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『Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第十六話 「小さな恋」

第十六話 「小さな恋」




北米時間AM 9:00(日本時間am0:00)



 愛美達一同がアイツらと遭遇していた時間より少しだけ前のとある島での出来事だった。



チャーリー「ヘイ! ブレッド! 何やらお隣の島では軍隊ごっこでも始めてるらしいぜっ」

ブレッド「なんだって! そりゃ楽しそうだなw 俺達も何かやらねーか?」

ドグ  「隣の島はいつも祭りで盛り上がってるらしいじゃないか、こっちでも対抗して盛り上がろうじゃないか」


キャット 「あんたたちは、いつもそーやって何かしら理由を付けては楽しみたがるのね」

チャーリー「なあ、キャットや、そー言うなよ。俺達ちゃ盛り上がれるなら、理由なんて何だって構わなねーんだからよ」


キャット 「あー はいはい、とりあえず、オーナーであるあたしにさえ迷惑かけないってゆーんなら、別に何をやっても構わないのよ?」

チャーリー「掛けない掛けない! てゆーか今までだって迷惑なんて掛けた事ねーだろ?」

ブレッド「チェーリーの言う通りだぜ! 子猫ちゃんはちょーっとばかし、神経質なんじゃねーかい?」


キャット「あー ブレッド、あなた今月の家賃未納よね。今週中に払わないなら退去だけど?」

ブレッド「うっひー ヤブヘビ踏んじまったいっ! 大丈夫だって、ちゃんと週末までには払うさ。俺が嘘ついた事なんてねーだろ?」


キャット「あー あなたがこの島に住むようになって2年半。その間で少なくとも3回は『頼む! もう少しだけ待ってくれっ!!』って懇願されてますけど?」

ブレッド「・・・ぐほ! だが、確かに少しは遅れたさ。それも認めよう!

だがしかし、その度にちゃんと支払いはしたじゃないか!!」


キャット「あー そうね。確かに、あなたは遅れはするけど、最終的にはきちんと家賃を納めているわね。その点は信頼できると思うわ。」

ブレッド「そうだろそうだろ!」


キャット「あー でもね。家賃を遅れないでキチンと納められるなら、その方がもーっと信頼は厚いのよ?」

ブレッド「・・・分かった。今度からはキチンと遅れないようにするから~」


キャット「あー そのセリフもこれで4回目ね。」

ブレッド「参りましたぁ!!」


 とある島でアイツらなんて無関係とでも言いそうな感じで、気軽に会話を交わす者達の姿があった。ここは、米国人であるキャットと呼ばれた白人女性化身が所有する島の一角。複数の英語圏の者達がこの島で生活していた。

 ブレッドは、黒人系化身で大男。ドグは白人系で平均的身長で特徴もあまり無い。チャーリーは黄色のTシャツ姿で、目鼻立ちがやけにシンプルな子供位の身長で頭髪が薄かった。他にも複数の者達が集まって居た。


 時にはイベントを開いたりして、他者と交流する事をこの島の住人達は基本的に好んでいたので、この日も多数の者達が集まっていた。


 こんな朝からログインしている住人達だが、島を所有しているキャットはともかく、様々な国々からログインしているので、住人にとって必ずしも朝とは限らない時間帯でもあった。


 そんな彼等が話題にしているのは、隣にある日系島群の住人達が、突然、島と島の境に巨大な城壁を作り、自由に出入り出来ない様にゲートまで作成している事、武装してなにやら軍隊の様な有様になっていた事などについて、お祭りやイベントでも始めたのかと認識していたのだ。


 彼等がログインした頃には、アイツら化した化身達が各島で住人達を蹂躙し、感染は拡大の一途を辿っていたのだが、たまたまこの島の住人達は、未だ感染して居なかった様だ。


 それでも、友人関係からアイツらについての情報をそれなりに集めたはいたが、本音を言えば『触らぬ神に祟り無し』であり、このまま自分達の島からは犠牲者を出したくないと思っていた。


