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『Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第十話「コロンブスのタマゴ」

第十話「コロンブスのタマゴ」


pm23:35


 翠  「コロンブスのタマゴにゃ」

 一同 「「「ハァ?」」」


 翠の突然の謎発言に、一同の頭には巨大なハテナマークが乱舞していたが、肝心の翠には説明するつもりも無さそうなので、若狭が問いかけた。


 若狭 「コロンブスのタマゴって? 説明してくれなきゃ分からないわよ?」

 翠  「簡単にゃw」


 ニコっと笑顔を見せたと思うと、翠はようやく説明をしてくれた。


 翠  「つまり、発想の転換にゃw なんとかしなきゃいけにゃいのが雫ちゃんとこの飛行機にゃ? にゃらまとめて二つを一つにするにゃw」


 一同 「「「それって分からないんですけどぉ・・・」」」


 もどかしそうに、詳しい説明をしてくれたが、要点をまとめるとこんな感じらしい。


①雫別垢を飛行機に乗せたまま、元の『現実逃避』がある隣島Area 51へ飛行機ごと戻してしまう。


②雫別垢以外の一同は、島境に入る直前に、飛行機から落下して逃げる事。


 説明を終えた翠がドヤっという表情で一同の顔を見た。


 雪那 「いいんじゃないかしら」

 真弓 「私も同感です」

 若狭 「うんうん。イケるんじゃない?」

 愛美 「でも・・・」

 翠  「でも?」

 愛美 「うん。でも落下だと、下にアイツらが待ち構えてたら無防備じゃない?」

 翠  「その点は心配いらないにゃw」

 愛美 「そうなの??」


 大の付く大丈夫! とどこかで聞いたことがある様なセリフで愛美の顔を見つめ返してきた翠に、一同は不安を覚えながらも、飛行機による逃亡を考え出したのも翠であったなと思い返して、一任する事にした。


 ちなみに、このやりとりをしている時には、最初は翠は操縦席に座ったままで、グループチャットでの参加だったのだが、少しだけなら離れても問題無いと言って。操縦席真下の貴賓室まで降りて来て話し合いに参加して居たのだが、終わると同時に直ぐまた操縦席へと戻って行った。


 先ずは、旋回中滑空の飛行機の機体を現在居る隣島からArea 51へと転舵しなければならない。


 翠  「転舵するのにゃ~~~ しっかり摑まるにゃ!」


 翠が全員に聞こえるように叫び声を挙げると、一同は貴賓室の席に座って備えた。


 翠  「転舵終了にゃ~~~!! 

     次! 素早く移動にゃ!!」

 一同 「「「了解!」」」


 雫の別垢 (面倒なので以後「雫2」)が居る後方の部屋を確認したが、雫2の光点が動いたようには見えない。ならば、雫2は相変わらず同じ場所で床を引っ掻いているとでもいうのだろうか。不安はあったが、とりあえず、後方に移動しなければならないので、操縦席から降りて来た翠と共に、今度は5人で雫2が居るエリアの扉の前へ移動した。


 若狭 「この扉を開けたら通路を塞いだオブジェクトがあるわ。

     雫2がその向こう側に居るハズだから、皆、対策はいいわね?」

 一同 「「「OK!」」」

 若狭 「それじゃあ、開けるわね!」

 一同 「「「いつでもいいわ!」」」


 若狭が扉を開けると、素早く扉とオブジェクト間にある僅かな空間に2人が飛び込んだ。


 翠  「すぐオブジェ撤去しても大丈夫かにゃ?」

 雪那 「いいえ、ここは少しだけ雫2がちゃんとオブジェクトの向こうに居るか確認してからの方がいいんじゃないかしら?」

 若狭 「二人はそのまま雫2対策棒を構えててね!」


 突入したのは、雪那と翠の二人だった。二人とも見た目は大人しそうなのだが、実は刀も含めたSL内での実戦経験者だったので、即席の雫2対策棒を構えてオブジェクト前へ突入したのだ。

 雫2対策棒とは、翠考案によるYの字の拘束具を棒に付けただけの所謂刺又さすまたと呼ばれる防具の事。下手に攻撃を加えても効果が無かったら無意味なので、とにかく近づけさえしなければなんとかなるだろう、と思い付きで作成したのだが、後にコレが最強の手段であったと気付く事になるとは、この時点では誰も想像さえしていなかった。


 若狭 「準備はいい? それじゃあ障壁オブジェクトを取り除くわよ!」

 一同 「「「OK!」」」「OKにゃ!」


 一人だけテンポが少しずれたが、若狭が掛け声とともに雫2との間で障壁となっていたオブジェクトを取り除いた。


 雫2 「ゥグルルルルルルルルルルルルルーッ! 

