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『Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第十四話「クルミン島群の陥落」

第十四話「クルミン島群の陥落」




am1:34


 四天王が率いる守備隊共々撃破される少し前。

 翠と久留美が驚きの声を挙げた。二人とも信じられないという表情で空を見上げている。


 愛美 「・・・どうしたの? 二人とも・・・」

 久留美「今しがたクルミン8ゲートから緊急の連絡が入りました。

     詳細は不明ですが、上空から侵入された、と!」

 翠  「ミニマップで見てたんだけども・・・ あたしの日の丸エアフォースワンが何故かこっちに戻って来てるのにゃ!!」

 一同 「「「なんですってっ!!」」」


 久留美「・・・どうやら本当らしいです。上空からの侵入は飛行機であった、と。

各地に散っていた守備隊員からも前線の支援もしくは、後方支援に移動すると連絡がありました。そこまでは打ち合わせ通りだったのだけど、混乱して違う行動に出た人達も居たみたいなんです。

 隊長が一人で時間稼ぎに出かけたので、自分も同行するつもりだって副隊長の琉騎さんから・・・ 他の守備隊員にも呼び掛けているのですが、返答があるのは後方に居る者達だけで・・・ 最前線に居る守備隊員からは、何一つ音信がありません。」


 雪那 「つまり、最前線の様子が分からないと?」

 久留美「その通りです・・・ 皆交戦中で通信にまで手が回らないのでしょうけども・・・

まさか四天王がそう簡単に倒されるとは思えないのですけどね・・・」


 だとしても、城壁の上から銃撃を浴びせる状態であれば、誰か一人だけでも通信位は可能であろうに、と久留美は考えていた。そのために11名一組を守備隊として配置したのだから。

 しかし、事前の打ち合わせや連絡の訓練までは手が回って居なかった。ほぼぶっつけ本番に近い形で今回の緊急事態に対応したツケが回ってきてしまった様だ。


 打ち合わせた事と実際に行動してみた結果の祖語は、通常であればあまり問題では無い。

 見直して、どこが悪かったか、良い点はどこか、検証し、改善して、またやり直せば良いのだから。


 だが、今回は違った。想定外の出来事が重なり、予想外の方法で容易く侵入を許してしまった。結果は、混乱と指揮系統の壊滅であった。

 

 久留美「正直、今回の相手であるアイツらがここまで裏をかいて来るとは考えてもいませんでした・・・ 完全に後手に回ってしまいましたし、ここから立て直すのは困難だと思われます・・・」

 愛美 「そんなぁ・・・」

 一同 「「「・・・・・・・・・。」」」


 交戦中の四天王と連絡が途絶えた久留美には、残された少数の住人を避難させるという責任がある。堅く決意を込めた眼差しを愛美達に向けた。


 久留美「さあ、ここは間もなく戦場になります。皆さんは一刻も早く逃げて下さい!」

 夢羽 「あたしは付き合うよ!」

 櫻、沙希、桃山桃「「「わたしたちもご一緒させてください!!」」」


 盟友である夢羽の申し出は嬉しかった。夢羽は銃でも刀でも達人級の腕前を持っていたから。カフェでメイドをしていた者達が銃や刀を構えて夢羽に続いて志願して来たのは、予想外ではあったが、どの顔も皆覚悟を決めた者の面構えをしていた。


 久留美「・・・あなた達。

     分かりました。ありがとう!

     でも、翠ちゃん達は逃げてくださいね。

     ここは私達が少しでも時間稼ぎするから!!」

 翠  「・・・ありがとうにゃ

     ・・・でも、絶対にアイツらに齧られないでね!!」

 久留美「勿論ですわ! さ、時間はあまり残されていません。

     先程の飛行機が隣のクルミン5の上空を越えて、この島のゲート上空に近付い

     ているそうです。上からの侵入では、防壁もゲートも無力です。

     一刻も早く逃げてください!!」

 一同  「「「ありがとう!

