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追跡

明人は学校の図書室で、玲と共に嘉韻と慎吾も巻き込んで、魔法陣が見つかった際の解き方を探し出していた。玲がパソコンから顔を上げた。

「多分これだ。」玲が言った。「ほとんどの封じの魔法陣に共通している方法だ。それを念の為にいろいろ他に面倒な手順のある封じの魔法陣の解く方法と合わせて、完璧に解こうと思うと、こうなる。」

玲は、箇条書きになったそれを三人に見せた。嘉韻が眉を寄せた。

「…また面倒なことよな。この、銀杏の葉を燃やすとはなんぞ?」

玲は肩をすくめた。

「この植物の花粉拡散を封じる魔法陣を解くのにあったのさ。それを混ぜただけ。」

明人が眉をひそめた。

「十六夜は植物じゃねぇぞ?」

慎吾が横から手を出してキーボードを触る。

「…この辺りを消したらどうだ?ええ、これと、これと…」

玲が声を上げた。

「駄目だ!そんなに端折ったら解けないかもしれないだろうが。」

明人が首を振った。

「明らかに関係ないのがあるだろうよ。これなんかそうだろう、術者に口付ける…オレはそれが例え嘉韻でも無理だ。」

嘉韻が驚いた顔をした。

「我とて御免よ!なんの魔法陣を解く方法なのだ?」

玲は画面を指した。

「これだよ。相手の気持ちを封じて意のままに操る魔法陣。」

慎吾は顔をしかめた。

「…意味がないの。相手が想いびとであったりしたら、口づけたら解けるからの。」

「そんなこと我に言われてもさ。」と玲。

明人は痺れを切らして慎吾からキーボードを奪った。

「ああもう、これと、これと、これと…これ。」明人は、4項目だけ残して後は削除した。「それで解こう。普通に考えたらこれで解けるはずだよ。他のはあまりに…なんて言うか、専門的過ぎる。」

「マニアックというかの。」

嘉韻が言う。慎吾と明人が驚いて嘉韻を見た。

「なんだ、人の言葉が話せてるじゃねぇか!」

嘉韻は眉をひそめた。

「さすがにあれだけ主らと過ごしておれば、少しぐらい覚えても来るわ。そんなことより、これを頭に入れて解き方を決めようぞ。まず魔法陣を手に入れたら、それを空中へ放り投げる。その後、明人、主がこれを。」

嘉韻が項目を指す。明人は頷いた。

「慎吾、主がこれを。」

慎吾は顔をしかめた。

「我だけ血を流す訳か。」

嘉韻は片眉を上げた。

「別に我でも良いが。」

慎吾は少しムッとして首を振った。

「我がやる。」

嘉韻は頷いて、残りの二つを指した。

「これらは我が続けてやる。我は炎の術が他の龍よりは得意だ。鳥の宮で炎ばかり使う軍神に囲まれて、龍であるのに毎日そればかりであったからの。ただ、パワーが足りなんだら加勢を頼むぞ。」

二人は頷いた。玲がため息を付いた。

「我の役目はここまでか。頼んだよ、三人とも。」

三人は真剣な顔で頷いた。そこへ、光明が駆け込んで来た。

「やっぱりここに!王から命が降りた。残党を捕えに森へ向かう。」

三人は弾かれたように立ち上がると、飛び出した。

「ここまで泳がせていたのに、また急だな。」

明人が言うと、光明は頷いた。

「鈴藍が軍神一人に助けられて逃亡し、その際その軍神は、紅雪殿を人質にとって連れて参っておるのだ。」

明人は絶句した。なんだって…宮に居て、無事だったはずでは…。

嘉韻が言う。

「それはいつのことだ?」

光明は答えた。

「はい、ほんの一刻ほど前のことかと。それで王はすぐにと命を出されたのです。」

明人は無言で飛んでいる。慎吾は言った。

「…人質であるなら、死んではおらぬな。あれらの命を繋ぐには、死んでおっては役に立たぬゆえ。敵もそこまで愚かではあるまい。」

光明は頷いた。

「そうなのだ。だが追いつめられると何をされるか分からぬからと、急ぎ森の東、龍王の結界端ぎりぎりの所へ向かうようにとのことだ。」と手を前に翳して、光る線で地図を示した。「我らはここ。周囲を囲むようにするとの命だ。」