 とはいえ、何ら対策を施さないまま無策という訳にもいかず、それなりにお隣の日系島の真似をしてみようという話しの流れになった。


キャット「あー それじゃーキャッスルが隊長で、マッスルが副官ね。後はテキトーによろしくー」

キャッスル「畏まりました。お嬢様。」

マッスル「ウッス!」


 キャッスルと呼ばれた眉目秀麗なバンパイア姿の化身と筋骨隆々なボディービルダーみたいなマッスルが即答した。日本と違って、海外では従軍経験者がほとんどだ。それぞれの国で徴兵制があり、徴兵期間は国によって異なるが、大抵は2年位は軍隊で勤務した経験がある。


 その従軍経験を生かして、今回も20名程が集まって自警団を組織したのだが、SL内だと過剰防衛と言える装備品を身に付けた者が多数集まっているので、「ソレ何に使うの?」というツッコミを押さえたくなるのに苦労する。


ブレッド「なあ、チャーリーよ、俺のブレードすっげえだろ? 

     カッコイイだろ? な?な? な?」

チャーリー「あーハイハイ。それよりも見ろよ。この黒光り。俺のマグナムこそ世界一だぜ? なんならお前のそのナマクラと勝負すっか?」


ブレッド「あんだと? 俺のムネマサにケチ付けんのかよ? 

     バッサリ頭からカチ割られたいのか?」

チャーリー「おー 出来るモンならやってみせろや!!」

ブレッド「おー やってやんよ?」


キャット 「あー そこのバカ二人! いい加減にしなさーい!!」

バカ二人 「「へーいっ!!」」


 そもそも、日本人と違って個性と国際色豊かな集団では、同じ制服や同じ装備といった一体感や集団的調和よりも、個性全開で装備も衣装も全部バラバラな者達が20名程居る。

 ある者は、何故か頭にチョンマゲ姿に三本の刀を脇に刺していれば、隣には全身真っ黒な甲冑に光の剣をブンブン鳴らしている。その隣では、中世の甲冑姿と蜘蛛男が蝙蝠男と一緒に。何故か口髭にオーバーオール姿の配管工兄弟叔父さんと鉄の爪を拳から生やした超人の軍団まで居る。ジェイソンマスクでチェーンソーを振り回してるのは何を考えているのやら。。。意味不明。

 軍服姿も居るには居るが、旧独逸軍や英国軍、米陸軍特殊部隊姿とこちらも異彩を放っている。しかも、男女別だけならまだしも、タイニーと呼ばれる動物や着グルミ姿で性別すら判別不能な者達も多数混ざっている。


 うん。事情を知らない人が見たら、ハロウィンとかの仮装かコスプレ集団としか見えないでしょうね。 ストレートに言えば痛い集団が自警団として思い思いの恰好をしているだけ。


キャット「あー よし。それじゃー皆でこの島を守ろーか?」

キャッスル「お嬢様は安心して我らにお任せあれ!」

マッスル 「ウッス!」


キャッスル「・・・マッスルよ。お主先程から『ウッス』以外の言葉を発しておらぬようじゃが?」

マッスル「ウッス?」


キャッスル「・・・いや、だから~ 

      うん。まあいいか。」

マッスル「ウッス!」


 なにやら漫才の様にしか見えないが、従軍経験者でもある二人の自警団隊長と副隊長に異議を唱える者も居ない様なので、とりあえず、恙無く島を守るための自警団が発足した。


キャット 「あー それじゃー あとは任せたわよ!」

自警団員 「「「ウッス!!」」」



 キャットの号令以下、自警団員達はそれぞれの守備する拠点へ篭った。所謂、トーチカと呼ばれる遮蔽物に囲まれて大砲やら銃座が据えてある場所やお隣の島を真似して高い塀で囲んで監視塔で見張りをする者等、纏まりや統一感は乏しいが、無駄に装備とやる気は高そうだ。






 自警団員達が守備行動を始めてから30分程が経過しただろうか。拠点の一つに動きがあった。


ローリエ「なあ、SL内でモンスターが増殖して化身を襲ってるって本当なのか?」

ウッド 「本当らしいぜ。だからこそ、俺達は他の島からバケモノが襲って来られない様に正義の味方ってヤツをしてるんだろうが。」


ローリエ「正義の味方ねぇ・・・」

ウッド 「このゲートだってお隣の島の真似とは言え、オーナーが設置したから俺達住人でも開閉出来るだろ? バケモノは通さない。フツーのヤツらは通行許可する。簡単なボランティアじゃねーか。」