       ご武運を!!」」」

 久留美「あなたたちも、無事逃げ切れることをお祈りしてます!」

 メイド’s「「「ご武運を!!」」」


 久留美と櫻、沙希、桃山桃らメイド達は、ビッシっと右手を右目斜め近くの敬礼するとカフェを要塞化する様に机や椅子、カウンターなどで即席のバリケードを作り始めた。他にも地面に置ける物を持ち物から出して、補強している。

 ここで、アイツらを引き付けて時間稼ぎをしながら抵抗するつもりなのだ。

 夢羽などは、大きなスコープの付いたスナイパーライフルを屋根の上で構えて、狙撃を開始していた。


 夢羽 「・・・・・・・ふぅー

     ONE SHOT ONE KILL!!」


 親指を立てながらなんか物騒な事までつぶやいてるし・・・。


 愛美達は、クルミン島群に逃げ込む時に使用してからカフェの隣に停めてあるタイヤが沢山付いたゴツイ装甲車に乗り込んだ。


 翠  「それじゃー 発進するにゃー!

     皆しっかり捕まるにゃーっ!!」

 一同 「「「了解!」」」


 とりあえず、現時点での目標地点としては、クルミン1の隣にあるクルミン2だ。

 クルミン2がある後方の島では、アイツらの目撃情報が無いというので、そのまま別の島へ逃げてしまおうという計画だ。無論、アイツらが表れた時点でこの計画も頓挫してしまう恐れはある。だが、現時点では一縷の望みに掛けるしか無いのだ。


 愛美達は、装甲車で無事に去ることが出来た。残ったのは、久留美と夢羽、それにカフェのメイド3名であった。即席バリケードもそれなりの形になり、いざとなったら屋根に一か所だけあるハッチを閉めて、貝の様に閉じ篭れるようにした。

 こんな状況ではあるが、どの顔も悲壮な影とは無縁だった。久留美が共に居り、彼女を護れるのだ。四天王と連絡が付かない今、それが出来るのはここに居る者達だけなのだから。


 こうして、日の丸エアフォースワンからアイツらが降下して、クルミン島群を蹂躙し出してから10分という貴重な時間が奪われてしまった。



 

am1:44 クルミン1と2を隔てるゲート前


 愛美 「ねえ・・・ ところでこのゲートって・・・」

 雪那 「ええ・・・ 誰か開ける人って居るのかしら?」

 若狭 「まさか、ここに来てゲートで阻まれるとはね・・・」

 真弓 「・・・想定外でしたね」

 翠  「困ったにゃ!!」


 そうなのだ。久留美らクミックス島群の住人であれば、グループ設定されているゲートの開閉を行う事は容易いのだが、現在ここに住人は不在だった。

 そう思って先程から久留美にささやきで呼び掛けているのだが、交戦中で手が離せないのか応答が無い。


 雪那 「久留美さんもアイツらに・・・」

 翠  「まだやられちゃったとは限らないのにゃ!」

 若狭 「そうね・・・」

 愛美 「でも、このまんまここに閉じ込められちゃってたら・・・

     あたしたちまで襲われちゃうんじゃ・・・」

 真弓 「そうですね・・・」


 見たところ、急ごしらえなせいかゲート以外に出入りが出来そうな場所も見当たらなかった。そういえば、詰め所にテレポーターがあるとか聞いた気がするのだが・・・


 翠  「詰め所を確認してみるにゃ!!」

 若狭 「それが良さそうね」

 愛美 「そうすると、この車は?」

 翠  「ここでお別れにゃ」

 

 SL内の島では、土地所有者の設定により、所有者のみがオブジェクトをRez=設置することが可能な設定、同じグループに所属している者のみRez許可、誰でもRez許可等、細かく設定する事が出来た。

 今居る場所は、クルミン島群のグループに所属している者であればRez可能だが、グループに所属していない愛美や翠には、Rezそのものが出来ない為、車の回収は出来ても、Rez=設置する事は不可能だった。その為、やむを得なく車での移動そのものを諦めざるを得なかったのだ。

 

