小さな疑問
「なんで俺だよー……こういうのって[長]たちがやるもんじゃねぇの?」
と愚痴を溢すキノラの首根っこを掴み引きずる。するとヒツキが口を開いた。
「ねぇ、ミフネ。そういえば最近その長っていうのよく聞くけどなんなの?」
お前は何を知っているんだ。はぁー……と溜め息をついて説明を始める。
「長っていうのは簡単に言えば今までこの国はバラバラだっただろ?そのせいで戦争が多発してきた」
今まで威勢の良かったキノラは黙り、ヒツキは顔を暗くする。俺もちょっと心が痛んだが、事実だから変えようがないのだ。
「それをすべて国王が治めていたけど、限界が出てきたんだ。あの人もいい年だろ?だからそのまとまりから一人代表者を出したんだ」
「それが長……」
かっこよく決めようとしたところをヒツキに取られちょっとムッとする。お前さっきまで落ち込んでただろ。
「だから俺らじゃなくてその長が会議すればいいじゃん」
不機嫌そうにキノラが言う。
「まぁそうなんだけどね。でも俺ら猫は烏と仲が悪いだろ?だから俺らなんだよ。俺らの長ももう若くはないしな」
ふーん……と余り納得していないキノラの声を無視しつつ歩き続ける。
めんどくせぇ!!と近所迷惑になるぐらいの声で叫ぶキノラの頭をぶん殴る。それでも睨んでこないこの辺は治安がよいのだろう。
俺らの寮の付近でこんな声出せばそれはそれは大変な事になるだろう。この辺は平和だ。
平和と言えば最近鰐が静かだなぁ。と何気ない疑問が浮かぶ。鰐と言えば問題を起こすことで有名である。
ヒツキによるとどうもなにかを狙っているらしい。
その鰐が静かなのだ。疑問を持つのも不自然ではないはず。
ーーまるで嵐の前の静けさの様な……
怖くなって身震いをしていると俺を呼ぶキノラとヒツキの声が聞こえた。会議場に着いたようだ。
さっきまでの不幸だがどこか確信をついている考えを振り払うように頭を左右に振り、二人のもとに走り出した。
予想通りにならなければいいのに。