上に溢れているアイツらの頭上を逃げるというルートを使おうというのだ。


雪那 「プッ クククククっw」


真弓 「それは楽しそうですねw」


若狭 「翠・・・w

    流石ねw」


愛美 「落ちなきゃいいけど・・・」


 自分達の発想の上を行く翠の逃走アイディアに、愛美を除く者達は出口の見えない逃走劇に希望を見出した様だったが、やはり愛美には不安が残る様だ。


翠  「とりあえず、このモールのスグ隣に見える3階建てにジャンプするにゃ!

    あそこなら、次にジャンプして逃げれる建物が隣接してるのにゃ!!」


 翠が指さした3階建ての建物は、モールと2~3メートルしか離れていない距離で隣接されていた。SL内でこの距離は、ほとんど密接している様なものだ。


一同 「「「了解!」」」


 言うが早いか、次から次へと隣接する建物の屋根や屋上に飛び移った結果、一同は、なんとか隣の島の一歩手前まで逃げ切る事が出来た。




雪那 「あと一歩ね!」


翠  「この建物からは、ナナメにジャンプするのにゃ!

    そーやって、隣の島まで一気に逃げてしまえるのにゃっ!!」


 島の境という立地条件だったお陰もあってか、最後の2階建ての建物の下にある道路にアイツらの姿は少なかった。


真弓 「コレなら、最悪地面に落ちてしまっても、アイツらに銃弾を浴びせれば、隣の島まで逃げ切れそうですね!」


若狭 「うんうん」


 ここから見える隣の島には、建物は無く、クルミン島群と似せたのか、高い壁状のバリケードと監視塔、塹壕や重火器を設置した陣地が見えるが、人影は一切見えない。


翠  「それじゃー 『せーのっ!』

    でジャンプするにゃ!!」


一同 「「「OK!」」」


翠  「せーのっ!!」


一同 「「「えいっ!!」」」


 5人は一斉にジャンプした。


愛美 「あ・・・」


 ところが、愛美だけが高さが足りず、道路へ向けて落下してしまった。


一同 「「「愛美ちゃんっ!!」」」








 愛美を救出する為に、残りの4人は銃を乱射しながら路上に立って居た。

 その過程で、真弓が犠牲となってしまった。


愛美 「真弓ちゃ・・・

    ゴメンねぇ!!」




 愛美が地面に落下して、最初に気が付いたのは、真弓だった。


 彼女は、愛美のスグ近くに居たアイツらの一人に向けて銃弾を浴びせた。

 90秒だけの足止めだが、一体に対しては有効な足止めだった。


真弓 「さ、愛美さん、今のうちに逃げてっ!

    ここは私が守るから、愛美さん銃苦手でしょ?」


 こんな状況でも、足手纏いなハズの愛美に向けて優しく微笑みながら護ろうとしてくれる。真弓が男だったらイケメンと呼んだだろうに。性格イケメンでも良いのかしら。


 幸い見える範囲では、アイツらは少ない様だし、ここは真弓の提案通り、銃の扱いが苦手な愛美は、戦力外なので、逃げるしか方法は無いだろう。


愛美 「ありがとっ!

    真弓ちゃも、早く逃げてねっ!!」


真弓 「分かってますっ! 向こうの建物の陰から複数のアイツらが来るみたいだから、そいつらの足止めに成功したら隣の島へ逃げ込みますっ!!」


愛美 「気を付けてねっ!!」


 真弓は、愛美が隣の島へ向かって走り出したのを確認すると、今度は自分達が逃げた時に、スグ追いついて来るであろうアイツらの先頭集団の一部でも足止め出来ればと、接近しようとして来る数体に向けて弾幕を張った。


 その奮闘のお陰で、地面を歩き回っていたアイツらの先頭集団のほとんどは倒れ伏し、90秒のインターバルタイムを稼ぐ事が出来た。これで一安心だろう。


雪那 「真弓っ!

    もう十分よっ!!

