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◇魔王:フェルディーン

 

 

フリーダム魔王、ディーン様ご出陣ー。

ある意味一番厄介な魔王様です。

 

匂わせてますが、朝チュン以下なので注意は無しで。例の如くその後は脳内にて各自補完なさって下さいませー。

 

 

 

 


 

「…以上。無いと思いますが、緊急の場合は呼び戻して下さい」

「ふふっ、嫌だなぁ…そんな事させるワケ無いじゃないか」

「…宜しくお願いします、宰相殿、王佐殿」

「ええ、わかりました」

「了解、無いと思うけど」

「あれ…私、無視?」

 もちろん無視です…我等が魔王陛下。この程度の事で冗談を真に受けていると話が進みませんので。

 

 煌々しい金髪碧眼に白い衣装を好まれる一見穏やかそうな美丈夫、所謂理想の王子様像を体現していらっしゃるこの方が我等が魔王陛下…『樹海の魔王』ことフェルディーン陛下でいらっしゃいます。

 ただし、外見に惹かれて勝手に中身を妄想で補完すると、絶望する事請け合いです。見た目理想の王子様の中身は、神出鬼没な冗談好きの愉快犯にして享楽家のサボり魔…そもそも、魔族の長たる魔王に人間基準のモラルを求める方が間違っているのですが。

 

「問題ないでしょうか?」

 一応、事前に伝えてはあるのでこの場の主な目的は確認と陛下への報告となります。

「うん、特には」

「私の方も同じく」

 休暇中の采配は、残っている他二名の側近が受け持つようになっています。私が近衛となり二人で分配出来るようになった為、かなり楽になったとの事…そんなものでしょうか?

 

「はぁ、確かに半分冗談ではあるけど…極力呼び戻さないようにするって言うのは本当だよ、ユーリス。休暇を楽しんでおいで」

「では仕事を溜め込まれませんように、ディーン様」

 宰相殿と王佐殿は陛下呼びなのに、私だけは愛称に様付けの呼び方をするように言われているのは…何故なのでしょうか?

 まあ、場は弁えますが。

「うぐっ…が、頑張るさ……」

「では、本日はこれで御前失礼致します」

 一矢報いた所で、本日は準備の為に自室へと引き上げです。

 

 

 …と言っても、魔王側近の自室は王城内の陛下占有の最上階層の一つ下にあるため移動距離など微々たるもの。

 側近が増える度に城に建物が丸々一棟増築され、その最上階ワンフロアが私室として与えられる為、私的には少々スペースを持て余し気味という事実。

 しかも、私室以下のフロアについても好きに使えばいいとほぼ増築された一棟丸投げ状態。…放置もどうかと思ったので、私は仕事関連の施設として使っているものの、前世と今世で染み付いた小市民感覚は如何ともし難く……。

 

「必要なら王都で買い揃えるか…」

 荷造りは、わずかな身の回りの物を収納用の亜空間に放り込めば完了。

 魔族の作る物品は人間にとってはほぼオーパーツに等しく、それは日常品にまで及ぶ為に魔王の領域外では迂闊に使えないのが難点。それに加え、現状で私が維持把握できる亜空間が四畳程度の広さしかなく、あまり大量には詰め込め無いのも事実。

 あっさり終わった支度に手持ち無沙汰になれば、ふと、背後に気配が…。

「準備は終わったのかい?」

 

「戯れはお止め下さい」

「つれないなぁ……」

 伸ばされた手をすり抜けて、代わりに彼の方好みのワインを瓶ごととグラスを一つ差し出した。

 明日には此処を発つと言うのに、全くこの方は…。

「私の分だけかい?付き合ってくれないの?」

「二日酔いは困りますから」

 そう言いつつもソファに陣取って嬉々として栓を抜き、手酌でワインを楽しみ始める辺り…対応はこれで問題無し、と。

 これもまた何時もの事なれば、対応も慣れたもの。

 魔王の領域はその地を治める魔王のテリトリー、その内なら何処に現れようと当たり前なのです…それが結界に守られた私室であろうとも、ね。 

「何か引き継ぎに不備でも?」

「特には無いかな。むしろ、過保護なくらいに完璧だよ」

 つまらない…と呟いてわざとらしく溜め息をつかれても、そうそう不備など出しはしません。

 それを理由にアブノーマルな趣向を凝らされるなど、心底御免です。

「可愛げがあった方がいいと思わないかい?」

「私の仕事に必要ですか、可愛げが?」

「それもそうか、ああ残念……」

 可愛げなど私の仕事には不要…部下はまだしも、魔獣に舐められては仕事になりません。そして、この仕事を私にお命じになったのは貴方です。

 そもそも、ディーン様…貴方は、『可愛げ』なんて役に立たないモノで側近選ばれていませんよね?

 

「そうだなぁ…さしあたって、悔しいから可愛くなって貰おうかな」

「え……あっ!?」

 半回転した体がすぽっとソファに嵌ったかと思えば、体の前面にエプロンのようなひらりとした布…いや違う、これは……。

「何で封印したの?似合うと思って、せっかくオーダーメイドしたのに」

 それは見紛う事無き、先日クローゼットの再奥に念入りに封印した白ローブ……。

 

「魔法主体では無い自分が身に纏うのはおこがましいかと…」

「んー…ああ、そうか、人間だと魔法使いの象徴だったねぇ」

 その間にも着々と脱がして着せ替える気満々なのは…正直引きます。

 抵抗しても無駄なので抵抗はしませんが。

「ほら、似合う」

 わざわざ括っていた髪まで解いて…平凡顔の私など着られるのが落ちですよ?

「似合いませんよ。第一、白は…貴方の色ですから」

「皆そう言うよね」

 苦笑されても…日の浅い私ですら知っている、『樹海の魔王』の領域に住む者の常識です。

 

「別に私は禁止などしていないのに」

「知っています。ですが…少なくとも、私は貴方以上に似合う方を知りません」

 おそらく誰に聞いても同じ答えが返るはず…ですが、あえて答えましょう。私は知っていますから、その答えに貴方が喜ばれる事を。

「嬉しい事を言ってくれるね…でも、本当に残念なんだよ?君の黒髪はこんなにも白に映えるのに」

 少し癖のついた髪を梳き心底惜しそうに言われても、おそらく私が自主的に白の衣装を纏う事は永久に無いでしょう…それが貴方を選んだと言うこと。

 

「おいでユーリス…暫くお預けなんだから、たくさん抱きしめさせてくれるよね?」

「ディーン様……」

 濃い魔力の香に思わずゴクリと喉が…こういう事態にならなければ、吸魔体質を恨めしく思う事も無かったのですが……。

「ふふふっ、欲しいよね?素直なユーリスは大好きだよ」

 ふ…ふふふ、もう不可避ですね…体が勝手に貴方に促されて寝室に……。

 シンプル過ぎて逆に内装を頼んだ相手を困らせた飾り気の無い近代的な此処だけは白い寝室、ただし質は最上級…誰の為かは推して知るべし。

 

「ユーリス……」

 だからっ…魔力を込めて呼ばれると、腰が砕け…っ!

 

 

 ああ…明日の出発予定が昼前にずれ込むのが確定事項に……。

 

 

 

 

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