     フッシャーーーーーーーーーーーーーッ!」


 なにやら興奮したかの様に雫2はすぐさま手前に居た雪那に向かって飛び掛かって来た。


 翠  「雪那ちゃん! 対策棒前っ!」

 雪那 「ええ!

     やっ!」


 短く気合の入った掛け声の後、雫2を目掛けて刺又が突き出された。


 雫2 「グガッ!?」


 雪那が突き出した刺又は、見事に雫2の腹部を捕らえて振り回す腕以上の前進を阻んだ。

 そればかりか、鉤爪による攻撃さえも無効化して退けたのだから、効果は想像以上であった。そのまま、刺又を更に4本追加して、5人掛かりで通路の壁際まで押し込んみ、壁と刺又の間に閉じ込めて身動きが出来ない様にしてしまった。


 若狭 「ねえ、この雫2対策棒って、地味だけど案外いけるんじゃない?」

 雪那 「使った私が保証するけど、いけると思うわ」

 真弓 「今まで壁以外で有効な物って無かったですものね」

 翠  「結果オーライにゃw」

 愛美 「結果オーライって・・・ まさか実戦で試すまで効果は分からなかったってコト?」

 翠  「テヘペロ♡」

 一同 「「「うおい!」」」


 知らぬが仏とはこの事だろうか。雫2が刺又によって拘束出来たから良かったものの、もしも捕らえる事さえ出来なかったならばと思うと、一同の背筋に冷たい物が走った気がしたのだった。


 翠  「ダメだったら、その時はその時にゃw 

    ちゃんと、防壁オブジェクトを設置しなおしたにゃw」


 左頬をポリポリと器用に掻きながら翠は何でも無いかの様に代案を考えていたのだと説明した。とはいえ、だからといって肝を冷やした事には変わり無い訳であり、若狭から一言だけお小言を貰っていた。


 若狭 「上手く行ったから良かったものの、もしもの事を考えたら、いきなり実戦で試しは無しで願いたいわ」

 翠  「うう・・・。分かったにゃ」


 翠も反省した様なので、刺又の向こうで尚も牙をガチガチ鳴らしながら威嚇するかの様にもがこうとする雫2をこれまた翠所有の人が収まる位の篭を出して、覆ってしまった。


 雫2 「グガルルル! グアグガグギィィィィッ! グゴ! ガルルッ!!」


 最早何を言っているのか、翻訳機でもあったら聞いてみたい様な獣語にしか聞こえない叫びを挙げる雫2だったが、どうやら、篭の外へは出られない様だった。


 翠  「今のうちにゃ! プランEへ移行にゃ!」

 一同 「「「了解!」」」



 翠を先頭に、一同は最後方へ繋がる扉を開いた。

 この場所は、本来であれば同行記者室プレスルームと呼ばれる場所だったハズだが、翠所有の機体は仕様が異なっている様だった。


 愛美 「・・・・え 

     ・・・何にも無いんですけど?」

 雪那 「待って、さっきの打ち合わせの時に、落下しても大丈夫にするって言ってたと思うのだけども?」

 翠  「だーかーらー! 大の付く大丈夫にゃ!!

