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『Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第十九話「追い詰められたら諦めしか選択肢は無いのでしょうか?」

第十九話「追い詰められたら諦めしか選択肢は無いのでしょうか?」




am2:14


 仲の良い親友だと思っていた雫。

 二人でいつも楽しくダベったり、ダラけながら遊んだ日々。

 そんな明るく楽しい時間は、雫の一瞬の判断ミスで吹き飛んでしまった。


 あの時、雫が暇を持て余していなかったなら・・・。

 あの瞬間もっと強く止めていれば・・・。

 それよりも、あの変なメンテナンスさえ無かったなら・・・。


 愛美の胸には、幾つもの自責の念と葛藤が。

 雫に対しても、責めたい気持ちと止められなかった後悔が。


 それも最早今更だ。


 全ての災いの元凶。


 SLセブンスリーフ内に存在する化身達を狂わせ、次々と他者を襲い続けて増殖している悪夢のウィルス。


 この爆発的なウィルス感染者と見られるアイツらを最初に生み出した雫。

 その雫に、今また新たな動きが生じた。


愛美 「雫ちゃ・・・ 今度は何を・・・・?」


 愛美達は、逃げ込んだモールの二階部分に移動して、窓から一階を見下ろしていたが、押し寄せたアイツらの群衆の中に、雫の姿が認められた。


 その雫が、モールの内側に向かって鉤爪の伸びた手を差し出していたのだ。


 しかも、その手先からは『作業中』を表す波動の様なパーティクルが、ポワポワとモールの内側へ向けて発信されているではないか。


 これまでの出来事から、どう考えても悪い予感しかしない。

 

雫  「・・・ウグ゛ゥ・・・グフゥ・・・w」


 今や全身蒼白となり果て、鉤爪に乱杭歯と異形そのモノにしか見えない雫の唇からは、相変わらず意味不明な唸り声や呟きが零れるが、時折意味がありそうに聞こえる事があり、聞く者を混乱させる。


 特に、歓喜や嬌声にとれるモノが混じっているから尚悪い。


 本当に喜びや楽しさを意味しているのか、それとも偶然にその様に聞こえてしまっただけなのか。

 

 もし、前者なら雫には『理性』が残っており、これまでの追撃も本人の『意思』に基づいた行動となる。後者なら、悪意を持った他者によるウィルス攻撃の『不幸な犠牲者』であり、これまでの行動の一切の『責任は雫には無い』のだから。


 愛美達としては、後者であって欲しいと望む。


 共に遊んだ仲間として、雫がその様な『悪意』を自分達に向けるとは考えたくも無いのだから。それに、今後の付き合いだって・・・。ねぇ?


 


 愛美達が階下の雫に注視していると、一瞬で雫の姿が消えた。

 と同時に、自分達の真下に橙色の光点が出現していた。


雪那 「・・・まさか!!」


翠  「ココで『座る』を使われたのにゃ・・・」


一同 「「「そんなっ!?」」」


 雫の姿が消えたのは、マジックでも何でも無い。


 彼女は、自分の腕を前方に伸ばして、モールの建物内にある何の変哲も無い『ベンチ』に『腰を下ろして座った』だけなのだ。


若狭 「これまでも、こうやって侵入されていたのね・・・

    驚いたわ」


真弓 「飛行機の時の謎が解けましたね・・・

    嬉しくは無いケド・・・」


 実は、日の丸エアフォースワンの時も、クルミン島での南国カフェ内部への侵入も、全ては同じ手口だった。


 SL内で予め設定されている『座る』という『アニメーション』の動作で、施錠ロックされた建物内部や乗り物に侵入する事が可能なのだ。


愛美 「そゆえば、雫ちゃってば、しょっちゅう勝手に『座る』使ってアチコチ侵入してたっけ・・・」


真弓 「出来ればこのタイミングで使って欲しくは無い方法ですね・・・」


 一同は『激しく同意』という感じでコクコクと繰り返し頷いていた。


雪那 「・・・って、このままじゃスグにアイツらが大量に押し寄せて来るんじゃないかしら!?」


一同 「「「あっ!?」」」


 雪那の指摘は、正しかった。


 雫を中心に、次から次へと橙色や灰色の光点が階下に集まり出したのだ。最初に侵入した雫が、仲間をテレポートで呼び寄せているのだろう。


 呼び出された者達が更に、仲間を呼び寄せる。ネズミ算式にアイツらが階下に増えて行く種明かしが奇しくも実演されていた。中には、呼び出されてスグに階段へ向けて動き出している光点も多数ある。


若狭 「とにかく、今は上へ逃げるしか無さそうね!!」


一同 「「「OK!」」」


 階下の光点が二階へ辿りつく前に、上層階へ移動しなければ、一同もまたアイツらへと変貌を遂げてしまう。


 本音を言えば、ここまで追い詰められた以上は、逃げ場も限られてくるのだろうから『いっそこのままアイツらの仲間になってしまった方が楽なんじゃないかしら・・・』という囁きが甘美に思える程、状況は悪い。




 とりあえず、逃げ場は上層階しか無いので、モール内に設けられていた階段を昇って、ひたすら階下から徐々にだが近付きつつあるアイツらとの距離を離したい。


だが、その上層階も間もなく最上階となる。


雪那 「五階が最上階なのね・・・」


愛美 「っ!? 

    どうするのっ!!

    スグ下まで来てるよっ!!」


 高層階モールとはいえ、SL内での高層建築物は、あまり意味が無いのと、あまり階段ばかり多くても、お客さんが面倒臭がって買い物に来てくれなくなるので、10階以上のモール等はあまり無い。


 テレポーターを使っても、あまり広すぎるモールは、目当てのお店を探すのも面倒なのは、現実世界(RL)と似ているのかもしれない。


 翠  「そこの扉を開けるのにゃっ!!」


 モールの最上階である五階には、他の階層と異なる点があった。最上階全部のフロアを売り場にするのではなく、『屋上』と呼ばれるスペースが設けてあったのだ。


 その屋上部分へ向けて、一同はひたすら逃げた。


愛美 「・・・それで、壁と扉一枚隔てて、またアイツらが近付いて来るんだけどぉ

    この先はっ!?」


一同 「「「・・・・」」」


 完全に詰んだ様だ。


 建物の外には、島全体の其処彼処にアイツら化した化身が溢れており、路面を走って逃げるのも困難な状況だったから、モールという遮蔽物がある建物内に逃げ込んだのだ。


 しかし、遮蔽物なら有効だと思って避難した先で、まさかの『座る』での建物内部への侵入を容易く許してしまい、止む無く上層階へと逃げて来た。


 そして、今、最上階の屋上には、まばらに設置された『ベンチ』が4脚ある。


 ベンチ全ての『座る』アニメーションを阻む方法が一つだけあるにはある。

 

 全ての『ベンチ』に、人一人座れない人数で、専有してしまえば良い。


 だが、四脚のベンチに、この場に居る5人全員が腰を掛けても、二人掛けベンチなので、3人分の余剰が生じてしまう。


 いずれ、雫が階下から来れば、否。雫以外でも、『座る』だけなので、アイツらが近付いて来ただけで、一人でも『座る』を利用すれば、障害物は無い。


翠  「・・・仕方ないにゃ」


 そう言って、翠はモールの屋上に設置してあるフェンスに近付いて行った。


 これは諦めの敗北宣言なのだろうか?




am2:24


も少しでゴール(最終話)が見えて来たかしら~

ってゆー処デス☆彡

次は月曜0時に投稿予約してます♪

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