 銃を構えた翠を先頭にして、5人は工事現場に置いてある様なプレハブ小屋に見える詰め所へと進んで行った。


 翠  「ココにゃ」

 若狭 「テレポーター見つかった?」

 翠  「あるにはあるんにゃけども・・・」

 真弓 「何か問題でもありましたか?」

 雪那 「このテレポーターって!」

 翠  「・・・そうなのにゃ」

 愛美 「まさかのここに来ての?」

 翠  「・・・グループ専用にゃ(泣」

 

 先程も少し触れたが、『グループ専用』となれば、所属者は使えるが、所属していない者達は使用すら不可能を意味する。時間が経てばやがてはこの場所にもアイツらが押し寄せて来るであろう状況で、どうやって壁の向こうへ行けば良いのだろうか。


 翠  「考えるにゃ・・・」

 若狭 「そうね・・・ 考えなきゃ・・・」

 雪那 「・・・うん」

 真弓 「考えましょう」

 愛美 「考えるの苦手だけども・・・ 考えてみるね・・・」


 古来より『三人寄れば文殊の知恵』とも言うではないか。

 SL歴のそれなりに長いプレイヤーが5名も集まって額を寄せているのだから、何か良い知恵の一つでも浮かぶであろう。


 翠  「・・・!!」

 雪那 「翠ちゃん?」

 若狭 「何か思い浮かんだ?」

 愛美 「まさか・・・ アイツらが近くに!?」

 真弓 「ええっ!?」

 翠  「違うにゃ・・・ 一つマダ試して無い方法があったにゃ!!」

 愛美 「試して無い方法・・・?」


 首を傾げる愛美に返答するのも惜しいとばかりに、翠がプレハブ小屋に見える守備隊の詰め所の引き戸から外へ飛び出すと、ゲート脇の壁に向かって立った。


 若狭 「それで、どうするの?」

 翠  「こうするのにゃ!」

 一同 「「「えぇぇぇぇぇっ!?」」」

 愛美 「ホワッ!?」

 

 一声発したと思った翠の猫耳姿の身体は、一瞬で消えてしまった。

 思わず一同は驚きの声をあげてしまったが、翠の姿は消えたが、気配は近くからする。


 翠  「にゃっはははははははははははーーーーーーーーっw」

 愛美 「・・・どゆコト?」

 雪那・若狭「ああぁーーーっ!!」

 真弓 「そーゆー事でしたか」

 翠  「座っただけにゃw」


 壁の向こう側から、ドヤ顔が想像出来そうな程の翠の高笑いと返答がした。

 SL内では、椅子に座る時、実はアニメを使っている事が多いのだが、椅子の内部に仕込まれているアニメの再生力が強い設定だと、多少離れた場所に設置されていても、強引に座ってしまえる事が多い。

 今回の翠が使った方法は、壁の向こう側にある椅子を視線だけ数メートル程飛ばして見つけ出し、そのまま『座る』を選択しただけであった。ただし、この方法では化身のみでの移動となるので、やはり車は壁の向こう側へ持って行くことは出来ない。


 翠  「同じ方法で移動できる人は、視線だけ飛ばして『座る』で移動するにゃ

     難しい人は、翠がテレポ(テレポート)で呼び寄せるにゃ」

 一同 「「「OK!」」」


 愛美だけが、どうしても壁の向こう側に視線を飛ばすことが上手く出来なかった為に翠に呼び寄せてもらったが、他は全員で視線を飛ばして壁の向こう側に移動する事が出来た。

 

 雪那 「・・・久留美さんから返信が入ったわ。やっぱり、アイツらに囲まれてしまって、苦戦が続いているみたいなの。それで、こちらには応援に人を送るゆとりが無くてごめんなさいと謝罪の言葉があったわ・・・。大変な状況なんだから、気にしないでいいのに・・・」

 翠  「久留美ちゃんは律儀な人にゃから・・・」

 愛美 「これから戻って一緒に立て篭もる事は出来ないの?」

 雪那 「それは丁重にお断りされてるわ。『私には島オーナーとしての責任があるし、住人の皆は、自分達の住居と遊びを守る覚悟があります。でも、貴女方は一時的に避難して来ただけだから、どうぞ最後まで逃げ切ってください』って」

