第十八話「望まぬ再会」
第十八話 「望まぬ再会」
AM1:59
とある島での出来事。
この島には、現代日本に似せたのか、和風ながらも近代的な建物群がある程度は纏まって建てられていた。建築物群が遮蔽物となり、追う者も追われる者も隠れ易い島ではある。
日本時間での真夜中でもあり、普段であれば人影も少ない時間帯だというのに、今夜はやけに人影が多い。否。多すぎるくらいだろう。
愛美 「ハァッハァッハァッ・・・
さっき、確かに・・・
雫ちゃがアイツらの群れの中にいたわ・・・」
真弓 「とうとう追いつかれちゃったって事でしょうか・・・」
若狭 「そうかもしれないわね」
雪那 「とにかく逃げなきゃ!」
久留美と夢羽、二人にも連絡がつかなくなってしまった今、一同に出来る事と言えば、逃げるだけ。正しく「逃げるんだよー」と猛ダッシュで雫やアイツらとの距離を引き離したいところだ。
雫 「・・・ウグルルルルルルルルルルルルルルルァァァァァッ!!
フッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
ゴアッゴアッゴアッ!!」
相変わらずのやや斜め前傾姿勢のまま、雫は鉤爪の生えた腕を前方へ伸ばし、追いかけて来る。愛美達を狙っているのが死んだ魚のような目ではあるが、視線からもありありと分かる。雫だけでは無い。アイツらと化した化身達が四方から寄せて来ようとしていた。
愛美 「雫ちゃ・・・ どーしてこんなコトに・・・・・・
もぉ・・・ 嫌だよぉぉっ!!」
雪那 「アミちゃん! しっかりしてっ!!」
真弓 「そうよ! 早くしないと・・・ アイツらがっ!」
若狭 「コッチよっ! その先で曲がればなんとか!!」
翆 「アイツら来るよっ!!」
全力で人気の無い街角を走り続ける美女4人と猫耳少女が一人。
後ろを気にしながらも立ち止まることは許されないのだ。
最後尾を走る翠から弓を弾けば届く程の後方には、有象無象な群衆が吸い寄せられる雲霞の如くに彼女達へ駆け寄ろうとする。だが、群衆の様子が尋常では無い。
どの目も焦点が合わず、曇り硝子のように澱んでおり、顔はアラバスタの様だ。歩く足も千鳥足の様でありながら、その割に早い。前傾姿勢のまま、無表情で突撃して来る口元には、異様に伸びた乱杭歯が怪しく光る。
愛美「雫ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
愛美の叫び声が虚空へ霧散する午前2時。
クルミン2の街角での出来事であった。
先程の若狭の指示で、一同は少し大きめな建物の角を曲がって、少し幅の狭い裏路地に逃げ込んだが、四方から押し寄せて来るアイツらにも見られてしまっている。ここにアイツらは押し寄せて来るのは時間の問題だ。
ならば、なんらかの対策を施さなければならない。だが、自分達が所属しているグループの土地では無い為、飛行機内の様なオブジェクトを作成したり、持ち物をRezする権限も持っていない。
単純に「持ち物を装着」する事は可能だが「装着」では、物理的に押し寄せる化身
(アイツらを含む)の接近を阻止する事は出来ない。
乗り物や遮蔽物も無い。
かといって、装着では約90秒だけの時間稼ぎしか出来ない。
状況は、完全に手詰まりだ。
翠 「ねえ、この建物って中に入れるみたいだにゃ?」
若狭 「あら、本当だわ!
一旦ここに逃げ込んじゃダメだしら?」
愛美 「もー疲れたよぉ・・・
ちょっとだけでもいいから、休憩したいから、賛成!」
雪那・真弓「「賛成!」」
『現実逃避』からの逃避行続きで、皆疲れが溜まってきている。
ほんの一時凌ぎかもしれないが、それでも構わなかった。
一斉に大きな建物の中に入って行った。
翠 「この建物って・・・」
真弓 「ショッピングモールですね」
若狭 「そうみたいね」
愛美 「うぅ・・・
ゾンビ映画とかによく登場する様な展開になるのかしら・・・」
雪那 「・・・それはどうかしらね。
SL内のモールって、RLのとは違うから・・・」
映画等に登場する現実(RL)のショッピングモールでの籠城戦では、ショッピングカートや土嚢等を窓際や出入り口に積んで、武器弾薬や飲料水と食料の確保、生活必需品を利用しながら中長期に渡ってゾンビ等のモンスター化した者達と壮絶な戦いを繰り広げる光景が目に浮かぶと思われる。
だが、SL内のモールでは、第一に食料の必要性が無い。
飲食をしなくとも化身は死なない。
武器弾薬についても、扱ってるモールもあれば、全く扱っていないモールもある。
土嚢等のバリケード作成についても、モール内で設置好意(Rez)が出来れば、オブジェクトや所有物を地面に向けて設置すれば可能だが、Rezそのものが出来なければ不可能だ。窓も割れないから補強の必要すら無い。
そして、モールのデザインも千差万別過ぎて、只の青空市場みたいなモールもあれば、立派な建物のモールもある。
今回一同が逃げ込んだモールは、5階建てのテナント募集形式のモールだった様だ。
SL内モールにも色々な運営方法があり、自作の品物を販売したいクリエイター達が、モールに土地を借りて店を出すテナント方式が多い。
他にも、商品を土地のオーナーが「権限ごと譲り受けて販売したい。売り上げから場所代を差し引いて振り込むから。」というモールも見かけたが、恐らく不人気だったと思われる。
直接売り上げがクリエイターに入る方が、販売個数が把握出来るし、売り上げを誤魔化される心配も無いからだ。
ともあれ、一同が逃げ込んだモールには、手動式の扉があり、もしかしたら、扉を閉めてしまえば、「アイツらには開閉出来ないのではなかろうか」という一縷の望みもあった。
雪那 「早く!