    貴女も早くいらっしゃいっ!!」


 殿がしっかりと脅威を排除してくれたので、他の者達も無事に隣の島へ逃げる事が出来た。


 あとは、最後まで残っていた真弓が、数歩移動すれば、隣の島へ移動出来る距離まで近づいた時だった。


若狭 「ちょっ!?」


雪那 「真弓っ!!」


愛美 「そんなっ・・・!?」


翠  「・・・ウソにゃ」


 一同がジャンプして移動して来た2階建ての建物の屋根から、複数のアイツらが斜め下に居る真弓へ目掛けて飛び掛かって来たのだ。


真弓 「・・・!?

    そんなっ!!

    ここまで来てなんてっ!!!!!」


アイツら「「「クゥ~~~っ」」」

    「「「コァァァァァァァァァァァッ」」」

    「「「クッハァァァァァァァァァァァァァァァッ」」」


 前後左右、あらゆる方角から一度に囲まれてしまった真弓に、最早脱出の道は残って居なかった。


真弓 「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」


 ガブリッ!

 

 非情にも、真弓の全身に纏わり着いたアイツらはいたる所に乱杭歯を立てた。


 ガリッボリッボリッゴリッ・・・・


 真弓の綺麗な手が、ヒラヒラとバイバイをするかの様に揺れたと思ったら、アイツらの群れの中に飲み込まれて行き、後には不気味な破砕音だけが響き渡っていた。




愛美 「せっかくココまで逃げて来たのに・・・

    あたしのせいだ・・・

    ゴメンなさい・・・」


雪那 「自分を責めても仕方ないでしょっ!!

    犠牲になってくれた真弓の為にもっ!!」


若狭 「・・・辛いけど、今は前を向いて歩いた方が良いと思うわ」


翠  「この島も安全かどうかは分からないのだからにゃ」


 そうなのだ、状況は何も改善している訳では無い。


 むしろ、土地勘の無い島に逃げ込んでしまったので、むしろ悪くなってしまったのかもしれないのだから。







 落ち込む愛美をフォローする間も惜しいので、とりあえず、無茶だけしなければ良いという思いを胸に、一同はクルミン島群にある外人が所有すると思われる島に逃げ込んだ。


 高く聳えるバリケードとゲートはあったが、不思議な事にゲートは開放されており、詰め所や見張り台にも人影が一切見えない。


 その割には、島の中央部分に光点が複数集まって居るのがミニマップに表示されているのを一同は確認していた。


 この光点が全てアイツら化していたならば・・・


 その時こそ、本当の意味で『詰んだ』となるのだろう。


若狭 「この島って、ガイジンさんが所有してるのよね?」


翠  「どうも米国人女性が島のオーナーみたいにゃ」


雪那 「キャットって言う人なのね

    友好的な人だと良いのだけども」


 ゲートで感じた違和感が頭の中では警鐘を鳴らしていたが、目に見えて脅威でなければ、少しくらいは現実逃避したいのだ。


愛美 「・・・」


翠  「あれ?

    陣地はあちこちにあるのに、誰も守って居ないのにゃ?」


若狭 「それにしても、国際色豊かとゆーか

    設置されてる武器もバラバラで統一感が無いわねw」


雪那 「ガイジンさんってそんな感じじゃない?」


 バリケードやゲート、小さな陣地もそうだが、設置されている武器が本当にバラエティーに富んでいた。


 現代の武器もあれば、近未来やSFに登場する様な、戦車やら戦艦、宇宙船みたいなモノまで置いてあったのは、ある意味で和んだ。


 こんな異常事態でなければ、ゆっくりと見学に来ても面白いかもしれない。


翠  「ところで・・・」


雪那 「うんうん・・」


若狭 「・・・動いて・・・るわね」


愛美 「・・・イヤ」


 島の中央に集まっていた光点が、一同の居る方角へ向かって移動を開始したのだ。


 ここでまた最終ラウンドを迎えなければならないのだろうか。


 それとも、クルミン島群の様に、住人からの歓待を期待しても良いのだろうか。




am2:34





 


ここにきてメンバーからの犠牲者が・・・

(てゆーか、今までがラッキーかしら?)


次は夕方6時に予約投稿です♪



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