第十三話「油断大敵! 四天王陥落」
地図の色分けをも少しだけ詳しく書くと
赤/アイツら発生中=危険
ピンク/アイツら発生島の隣=厳重警戒
黄色/緩衝地帯を挟んで警戒
薄青/やや安全地帯
青/安全地帯
ていう感じです。
左下が黄色になってるのは他の所有者の島なので、
アイツらが発生しても通報が無い事を想定しての
警戒地区ですね
第十三話「油断大敵! 四天王陥落」
am1:24 クルミン8ゲート駐屯所
それは愛美達がカフェで歓談している最中の出来事だった。
クルミン8のゲートには、他の壁やゲート同様に、駐屯所が作られていた。
駐屯所と言っても、急造でアイツらが押し寄せて来た時に一時的な避難場所としても使えれば良いという発想で作られた物なので、簡素で適当である。
大きさは縦8m程に横15m、高さが8m程のプレハブみたいな作りだったので、事情を知らない人が見たら工事現場のアレにしか見えないと思われる。先程、島オーナーの久留美直々に「モヒはダメよ!」と厳命があったので、春鬼は、ブツブツ言いながら、それならツノがニョキニョキ生えたヘルメット姿ならば苦情が来ないのだろうか、などと自分の持ち物から時々何やらソレっぽいのを装着しては取り換えるのを繰り返していた。
そんな春鬼の周囲には、6名程の自警団員による守備隊の姿があった。狼男風、吸血鬼風、彷徨う鎧風、ドワーフ風、少年風の化身達。他にも4名の自警団員が居るのだが、今は壁とゲートの上に設けられた監視塔に詰めていた。
wolf 「春鬼さん! さっきのアレ! カッコ良かったッス!!」
霧 「三本角もいいッスねー!」
琉騎 「いやー 世紀末覇者って感じが出てましたわー!」
春鬼 「そうかい? 僕にはあんまり似合わないと思うんだけどねー」
wolf 「そんな事無いッスよー」
霧 「そうそう! 俺らみたいな下っ端には被れないッスわー」
春鬼 「おま・・・ ソレ、馬鹿にしてね?」
霧 「イエイエイエイエイエイエイエイエーーーーーーーーーーーーーっ
馬鹿にはしてないッス!
ちょっと見て見たかっただけッス!!」
春鬼 「ソレを馬鹿にしてと・・・
まあいいや。何事も形から入る性格の僕だけど、やっぱりさっきみたいにモヒ
とかは・・・
四天王や他の人達も一緒にやってくれたから出来たけど、一人じゃ絶対嫌だな
ものだね・・・」
琉騎 「さっき久留美さんにもダメ出しされちゃったからねー」
守備隊「「「うんうん」」」
恰好から入るというならば、別にモヒ姿や世紀末覇者姿以外にも選択肢があったのでは? というツッコミは誰からも出なかった。
春鬼 「あ。コレならどうだろう?」
霧 「ドレっすか?」
wolf 「ちょっ! ソレは・・・・」
琉騎 「悪趣味では?」
春鬼 「そうかなー 僕は結構カッコイイと思うんだけどなー」
春鬼がカッコイイと言って着用したのは「自宅警備員-Security house-」というロゴがキラリと光る全身真っ黒な軍服姿だった。隊長である春鬼が「コレを制採用とする!」などと血迷い事を言い出したら、この駐屯所に居る全員が「N・E・E・T」ロゴ入りの制服を着るハメになり兼ねない。
琉騎 「せめて対面した者の気を逆なでしない服装が望ましいのではないでしょうか?」
春鬼 「そっかー うーーーん。そうだよねー 」
「それならドレにしよっかなー」とぶつぶつ呟く春鬼を生暖かい目で見つめながら、守備隊員達も自分の持ち物を漁り出した。
wolf 「うぉ! コレ・・・ 懐かしいー!!」
霧 「wolfさんは旧独軍のSS将校の制服ですかー」
琉騎 「ソレはソレでどこかから苦情が来そうな代物ですね」
春鬼 「他の人達は? さっきから黙ったまんまみたいだけど」
霧 「あー ほとんどはネオチじゃないッスかね?」
琉騎 「時間も時間ですからねー でも、クルトンと雷はささやきで誰かと話し中だと思われますよ」
春鬼 「そっかー 僕もさっきから時々海外のフレからやさやき着てるけど・・・
米国語苦手なんだよねー あ。コレって何語だろ? 仏語?」
wolf 「どーしてそんな人達とまでフレしてるんスか?
