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[完結]ダンジョンができた世界で、屑スキル持ちの僕は異界人と仲良くなれました。  作者: 安ころもっち


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No.09 塔の役割


 翌朝。


 新たに加えた仲間を引き連れての探索の初日。 僕たちは転移陣により5階層までやってきた。


「カ……カオリさん、前衛なんですよね? は、早く行ったら、どどどどうですか?」


 遭遇した一匹の小鬼(ゴブリン)と睨み合いながら、僕の背後でそんなことを言うハルカちゃん。


「何言ってるの! 私はまだレベル上がってないの! だから今の私は、スキル無しと言っても過言じゃないわ!」


 特注の丸みを帯びた金属バットのような得物を持ったカオリさんが、同じく僕の背後に隠れるようにして答えていた。 二人が言い争うたびに、僕の背中が押されたり引かれたりと、その状況に戸惑う僕だった。


 一方、やや離れた場所で魔力強化用の短い杖を握りしめながら、小鬼(ゴブリン)から目を離せないカツオさん。


「さ、最初は、一緒にいるだけでレベルアップ、するんですよね?」


 そう言うカツオさんに、リリアが「そうだよー!」と明るく答えていた。


 この階層ではさほど成長できないだろう。 この階層に来たのはあくまで塔の雰囲気に慣れてもらうためだった。 ハルカちゃんとカオリさんの二人は、未だに僕の背後のポジションを巡って言い争っている。 頼られているようで悪い気はしないが、なぜそうなったのか?と首を傾げる。


 何にせよ、これから始まる攻略の日々が、これまで以上に騒がしくなることを確信した。


 結局、この階層ではさほど成長できないだろうと判断した僕は、早々に小鬼(ゴブリン)を倒し、26階層へと向かうことを決めた。


 僕はすでに30階層まで攻略を済ませていたが、三人にとってここはまったくの未知の領域。 転移直後の三人は、その禍々しい空気に圧倒され、恐怖に震え上がっているようだ。 カオリさんとハルカちゃんは僕の背中に縋りつき、震えながら目に涙をため、首を左右に振って僕に助けを求めていた。


 カツオさんはさっきから中腰のまま固まっている。


 僕は三人を何とか宥め、入り口近くの安全な場所に待機させると、向かってくる魔物の群れへと飛びこんだ。 石人形(ゴーレム)の重厚な拳をかわし、大目玉(ダークアイ)の触手を避けながらそれを叩き切る。


 階層を走り回り、魔物を引き連れて戻ってきてはまた倒す。 それから数時間、三人が怯えながら見守る中、僕はひたすら魔物を倒し続けた。 しばらくはそんな日々が続くことになる。


 数日が経過した頃、三人の様子を確認しながらも徐々に階層を上げ、僕たちはついに30階層へと到達した。 この頃になると、僕の稼いだ膨大な経験値により、三人の能力もそれなりに底上げされていた。


 少しづつではあるが、三人のスキルについてもようやく機能し始め、それぞれの意識にも変化が見られた。 積極的に戦いに参加しようという意気込みが見えるようになってきたのだ。


 ハルカちゃんの放つ強化された煙幕が魔物の視界を封じ、逃走や不意打ちの起点を作る。 カオリさんのバットも、牙突のスキルが反応し始めた。 丸い先端が石人形(ゴーレム)の装甲を貫き、粉砕する。 カツオさんの回復魔法も、僕たちの疲労を確実に癒せるようになっていた。


 三人の成長を実感しつつ、30階層のボス部屋へと続く扉の近くで休息を取る。


 休憩中、リリアが慣れた手つきで通信用の魔導具を取り出した。 通話の相手は魔界にいるエミリカだった。 定期的に連絡を取り合っている彼女に、塔の攻略状況を身振り手振りを交えながら、面白おかしく伝えている。 残念ながら互いの姿は見えていないのだが。


 その日、エミリカから語られたのは、この塔の真実だった。


 この塔は、魔界と日本を繋ぐトンネルの役割と同時に、「浄化装置」の役割も持っているという。 魔界に充満している魔人たちには有害となる魔素を、塔が少しずつ吸収し、魔界の魔素濃度をかろうじて現状維持にとどめているのだと。


 塔の最上階にあるダンジョンコアには、魔界から流れる浄化前の魔素が蓄えられ、少しづつではあるが浄化された安全な魔素へと変換される。 現状は魔界側から流れる魔素が多いため、浄化前の魔素が日々増え続けているという。


 稼働から一年以上が過ぎ、浄化前の魔素が膨大に蓄積されているダンジョンコア。 もしそれが何らかの理由で停止したのなら、暴走した魔素によって両方の世界が消滅するほどのダメージを受けるのだと、今更ながら告げられた。


それゆえ、何があろうともこの塔を消すことはできないようだ。


 魔界にいるエミリカが何らかの要因で命を落とすか、数百年後に彼女の寿命が尽きれば、双方の破滅は避けられない。 なるべく早く最上階へ到達してダンジョンコアの管理権を得て欲しい。 それがエミリカの願いだった。


 そしてもう一つ、塔の最上階でその管理権を取得することができれば、事態は一変する。 貯めこまれた魔素、それも浄化前や浄化後に関わらずというその膨大な魔素を使えば、ダンジョンの仕様を自由に変更することができるのだ。


 安全で素材として優秀な魔物を大量に生産し、宝箱の出現率を上げることも可能になる。 だからこそ、管理権を悪用することのない心優しい誰かに、その権利を取得してほしいというのが、魔界の住人たちの願いなのだと、震え声のエミリカから聞かされた。


 そんな大役を担うなんてと、僕はプレッシャーで押し潰されそうになった。 そう感じ顔を伏せた僕の肩に、リリアの小さな手が添えられる。


「サトウならできるよ! サトウは強いから!」


 顔を上げた僕は、無邪気に笑うリリア、そしてその言葉に、少しだけ勇気をもらうことができた。 救うべきは目の前の少女であり、二つの世界そのものだ。 僕はプレッシャーを覚悟に変え、塔を必ず攻略することを、リリアとエミリカに約束した。


 それと、日本政府には管理権についての話と、ダンジョンコアが機能停止すると二つの世界が崩壊することについて、内緒にすることを決めた。 特に二つの世界が崩壊する事実が露見すると、この世界と繋いだ魔界側の責任を追及する者も、出始めることは充分に予想されたからだ。


 決意を新たにした僕たちは、連日塔へと足を運ぶ。


 日を重ねるごとに三人のスキルもその力が強化され、僕たちの歩みは確実に加速していく。 目指すは最上階である100階層。 塔の真実を背負い、僕たちは再び歩き出した。


ダンジョンコアの魔素の蓄積可能量は無限大! 利用価値も無限大!


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