ローリエ「それもそうだな。」

ウッド 「分かったらポーカーの続きをしながら番兵ゴッコを続けようぜw」


 SL内では、他のゲームだと『ミニゲーム』の様な遊びも出来る。

 化身を使って、テーブルゲームやカードゲーム等を楽しむことも可能なのだ。

 今ローリエと呼ばれた蜘蛛男姿の男性化身と向かい合って全身黒尽くめな蝙蝠男姿の化身の二人は、隣の島との境に面した島の内側を守るゲートの前でポーカーゲームをしているところだった。


ローリエ「・・・あ」

ウッド 「どうしたんだ?」


ローリエ「うん。友達のジェシカがなんか安全なこっちに呼んで欲しいって。」

ウッド 「あんだって?」


ウッド 「おま、今の状況分かってて言ってんの?」

ローリエ「うん。モンスターがあちこちで暴れてて、噛まれた連中がロメロ映画みたくなってるって騒ぎなんだろ?」


ウッド 「分かってんじゃねーか! だったらこの状況で人を呼べる訳無いだろ?」

ローリエ「いやいやいや、ジェシカは今ピンチな訳よ?」


ウッド 「なら尚の事ダメじゃねーか!!」

ローリエ「ウッドよ。キミは状況を全く分かってい無い様だな。」


ウッド 「何をどう分かれと?」

ローリエ「吊り橋効果って言葉知ってるか?」


ウッド 「吊り橋みたいに怖い場所で過ごすと、胸の高まりを恋愛感情と勘違いするってヤツか?」

ローリエ「・・・情緒のカケラも無いヤツだなぁ 君は。

     無粋な表現だがそんな感じだな。」


ウッド 「回りくどい言い方は嫌いなんだよ。ハッキリ言えよ!

     それがどうしたって?」

ローリエ「ジェスカはピンチだ。そこで正義の味方のオレ参上!

     でもってジェシカのピンチ救う!

     オレに憧れやら好意を抱くジェシカ!

     ここまで来たら・・・ なあ?」


ウッド 「・・・分かった。

     もはや何も言うな。

     そこで、お前の好意を横から華麗にひっさらって行く俺様万歳的な展開だろ?」

ローリエ「なんでじゃーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!

     どーーーーーーーーーーーーーーーーしてじゃーーーーーーーーっ!!!!

     千万歩譲ってもソレは無いだろーーーーーーーーっ!!

     そこで、オレ、ローリエがジェシカに好きになって貰って、二人はメデタク結ばれる!!

     究極のハッピーエンドだろーがよ?」


 どうやら、ローリエの頭の中では、世の中の全てが自分の都合良く動くものだと認識しているらしい。その自信と根拠は一体ドコから出てくるのやら。一度頭の中を覗いてみたいものである。などと呆れはしたが、ここは自分が常識を思い出させてやらなければ。


ウッド 「悪ぃ 俺ディ○ニーとか苦手なんだわ・・・ それに・・・

    今回に関しては究極のバドエンドしか思い浮かばねーけどな」

ローリエ「キミとは意見が全く合わないらしい様だな。

     でも、オレの言いたいことは分かってもらえたかな?」


ウッド 「お前の下心丸出しで嫌らしい計画とやらは分かったよ。

     だが、オーナーであるキャットからは、安全が確認されない限り住人以外の化身をこの島へ呼ぶことは禁止されている。ダメだ。」

ローリエ「・・・そいつは悪かったな。」


 諦めの悪いヤツだとは思ったが、否定し続けるウッドの言葉に我慢し切れなくなったローリエのすぐ前に、一体の化身が呼び出された様だ。


ウッド 「おまっ! まさか・・・」

ローリエ「ジェシカー!! 無事だったかい? 怖かっただろー?

     だが、もう安心だ! 

     なんたってこのオレがこれからはキミを守るんだから・・・ 

     ジェシカ?」


ジェシカ「・・・・シュアギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

ウッド 「シット!!