明人は頷いたが、あまり頭に入っていなかった。紅雪…まさか、そんなことになっていたなんて…。


木々がざわざわとざわめく。拘束の呪で縛られた紅雪は、気が付いていてそこに座らされていた。

利晋が空を見上げる。

「…来たな。月の宮の軍神がこの回りを囲みつつある。やはり、気を遮断していても意味がなかったか。」と、そばの銀杏を見上げた。「しかし、大きな木よ。小さい頃我のよく登った銀杏も、確かにこれぐらいはあったものを…。」

人がある日やって来て、その辺りの大木も何もかもを根こそぎ切り倒してしまった。利晋はそれを見ているしか出来なかった…いつも、突き放すようで居て命の気を多く分けてくれていた、あの銀杏…。最後に人の目をかすめて、密かにその実をいくつか持ち去るしか、子供だった利晋には出来なかった。

利晋は、なので人が嫌いだった。困って居ようが黒い霧に憑かれようが、下等な神にからかわれて居ようが、助けようとは思わなかった。だが、王の嗣重は言った。

「人は愚かよ。何も知らずにやっておること。しかしそれはまた、人のせいでもないのだ。教えてやる者が、人にはおらぬゆえの…なので利晋よ。もしもすがる者がおれば、助けてやるのだ。それが力と知恵を持って生まれた、神の務めであるからの。」

利晋には分からなかった。自分たちの生活が脅かされて、そして消し去られて行くのは、全て人ゆえであるのに。力を失ってしまうのも、人ゆえであるのに。

王は、しかしすがって来る人は助け続けていた。そのうちに、さらに進んだ自然破壊のため、人を助ける力すら失ってしまった王は、それでも悲しげに人を眺めた。助けてやることが、もう我には出来ぬと言って…。

「我は、王を助け、一族を助けるため、討って出ようぞ。」と、利晋は回りに少数の軍神に言った。「主らは皇女を守って我らに気を向けておる間に、皇子の張られた結界へ向かうのだ。」

命じられた数人の軍神は頭を下げた。鈴藍は利晋に言った。

「そのような!今度こそ、討たれてしまいまする。数は絶対的に少ないというのに…」

利晋は、首を振った。

「こうするよりありませぬ。我らには紅雪殿がおるゆえ、すぐに討たれることはございませぬ。そろそろ別働の皇子が、他の軍神達も助け出して宮の中から崩そうとしておる頃…軍神達はここばかりに構っても居られなくなる。内側から崩すことが、当初の目的でありました。龍王があれほど迅速に宮を守ってしまうとは思わなかったゆえ、遅れただけです。」と、他の軍神達を見た。「頼んだぞ。必ず皇子の結界内へ。」

軍神達は頷いた。利晋は空を睨んだ。

「参る。」

数人が共に飛び上がった。

一層木々が騒ぐ。月がそれをただ見ているのを、鈴藍は感じた。


明人達は、森の東上空へ到着していた。確かにいくつかの気を感じる…もはや、気を遮断する膜は被っていないようだった。その中に紅雪の気も感じ取った明人は、居ても立ってもいられなかった。早く助けなければ。どれほどに不安であることか…。

龍王が蒼と共に浮かび、何やら話している。恐らく捕えるのは簡単だがと話しているのだろうと思っていると、蒼がこちらを向いた。

「嘉韻!これへ。」

嘉韻がすっと蒼の元へ飛んで行く。空中で膝を付く格好でしばらく話していた嘉韻は、戻って来て明人と慎吾に言った。

「我らは、魔法陣を回収して封じを解く任を与えられた。解きかたを知っておるのは我らだけ。別働として密かに動く。」

明人は、嘉韻に言った。

「だが、紅雪はどうなる?オレは助けなきゃならねぇんだ!」

嘉韻は厳しい顔をして首を振った。

「それは他の軍神に任せよ。我らの任は他にある。私情など持ち込めるはずはなかろうが。」

嘉韻の険しい顔に、明人はそう言ってしまったことを後悔した。一度命が降りてしまうと、それを果たすのが軍神の仕事。忘れていた訳ではなかったが、ついそう言ってしまった。

明人のそんな様子を見て、嘉韻は表情を緩めた。

「大丈夫、無事な姿は見れるだろうて。どうせ魔法陣と紅雪殿は近くにあるだろう。さあ、参ろうぞ。」

三人は、スッと隊から離れて降下した。気配を隠し、目に付かぬように背の低い木々の間に身を潜め、ゆっくりと進んだ。

「きゃあ!」

その時、数十メートル先から、聞きなれた声の悲鳴が小さく聴こえた。何かが上に向けて飛び立ったのがわかった。あれは、きっとあの軍神達だ…!紅雪を連れて、飛び立ったのだ。

「紅雪…!」

明人は呟いて空を見上げた。

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