◇宰相:レヒト
宰相様はオープンで積極的なお方です。主人公は真逆。
より濃いBL成分をお求めの方は、会話内容のシーンを脳内補完してお楽しみ下さい。
「ああ、アレはダメですよねぇ…もっとって言っちゃいますよ、しょうがないです」
うんうんと頷いて同意してくれているのは、『森の魔王』の側近その1こと、宰相のレヒト殿。
宰相をしているだけあって有能さは折り紙付き、書類の八割はこの方のお陰で回っていると言っても過言ではないのにそれを苦にも思わない…ある意味書類マニア。
「慣れないですかね、吸魔体質には」
「慣れませんよ」
「まあ、まだ三年ですからね。ある意味現状を受け入れて馴染んでいるだけでも見事なものですが」
そう言って湯飲みで緑茶を啜る姿がやたら堂に入っているものの…一応、言っておくなら宰相殿の顔立ちは完全に北欧系。ダークグレーの髪にアイスブルーの瞳の、緑茶とは程遠い人種の外見をしている。
茶葉と緑茶の製法を持ち込んだのがほんの二年前とは思えないくらいには『森の魔王』の領域に馴染んでいるという…笑えない事実。
「意図しなくても勝手に流れ込んで来ますが、あの方わざと注いで此方に求めさせるのがお好きですから…」
「それは…そうではないかと思っていましたが、そうなんですね?」
「ええ、確信犯ですよ、あの方は」
休憩中の茶飲み話がどうにもシモな方向に偏るのはしょうがないと思って欲しい。…と言うより、コレの相談が出来るのが現状は宰相殿しか居ない。
『森の魔王』の配下で側近と呼ばれるのは宰相、王佐、近衛のたった三人のみ。その三人共が魔王本人と…な関係にあるため、この『森の魔王』の領域では側近=魔王の愛人が暗黙の了解となっていたりする。
…近衛の私がソチラの相談が出来る相手が、宰相殿か王佐殿しか居ないのはご理解いただけただろうか?…因みに、現在王佐殿は長期休暇中の為居ないので、必然的に宰相殿になるわけだ。
別に寵を競う必要など無いので、互いにあるのは仲間意識な状態だが。
「素直になれなんて言いませんから、早く諦めを付けるのが肝要ですね」
この件で魔王陛下を窘める選択肢など無い…無理、不可能。
自分より力が上の相手に求められれば応えたくなってしまうのが魔族の性故に…相手が魔族最強の魔王陛下だと言うまでもなく。
「慣れる…べきと?」
「いえ、必要なのは諦めです。慣れるなんて無理でしょう、それこそあなたの生真面目な性格的に?」
嫣然とした笑みは慈愛が溢れんばかりに…そんな微笑ましさたっぷりの視線に晒されると居たたまれないのですが、宰相殿?
「恥ずかしくても最終的に口走ってしまう自分が愛しい…そのレベルまで到達出来れば完璧ですね」
握り拳で力説しないでください、それはいったいどんな高みですか?
結局の所、私にあの羞恥を回避する手段は無いと言うことですね?そして、寧ろその事に羞恥を感じる私を推奨ですか…意味が無いではありませんか…。
「ほら、私達三人タイプが違うからいいんですよ、きっと。その差異が無くなると魅力半減するかもしれないですよ?」
そんな魅力は自分は心底求めて居ません…。
結局愚痴をきいてもらうだけで、日々の休憩時間は終了。宰相殿には申し訳なく…思った事が今の所無いのが救いだろうか。
本人の性質上、宰相殿は実はこの類いの話が大好きと言う…。
…爛れた職場関係というのは自覚ある事なのでどうか突っ込まない方向で。