     この馬鹿野郎がっ!!」


 どうやら既に手遅れだったらしい。

 美しかったジェシカの化身は、既に全身がアラバスタの様な血色の悪い白に覆われ、口からは乱杭歯が剥き出しになっている。そして、両手には、例の鉤爪が。


ローリエ「・・・そんな!! ああ、神様っ!! どうして・・・

     ジェシカ? なんで僕の後ろに・・・・ 

     うげっ!?」

ジェシカ「ガルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!!」


 いやいやしながら後ずさりを始めたローリエの前に呼び出されたジェシカは、そのまま彼の身体に飛び掛かり、スルリと後方へ抜けて、後頭部から齧り付き出したから堪らない。何の備えもしてい無かったローリエは最初の犠牲者となった。


ウッド 「・・・もうここはダメだぁ!!」


 同僚に襲い掛かった悲劇に、ウッドは恐慌状態になってしまった。

 せめてゲートを閉めて行けば、これ以上の侵入を防げたかもしれないのに、あろう事か自分が逃げたいためだけに、ゲートを開放したままで島の内側に向かって逃げ出してしまったのだから。


ジェシカ「・・・・・・シャギャーーーーーッ!!」

ウッド 「・・・・ウグルルルルグァァァァァァァァーーーーーーーッ!!」


 最初にウッドが襲われてから約90秒後、アイツら化したウッドがジェシカの隣に並び、曇り硝子のように澱んだ目をゲートの向こう側へ向けて吠えた。




キャット「あー それで? ローリエは?

     一体どうして一人だけで逃げて来たのよ!!」

ウッド 「・・・すまねぇ! だが、アレはムリだ!!

     あんなバケモノ、オレ一人でどうこう出来るもんじゃねぇ!!

     応援だ! 応援を寄越してくれっ!!

     そうすりゃー あんなバケモノの一人や二人・・・」


キャッスル「つまり、貴君は持ち場に呼び出されたジェシカ女史に襲われた。そこで、持ち場を捨て、同僚ウッドを捨て置いて、我々に応援を求めにここまで来たと?」


ウッド 「・・・持ち場を勝手に離れてしまったのは、謝るよ。

    だが、あんなバケモノが相手だなんて聞いてねーよ!!

    知らなかったんだ!! 知らないって事は悪い事じゃねーよな?

    それなのに、あんなバケモノが呼び出されちまったなんて・・・

    オレ一人で始末しろって? そんなのムリに決まってらー!!」


キャット「・・・ んー 状況は分かったわ・・・ 納得出来ない部分はあるけども・・・

     それで、ゲートは?」

ウッド 「・・・・!? 

     ヤベッ!!」


キャッスル「・・・まさか、開放したままという事はあるまいな?」


 キャットとキャッスルの詰問に、ウッドは目を白黒させるばかりで、なかなか答え様とはしなかった。だが、それは本来であれば対策を施せたハズの貴重な時間を捨てさせ、選択肢を狭める行為となってしまっていた。


キャット「・・・もういいわ。 こうなったら、皆には自力で対処してもらうしか無いわね。」

キャッスル「お嬢・・・。

      かくなる上は、この身は常にお嬢の傍らにおりましょうぞ。」


キャット「あー だからって、私の血は吸っちゃダメよ?」

キャッスル「その点については後程に。

      今は弁えております故、ご随意に。」


 キャッスルってどうしてこうも言い方が一々芝居掛かった上に、古めかしい表現なのかしら? 吸血鬼だから、数百年も生きていて、言葉も古めかしい表現を選んでるのかしら?

それにしても、所々敬語やら丁寧語やら謙譲語やらとごちゃまぜになって怪しいけど。

 

 なんて心の中で思いながらも、キャットはこんな変人の吸血鬼の一人位なら、自分の隣に置いてもいいかしら、と満更でもなかった。こんなのも、渦中で見つけた小さな恋とでも呼べるのだろうか。



北米時間AM 9:44(日本時間am0:44)



タイトル付けに毎回困ってまする☆

なーんか相応しいのかしら・・・??

とか悩んで小一時間程も;;

誰かイイタイトル付けるアプリとか知りません??(マテ

あと、ガイジンさんの謎のノリに着いて行けない件について・・・(偏見ゴメンナサイ☆彡

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