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始まり
20××年9月5日……
あれから何年経っただろうか。見えなくなった目の代わりに杖を頼りに歩く。
毎年、この日は墓参りをする。花束を片手に持ち、墓の前に置く。
「キノラ」
俺の名前を呼ぶ声がした。後ろをゆっくりと振り向くと、暗闇の中にかつての友人達が見える。
目は見えなくなった筈だが……お迎えが来たのか。
ゆっくりと此方に手を伸ばしてくる友人の手をとった。
「また、会えたな」
俺は会えたことが嬉しくて、そう声に出す。
すると、友人は照れたように笑った。
そして俺を勢いよく引っ張りあげると次の瞬間、とても綺麗な場所にいた。
ああ、ここが……俺はゆっくりと目を瞑った。