 翠  「遊びって言い切るところが久留美ちゃんらしいわw」

 愛美 「久留美さん・・・」

 雪那 「そういう訳だから、しっかりと逃げ延びましょう!!」

 一同 「「「了解っ!!」」」

 

 クルミン2は、南国カフェを中心としたクルミン1とは趣が異なり、少し都会っぽい感じの高層建築物が多数見られる島であった。舗装され真っすぐに延びた道路と建築物によって視界は若干狭められるが、建築物があるという事は、それだけ隠れる場所が多いという事でもある。今にも物陰からアイツらが飛び出して来そうで、落ち着かない感じはあるが、先へ進むことは重要だ。

 

 だが、ゲートからの移動に手間取ってしまい、若干時間が消費されてしまっていた。


am1:49




 同じ時刻に、南国カフェで籠城していた久留美達はというと。


 久留美「夢羽! ソファーの内側に逃げて!!」

 夢羽 「OK!」

 沙希 「もう私達3人だけになってしまいましたわね」

 

 南国カフェの外側には、四天王と共に戦っていたハズの守備隊のメンバーまでもがアイツら化して、カフェを取り囲んでいた。そして、バリケードと共に天蓋を堅く閉ざして、外部からの侵入を一切拒んでいたハズの店内には、いつの間にか侵入していたアイツら化した者達が湧いて出て来たために櫻、桃山桃が後頭部を喰い破られて俯せになっていた。


 現時点で安全なのはカウンターの内部だけ。その更に内側に、咄嗟にソファー4つをロの字に囲んで簡易バリケードを作って3人は籠城を開始していた。


 久留美「それにしても・・・ どうやって店内に侵入したのかしら・・・」

 夢羽 「椅子じゃないかしら? アイツら外から急に店内に湧いて出たけど、その時って最初に椅子に座ってから立ち上がる姿を見かけたわ」

 沙希 「店内にはソファーも椅子も沢山ありましたからね・・・ 皮肉なものですわね」


 いくら護りを堅くしても、外部から容易く侵入されてしまっては、あって無きが如し。

 だからといって、カフェに椅子は必需品。全てを無くせるはずも無く、今回はアイツらの侵入の手助けとなってしまった様だ。


 久留美「沙希さん。この騒動が終わったら、カフェの改装を行いましょう!」

 沙希 「ええっ! 次は立ち飲みカフェですわね!」

 夢羽 「ソレ受けるわwww」

 久留美「あ。そう言えば、海外のフレからメール届いていたわ。

     『オークが動き出したぞ』って・・・ 対応が遅いわよねw」


 アイツらの顔が目と鼻の先にあるというのに、まるで意に介さないかの様な会話であった。これが久留美の胆力なのだろう。この直後に、久留美らからの連絡は一切不通となった。


 

am1:54 クルミン2 街角


 愛美 「ねぇ・・・ そろそろここもヤバイんじゃない・・・」

 雪那 「そうみたいね・・・」

 若狭 「後ろから近づいてるわね」

 翠  「遂に追いつかれたみたいにゃ・・・」

 真弓 「ですね・・・」


 久留美達が全滅する直前から、クルミン1からクルミン2へ移動して来る光点の数が急に増えだしていた。しかも、中には明らかにテレポーターを利用したと思われる光点が多数あった事は、住人もアイツら化した事を意味していた。


 光点は次々と増えて行き、愛美達と同じ地表近くに居る者もあれば、ビルの中にテレポーターを使って移動した者も居た。徐々にだが、確実に囲まれつつある状況に打開策はあるのだろうか・・・。


 愛美 「!! 今ソコの後ろのビルの陰からアイツらがコッチへ向けて!!

     っ! 雫ちゃ・・・・!?」

 一同 「「「逃げなきゃ!!」」」


 ビル陰から顔を次々と現すアイツらの中には、しずくが確かに居たのだ。

 その群れが今、愛美達へ向けて猛烈な勢いで向かって来ようとしていた。


 愛美 「嫌ぁぁぁぁぁっ!!」


 愛美の悲鳴を合図に、一同は一斉に走り出した。


am1:59



だんだん午前2時近付いてまする

っでってゆー

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