言葉もロクに通じないのに」
春鬼 「うん。クラン(グループ)に加入しなきゃいけなくってねー
そん時に一緒にフレもー って流れで、断れなくてね」
琉騎 「戦闘系のクランですか?」
春鬼 「そそ、そんな感じのー」
あまりに平和過ぎて、元々軍人や訓練された者達では無いので、自警団の警戒心はすっかり緩んでしまっていた様だ。これでは監視塔に詰めた者達もささやきやら持ち物漁りなど、他の事に気持ちが向いてしまっていても不思議では無い。ネオチした者も居るかもしれないが・・・。
しかし、それでも問題無いと思われる理由がある。
高くて乗り越える事が出来ない壁とゲートの存在だ。
監視塔の高さは、化身が飛べるならともかく、ジャンプ程度では絶対に到達不可能な高みにあるし、壁に沿って銃座も設けてある。上から一方的に雨霰と弾丸を浴びせ続けられるのだ。
愛美達一同が齎した情報でも、アイツら化した化身に対して、銃撃では倒せないものの、90秒間の足止めにはなるという検証結果も知らされた。更に、日の丸エアフォースワン機内では、雫2の鉤爪などによる攻撃を障壁によって無効化したという。ならば、自分達が築き上げた壁とゲートはアイツらに対して有効なのだ。
その安心感と信頼感によって、気持ちも緩んでしまったらしいのはなんとも皮肉な結果である。
だが、同様の事は、他のゲートや壁でも起こっていた。
クルミン10ゲート駐屯所。
夏鬼 「ファーーッハーーッハーッハー!!」
こちらでは夏鬼がすっかりその気になって、「モヒじゃなきゃいいだろう」的な発想から
聖帝十字陵が完成しそうなコスチームにでっかい椅子をゲート内側に設置して通る者が居たら脅かそうと待ち構えていた。
クルミン3ゲート駐屯所。
秋鬼 「フッフッフッフッフー 新しい木人形を持って来なさーい!!」
秋鬼はといえば、何やら偽兄ごっこを始めてる始末だし。
周囲に居る守備隊員に命令して、誰か呼び出しそうな感じがする。
うん。頭痛が痛いね。
クルミン2ゲート駐屯所。
冬鬼 「拙者の名を言ってみろぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」
守備隊員「「「世紀末救世主様です!!」」」
冬鬼は、口元だけ見えるフルフェイスヘルメットを被って、雑魚ボスごっこだし。
この辺の島には、他にネタが思い浮かばないのかーっ!! って激しくツッコミを入れたい。小一時間程問い詰めて説教したい。・・・久留美さんが見たら泣くでしょ? ぁ。アノ人なら一緒になって遊んじゃうかしら・・・(汗
そんな感じで、誰も皆鉄壁の守りとゲートを信じて疑わなかった。
過信する程に・・・。
am1:43
霧 「アレ? 隣のクルミン9島から~ なんか来るッスよ?」
琉騎 「なんか、では分かりにくいですよ。もっと具体的に言ってもらわないと・・・
おや?」
春鬼 「まさか!?」
wolf 「ちょっ! マジッスかぁ!?」
春鬼 「コレは・・・・ 想定外だったね・・・」
春鬼達が護っているクルミン8のゲートは、先程愛美達が避難して来たばかりのクルミン9と道路で繋がっていた。橋を渡れば島境を越えてこちら側へ移動しやすい様に作ってあったが、橋を落とす案も出ない訳では無かった。
だが、橋を落としてしまうと、今度はドコからアイツらが攻めて来るか、守備範囲が広くなり過ぎると考えて残しておいたのだ。そして、敢えて移動通路を残した事により、守るべき場所をゲート一か所に絞ったのだった。
ところが、春鬼達は橋でもゲートでも無く、空を見上げていた。
春鬼 「まさか・・・ 飛行機で侵入して来るとはね・・・」
琉騎 「総員! 戦闘配置--------------っ!!
機銃は水平方向から、上空へ角度変更っ!
あらゆる方法で迎撃せよ! 以後各自の判断で撃ってヨシ!!」
守備隊「「「ウッス!!」」」
春鬼がのんびりし過ぎたせいか、副隊長の琉騎が檄を飛ばした。
銃座に着いた者達が、日の丸エアフォースワンに向けて弾幕を張り出した頃には、島境は既に超えられており、機体からは降下して来るアイツらが複数見えた。
春鬼 「僕も行って来るよ! 琉騎さんは本部に居る久留美さんに第一報を入れて!!」
琉騎 「あ。春鬼さん!! 一人で出たら危ないですよー!!
せめて、数名でも隊員をお連れください!!」
春鬼 「いや、ここは時間稼ぎしか出来ないでしょう。僕ならこの刀で90秒間アイツらを地面に叩き伏せる事が可能です。降下した人数は不明ですが、機体は尚も前進していましたから、クルミン1へ到達してしまうかもしれません。その前に、ここの守備隊は他の駐屯地に居る者達に連絡して、クルミン1の防御に移動する様に伝えて欲しいのです!!」
琉騎 「分かりました・・・ でも、伝え終わったら、私も春鬼さんに合流しますからね!! 春鬼さん程では無いにしても、私も刀は振るえますから!!」
春鬼 「・・・それでもイイです。でも、危ないと思ったら僕を見捨ててでも久留美さんを守りに戻てくださいね?」
琉騎 「隊長・・・」
先程までふざけ合っていた人物と同一人物とは思えない真剣な会話だった。
クルミン8に上空から侵入して来た日の丸エアフォースワンからは、少なくとも20名程のアイツら化した化身が降りた様だ。その中には、『現実逃避』で降下して襲われた者達も含まれていた。
春鬼 「貴方は・・・」
佐武朗「グルルルルルル・・・・」
春鬼 「先程貴方までやられたと聞いた時は信じられませんでしたが・・・
立ちはだかるというのならば、倒して進むしか無い様ですね!」
白銀に輝く美しい刀を上段に構えた春鬼の前に立ち塞がったのは、佐武朗であった。異形の姿に変わっても尚、愛刀の黒龍刀Subuを握ったままだった。そして、佐武朗は春鬼の刀クランでの先輩でもあった。対戦成績は56戦中38対18今一歩で佐武朗に及ばない。
だが、後頭部に開口が見られ、異形の物へと変貌した佐武朗の瞳には知性の輝きは無い。虚ろな瞳でユラユラと揺れながら春鬼へ向けて突撃して来ようとしている。
春鬼 「佐武朗さん! 今なら僕にだって貴方に勝てそうな気がしますよ!!
