猥褻物陳列者の苦悩
猥褻物陳列罪者の苦悩
以下の文章を読んで、僕の事を頭がおかしいと思うかもしれないが、それでも構わない。
ただ、私は、あなたが秘密にしたい欲求に訴えかけたい。心を鬼にして理性を抑えつけながら、告白しよう。あなたの生きる力に幸あれ。
小学1年生の授業中、短パンの裾から、勃起させたおちんちんの先っぽを出したり、引っ込めたりして、スリル感を味わう事が好きだった。勃起したペニスをちょっとだけ、ズボンの裾から出すと、それまで自分が良い子として周りに振る舞っている事を否定出来る気がしたからだ。あと、周りを蹂躙しているような気持ちになった。もちろん、小学校1年生の僕でも、人前でおちんちんを出す事はいけない事だと知っている。僕はクレヨンしんちゃんではない。むしろ、僕は良い子だから、「ちんこ」とか「ちんちん」とか、人前で口に出す事自体、恥ずかしくて出来なかったくらいだ。特に家の中では、下ネタはタブーな気がした。その反動として、授業中に、机の下で、短パンの裾から勃起したおちんちんを、ちょろちょろさせる思いつきは、当時の僕にとって、とても魅力的に思えた。15年経った今、僕はこの酔狂なアイディアから、実に様々な感情や考えを学ぶことができたと、振り返って思う。
まず、前提として、これは完全犯罪に仕上げなくてはならない。これが第一のミッションであり、命がけでクリアしなければならない問題だ。まず視覚的に見られないか確認しなければならない。座席はクラスの中で一番右端の中央あたりで、隣の席に女の子が座っていた。机は脚元が見えるタイプだった。もし最前列に座っていたら、確実にアウトだが、幸い、目前に人が座っている。先生の視線からは、見られないはずだ。運が良い。問題は後ろ、特にななめ後ろの人から見られる可能性がある事だった。危険すぎる。しかし短パンの裾から、こんにちは!させるくらいなら、気が付かれないだろう。一抹の不安を払しょくできないが、たぶん大丈夫だ。もちろん、隣にいる奴からは、見えないからOKだろう。机のおかげで死角となっている。机と腰の距離を近づければ大丈夫だ。あと必要なのは決断力。ところが、すんなりと決断できない。なんで、こんな事しているのだろう?と冷静になるとアホらしくなってくる。自分の頭はどうかしているとか、誰もこんな事考えないとか、自分を責める考えが浮かんだ。計画を辞めるか?
しかし、僕を煽る考えも浮かんだ。「なんだ、辞めるのか?お前は、おちんちんを出す事もできないのか。いい子にしか、なれなくて、皆と同じ事しかできないのだろうな。将来もたかが知れているだろうな」
様々な想念が頭の中に渦巻いた。頭がパニックになるほど考えていると、僕は頭の中の情報をきちんと整理したい欲求に駆られた。計画を中止した方が良いという主張は以下の理由が思いついた。まず、自分でも、なんのためにちんちんを出すのかわかっていない。 仮に見つかった場合、ひどく叱責され、罵られ、先生に叱られる。その結果、僕の印象は地に落ちて、そのあとの学校生活が悲惨になる。てか、ほんと、出す意味わからない。一方、出した方が良いという理由は以下の通りだった。先生の話が面白くないから、暇つぶしがしたい。スリル感を味わいたい。仮に見られたら、見た奴を唖然とさせる事が出来て面白そう。てか単純に気持ちよさそう。公共空間を私的空間に変えてやりたい。もし、おちんちんを出したら、きっと僕だけの忘れる事のない一生の想い出となるだろう。
そのように、僕は自分の考えを両価的に整理する術を学んだ。決断の決め手は、一生の思い出が作れるというメタ的視点だった。僕は、知性的にちょろちょろさせる事を肯定した。そして、実行した。膨れ上がるペニス。血管の脈が打つリズムは心地よく、僕の生きている感覚を、強く思い出させた。生きるテンポをペニスの鼓動から感じたのだ。
僕はこの意外な発見に驚きながら、ちんちんを横にスライドさせて、よこちんの準備を始めた。バレない様に腕の動きはゆったり且つ自然と動かした。その様態は、まるで、ハンターハンターのネウロの秘儀、千手観音のように神々しかった。しかしその時、僕はある不安を予期した。「もし、隣の女の子にちんこ触ってるの見られたらどうしよう?」そう、神々しい光を放つ私の一連の動きは、手で下半身を触らないとできない。外から見たら、単純にちんこをいじる生徒に思われるだろう。僕は赤面した。とてつもない疾しさと恥ずかしさを感じた。と同時に女の子の気持ちを想像して興奮もした。きっと、女の子は「こいつ、ちんこをいじっている」という意識が浮かぶだろう。女の子がちんこを考えている。その事実に興奮する。エロい。僕はそこでエロスを学んだ。いや、そんな事言ってられない。
