ティナの弱点、国の弱点
「だめったらだめ! ティナとシャルドはここで待ってなさい! シャルドはその間ティナの従者になればいいじゃない」
あれから数刻、ふくれっつらのティナと平然としたシャルドに対してレイアは説得を試みていた。
「嫌ですよ。僕は生まれた時から死ぬまでレイア様のそばにお仕えすると決めたんです」
その言葉にティナの頬が膨らむ。
「お姉様のいう通りにしたらいいのに」
前回、シャルドと離れ離れになる時には号泣したティナ。今回はそうならないように勇気を振り絞ってついていくことに決めたのだが、そんな良案があったことには気づかなかった。強引な手段をとればシャルドも従わざるを得ないのだが、そこまでする気は妹姫のほうにはない様だった。
「いいわ。お父様にそう言ってくるから」
レイアはしびれを切らして部屋を出て行こうとする。
「待ってくださいよ! そんなことしたら僕死んじゃいます」
「そんな! お姉様待ってください。そんなことになったら私……」
レイアはぎょっとする。彼女を泣かせると非常に面倒くさい。ティナが泣く。父がうろたえる。かかりっきりになる。国が滅亡する。容易な図式であり現に前に泣いた時も危ういところだった。
なんとしてでもティナにはここに残ってもらわなければならない。シャルドは死なせられない。行くのは戦場ではないが危険が待ち受ける数々の場所。
「わかったわよ。二人で無事に帰ってくると約束するから。ティナ、我慢して。早めに終わらせてちゃちゃっと帰ってくるから」
この条件をなんとしてでも飲んでもらわないとならない。
レイアはティナの説得に一夜を費やすのだった。