皆、急いでっ!!」
真弓 「殿は私が勤めますから!」
若狭 「銃を構えたのね」
真弓 「気休めだけど・・・
一時的とはいえ、足止め出来ますから!」
若狭 「そうね」
翠 「頼むにゃ!」
次々と扉の内側に吸い込まれるように飛び込むと、最後に真弓が入って扉を閉めた。
アイツら「「「ウグルルルゥーーーーーーーーーー」」」
「「「ゴァァァァァァーーーーーッ!!」」」
「「「ウ”----------ッ」」」
一同がモール内に逃げ込んで間もなく、モールを取り囲むようにアイツらが押し寄せて来た。そして、建物内に入ろうと、手を伸ばしたり、入口にある手動式ドアを鉤爪で引っ掻く仕草を始めた。
若狭 「・・・やっぱり、気持ち悪いわね」
翠 「ロメロ映画みたいなのにゃ・・・」
真弓 「いつまで保つかしら・・・」
雪那 「とりあえず・・・
上に逃げた方がイイんじゃないかしら?」
偶然にでも手動式ドアが開いてしまったら。
そう考えると、恐怖感が増す。
ならば、一階部分に留まるよりも、上層階へ上がった方が少しは時間が稼げるかもしれない。本音を言えば、稼いだ時間で状況が変化する兆しすら見えてはい無いのだが。
それでも、このまま座してアイツらに捕食される時間を短くする気も起らないので、当ても無く上層階へ移動することにした。
翠 「流石はクルミン島群にあるモールにゃ
マニアックな商品が多いのにゃw」
若狭 「そういう意味では今回は、当たりだったかもしれないわねw」
翠と若狭の褒めるモール内の商品とは、銃火器の種類の多さと充実ぶりだった。
島には、個性がある。
その島に住んでいる住人達がどんな事に興味を持っているのか。
それは、住人の趣味や興味によって、島に存在するモール内の商品に色濃く反映される。
クルミン島群に住んでいる住人達の多くは、「クリエイター」と呼ばれる自作の品を開発し、販売する者達が多く住んで居た。
そのクリエイターでも特に、銃火器や戦闘に関する品を作り出すクリエイターも複数が住人として島内に住んで居たおかげで、モールにも銃火器が多数販売されていたのだ。
翠 「んー それじゃー 今回はコレかにゃ♪」
若狭 「わたしは薙刀でも使ってみようかしら」
真弓 「銃はよく分かりませんけど・・・
『下手な鉄砲も』ってゆーから、弾が多く撃てるのってどれでしょう?」
雪那 「それなら、こっちの銃がいいんじゃない?
真弓狙うの苦手でしょ?
あんまり狙わなくっても斉射すれば、一時的とはいえ、足止めできるから」
愛美 「やっぱし、銃は苦手~~~っ!!」
雪那 「愛美ちゃんは、最後の最後だけ。
どうしても、すぐ傍まで近づいて来てたら、狙う必要すら無いから大丈夫よ。」
愛美 「その時って・・・・
囲まれてたりしたらダメなんじゃ・・・」
一同 「「「・・・・・・。」」」
悲観的だけど、正鵠を得ている愛美の問い掛けには、誰も回答を与えたいとは思えなかった様だ。
愛美 「それよりも、一階下の窓の外!!」
一同 「「「え?」」」
真弓 「アレは・・・」
愛美 「雫ちゃ・・・。
こんな形では会いたく無かったよぉーっ!!」
異形の者と化した雫の姿がハッキリと捕らえられた瞬間だった。
思えば、雫が変なモノを興味半分で見つけてしまい、好奇心から愛美の制止を無視した結果、今回の事態になってしまったのだ。
『現実逃避』でも、雫をTPで呼び寄せてしまった結果、矢唖が最初の犠牲となり、アイツらを呼び寄せられてしまい、次々と客達が襲われ、逃避行が始まった。
全ては、雫から始まったのではなかろうか?
そんな風に考えてしまうのは、愛美一人だけでは無かったのではなかろうか。
そんな雫にまた動きが生じた。
愛美 「雫ちゃ・・・ 今度は何を・・・・?」
am2:14
やっと第一話に繋がりました☆
てゆーか投稿日時予約を一週分間違ってしまった件について・・・(涙目
という訳で一日ズレての投稿ですの^^;