変な目で見られたら辛い。本当につらい。嫌だ。ではどうするか?そんな時、お父さんが股間をぼりぼり掻いている様子が頭に浮かんだ。「これだ!股間が痒いふりをすればいいんだ。」そう、一番怖いのは、なんのために股間を触っているのか理解されない事である。
見られたときに、股間が痒いというフリをすれば、僕の行為に意味を与えることが出来る。僕は言い訳をつくり、自分の心を落ち着かせた。
太ももに沿うように、勃起させたちんちんを寝かせた。SET完了。ヨコチンをSETした僕は、いよいよおちんちんを世界に解き放つ時がきた。ここまで、計画通りにきたことに、満足感と充実感と主体性のような高貴な感情を感じ、最後の仕上げにかかろうとした。あとは、321で短パンの裾をめくるだけだ。
しかし、この段階に来て、僕は、突然、躊躇してしまった。さっきまで感じていた、達成感は消え、恐怖が襲ってきた。短パンの裾をめくる、その動作はごく単純なものだったが、とてつもなく重々しい事のように思えた。短パンの裾をめくる、すると僕のペニスが外へ出る。それだけのことだ。ただ、それだけの事なのに、異様に緊張した。そもそも、これは誰もやろうとしない行為だ。それに、授業中、ちんちんを出すなんて、言語道断だ。馬鹿だ。一度やってしまったら、何かの境界線を越えてしまう気がする。あと戻り出来ない気がする。自分がふつうじゃない人間になってしまうような、途方もない恐怖が襲ってきた。やめたい。やめたい。やめたい。意味不明な欲求を全力でなだめる理性と今にもはち切れそうな心の叫びとの間で、僕は葛藤した。ものすごい早さで心臓は早鐘を打ち、頭の回転は速くなっていた。全力で考えなければならない問題がここにはあった。
僕は考えた。なんでこんな欲求を持ったのだろう?そして、皆の顔を見渡してみた。
真面目そうに、きりっとしている奴もいれば、ぼーっとして口をあけている奴もいた。皆の顔つきは、ある共通点がある。きりっとしている奴は、昨日もきりっとしているし、ぼーっとしている奴は、昨日もぼーっとしていた。この事実が、僕へ言葉では言えない、現実を突きつけた気がした。もしかしたら、皆、自分の行為によって、自分を創り上げているのではないか?きりっとしている奴は、今、先生の話を自ら聴こうとしているのだ。ぼーっとしている奴は、先生から話を聞かされているのだ。自分はどんな顔つきなのだろう。ぼーっとして、何もできないと思われたら嫌だな。僕は、なんでも出来る人間になりたい。
自分から行動できる人間になりたい。そのためには、なんでもやろうとする態度が大事だ。
そう、思った僕は短パンの裾をめくりあげていた。。。。。
ちょろっと、出たのを上から確認した。赤かった。尿道の縦筋が見えた。なんか、生きてる気がする。心臓は早鐘を打つ。僕は境界を越えてしまった人間。最低だ。けど、僕の心は喜んでいた。この教室には、僕という隠れた異常者がいる。けれども、机の上では何の変哲もない人間に思われている。しかし机の下では、非現実的な現実が起こっている。そこで僕は考えた。もしかしたら、僕だけじゃなくて、皆も変な欲求を持っているのかもしれない。でも、机の下を見せないだけで、本当は、皆、何かを隠している?僕は、この想いつきのおかげで、なんだか皆のことを愛おしく思えるようになってきた。なんだ、皆ふつうのフリをしているかわいい存在なんだ。普通になりたくて、皆に認められる振る舞いを演じているのか。なんてかわいいのだろう。机の下を必死に隠しながら生きている。でも待てよ?だとしたら、机の下は、刺激そのものじゃないか?
もしかしたら、その普通の暮らしに、面白みというスパイスを加えるためには、隠した欲求を少しだけ、出す事が大切なんじゃないのか?そうだとしたら、僕は、そのスパイスの取り扱いに上手くなりたい。そして、そのスパイスを通して、僕は、僕を楽しませて生きていきたい。
しばらく、僕はこの余韻に浸り、結局、ぼーっと過ごした。
だんだん興奮が収まってきて、勃起が収まってきた。ちんちんは、パンツに吸い込まれるように萎み、僕の計画は幕を閉じた。