     今から乗り物出すから、みんなはちょっと扉の近くに居て待ってるにゃ!」

 一同 「「「乗り物!?」」」


 今でさえ飛行機に乗っているというのに、一体何の乗り物を出すというのだろう。

 一同の頭にはまたしてもハテナマークが飛び交った。


 翠  「この機体は日の丸エアフォースワンにゃ。にゃので、本家とはちびーっと仕様が違うんにゃけども、作者さんにお願いして、このエリアは乗り物が収納されてる場所にしてもらったのにゃ❤」


 そう言うと翠は自分の持ち物リスト(インベトリ)から、タイヤが幾つも付いたゴッツイ見た目の車を床に向けて出した(REZ)。


 真弓 「わあー でっかい車ですねー」

 若狭 「毎回思うけどさ、あんたよくこんなの持ってたわね・・・」

 雪那 「コレって少し前に一緒に遊んだ時に乗せてもらったヤツねw」

 翠  「そうにゃw コレなら装甲も厚いし、車高もあるからアイツらが地上に居ても大丈夫だと思うにゃ」

 愛美 「だといいんだけど・・・」

 若狭 「愛美ちゃん。そーゆーのってフラグって言うらしいわよ?

     出来れば地面に降りる前にフラグは立てないで欲しいんだけども・・・」

 愛美 「あ。ゴメ。ついウッカリ」

 若狭 「うん。少しだけ気にして貰えればいいわ」

 

 こういう場合は「気にしないで」ではなかろうかと愛美は思ったが、確かにフラグを立てる様な発言をしてしまった自分も悪かったなと思うのと、脱出を優先したかったので我慢して言わなかった。


 翠  「さ、みんなこの車に乗るにゃ!!

     みんな乗ったらさっさと脱出するにゃ!!

     そーすれば雫2ちゃんはこの飛行機ごと隣の島へ戻せるのにゃ!」


 翠の掛け声に応えて一同はタイヤが沢山付いた頑丈そうな装甲車へと乗り込んだ。


 翠  「みんな席に座ったかにゃ?

     座ったらスグに後部ハッチを開いて脱出するにゃ!」

 一同 「「「了解! 座ったわ!!」」」

 翠  「ハッチ全開! 車を後退させて自由落下開始するにゃ!!」

 一同 「「「・・・え?」」」

 

 不吉な言葉が聞こえた気がするが・・・。

 きっと気のせいだろう。

 だってねぇ?


 Area 51島から滑空して隣島へ移り、少しずつ高度を下げているとはいえ、未だに1000m付近を飛んでいたのだ。ここから自由落下・・・だとっ!?

 RL世界なら即死決定ですよね。あーSL内で良かったーw


 なんて簡単に思えるなら苦労は無い。

 SL内とはいえ、やはり落下には多少の恐怖感が伴う。

 実際、普段sky-boxと呼ばれる高高度に設置されている自宅から落下すると、途中までは何も見えないので怖さはあまり感じない。目を水平にしてさえいれば、昼間は太陽、夜は月や星空が広がるだけで、たいして落下してる感覚は無い。若干風の音が煩く聞こえるくらいだ。

 ところが、落下して地面が近付く300m付近からは、島内にある景色や雲がどんどん近付いて見えてくるのだ。視界をマウスルックで化身の目がある処から見続けていると、本当に自分が落下している様な錯覚さえあるのだから、自由落下はしたく無い人も多いかもしれない。


 翠  「さー バックオーライにゃ!

     島境は通らない様にするけど、しっかり摑まってるにゃ~!!」

 愛美 「ちょっ! 待っ! 心の準備ががががが・・・!!」

 若狭 「自由落下は嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああああああっ!!」

 真弓 「同じくですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 雪那 「まあ、ここまで来ちゃったら覚悟決めるしか無いわよね?」

 翠  「流石雪那ちゃん。分かってるw」

 雪那 「長い付き合いですもの」

 

 溜息交じりの雪那に向かって翠はニッコリと微笑んで見せた。


 翠  「コロンブスのタマゴ作戦開始にゃ!!」

 愛美 「そゆえば・・・ コロンブスのタマゴって・・・」

 真弓 「タマゴを立てられないなら、割ればいいって答えじゃ・・・」

 若狭 「だーかーらー そーゆーのを『フ・ラ・グ』ってーーーーーーっ!!」

 雪那 「もう遅いわ」

 一同 「「「えっ!? 聞いて無いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」


 悲鳴と叫びとその他諸々の恨み辛みの声を内包して装甲車は自由落下して行った。


pm23:45



茹でタマゴなら割らなくても縦られたんでしたっけ?

塩を下に敷くと立とか色々他にも方法があったみたいなんですけども

タマゴ一個立てただけで金貨の入った袋一つって

絶対あげるつもりなかったんじゃないかしらと

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