負ける気がしない! ってゆーセリフ、一度は言ってみたかったんですよねー」
佐武朗「・・・・・ウグラァ!!」
愛刀Subuが春鬼の握る白銀の刀とぶつかり合うのが開始の合図となった。
ほんの僅か数ミリ差で相手を切り伏せそうな剣戟の応酬が続いた。
が、その応酬が春鬼の命取りになるとは、予想だにしなかったであろう。
春鬼 「・・・・え?」
琉騎 「クッフーッ!!」
wolf 「ウガガガガガガッ!!」
霧 「ゥゥゥゥアアアアアーーーーーっ!」
いつの間にか、駐屯地の詰め所に居るハズだった守備隊の隊員達が春鬼の周囲を取り囲んでいた。正面には佐武朗、周囲に元部下達。佐武朗との剣戟に時間を掛け過ぎてしまったのだ。
春鬼 「琉騎さんまでとは・・・
連絡は間に合わなかったのかな・・・。
しかも、いつの間にこんな壁際まで追い詰められていたとは・・・
これじゃあ、僕の負けですね・・・
でも、大人しく噛みつかれてはあげませんよ!!」
春鬼は、四天王の意地だとばかりに、自分と同じように刀を構えた状態で右後ろで退路を塞ぐようにしていた琉騎に向かって切りかかった。琉騎が咄嗟に反応して剣戟を受け止めた瞬間だった。
春鬼 「そんな・・・・ 一人相手に・・・・ ズルイじゃないですか・・・・」
周囲に居た元部下達が一斉に春鬼に向かって飛び掛かって来た。そして、彼の後頭部を押さえたwolfが嬉しそうに齧り付いた・・・。
春鬼 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ゴリッゴリッゴリッ・・・
ボリッボリッボリッ・・・
ムッシャムッシャムッシャ・・・
wolfを皮切りに、周囲に居た元部下達は、春鬼の身体を押さえ付けたまま、後頭部に齧り付いた。こうして春鬼は敗れ去った。
同様の事は、他の守備隊が護る場所でも行われていた。
日の丸エアフォースワンがクルミン8から内陸へと移動した先には、次々と降下したアイツらが押し寄せて来て、住人や守備隊を捕食して行った。例外は無い。一部のsky-box
に避難して居た者達も居たが、今回の騒動で唯一使用可能だと判明したテレポーターを地上部分に設置していた為、テレポーターを通って現れたアイツらによって上空に居た者達もまた異形の者へと変貌させられた。信じがたい事ではあるが、群れで動くアイツらには明確に組織的に動こうとしている様な意思が感じられた。
春鬼の様に、多少は腕に覚えのある者達ですら、圧倒的多数による数の暴力の前では、数瞬しか時を稼げなかった。
夏鬼は、クルミン10から部下だけをクルミン1へテレポートさせて、自身は尚島境の警備を続けるつもりだった様だが、聖帝十字陵の未完成であった頂上付近で、アイツらに囲まれて後頭部を食い破られた。最後の言葉は「愛とは・・・」であったとか無かったとか。
秋鬼の場合は、クルミン3に居たが、琉騎からの知らせを受けて直ぐにクルミン8からクルミン5へと通じる通路の護衛に部下ごと移動して守備に着いた。そして、日の丸エアフォースワンから降下して来たアイツらに捕食されてしまった。
冬鬼は、クルミン2から琉騎の要請を受けてクルミン5へテレポーターで移動した途端にアイツらと遭遇してしまい、そのまま喰われた。
結局のところ、アイツらを止める有効な手段だと思われた壁もゲートも銃や刀でさえも、今回の襲撃を跳ね除ける力にはならなかった。たとえ90秒倒す事が出来たとしても、後ろから次々と現れる捕食者達に襲われてしまい、アイツらは増殖するばかりで、こちらは激減して行ったのだから。
阿鼻叫喚とか地獄絵図と言われる景色が拡大量産されつつあるクルミン島群。
愛美達もまた、雫とアイツらが来た以上、楽観視は出来ないのだろう。
am1:44
四天王って・・・
最初の方でやられちゃうキャラの代名詞なのかと思ってたのはのはナイショでw
別に恨みも他意もありませんからっ ><
※タイトルで「油断」してるって・・・・ Orz
修正しました m(_ _)m




