No.08 新たな出会い
本日二本更新、二本目。
襲撃を受け、塔へ行くことにやや恐怖を感じる僕。
そして、僕たちは二人での攻略、というより僕一人の力での塔の攻略は無理だと考えた。 今後さらに強くなる魔物との戦い。 それに加え新たな敵からの襲撃が今後も続くかもしれない状況。 もはや僕だけの力では、対抗するのは難しいだろうとも考えた。
幸いなことに、スキルの範囲操作についてはそれなりに使いこなせるようになっていた。 信頼できる仲間が必要だ。 そう思った僕たちは、新たな仲間集めに奔走した。
協力者を募る際、本音が出てしまうというダンジョン産のアイテム、「真実の指輪」という呪われた装備を志願者に装備させた。 装着した志願者は、リリアの恩恵にあやかり、利用して欲望を満たそうという者ばかりだった。 それ以前に、指輪の装着を拒否する者もいた。
加えて、政府から最低条件とされたリリアを主とした「隷属の首輪」を装着することについても、誰もが激しく拒絶した。 打算と慢心に塗れた連中に嫌気がさし、僕たちは公募ではなく、独自に仲間を探すことを決意した。
探索者への道を望みながらも、世間から「不遇」と切り捨てられたスキルを持ち、かつ野心のない者たちを探す。 僕は政府が保持している塔に入った者たちの情報が記録されているデータベースを確認しながら、何人かの候補をピックアップした。
データベースには個人の能力だけでなく、生活環境や外見、初回のダンジョン見学の際に調査官の受けた印象まで詳細に記されていた。 その時、僕は自分の情報がどう書かれているか気になり、検索をかけてみた。
だが、僕の情報は「秘匿ユーザー」としてロックされており、閲覧することができなかった。
「秘匿は秘匿です。私のような末端には分かりません」
受付のお姉さんに尋ねると、事務的な口調でそう返された。
「じゃあ、どんな風に書いてあったか、推測でいいから教えてくれないかな?」
ダメ元で聞いてみると、お姉さんはやや戸惑った様子で視線を泳がせた。
「私はその情報を知り得ませんが……佐藤様のことは、きっと素晴らしい方だと書いてあると推測されます」
泳ぐ目と硬い声から、ろくなことが書かれていないことを知っているのだろうなと、そう感じてしまった。 僕は肩を落としながら、ピックアップした候補者を呼び出してもらうよう伝え、その時を待った。
数日後、身辺調査を終えて問題なしとされた最初の志願者が、僕たちの待つゲストハウスを訪れた。
中島カツオさん。 二十五歳の、穏やかな顔立ちをした男性。
彼の持つスキルは「回復」というスキルだった。 ポーションが安価にドロップする現状、回数制限のあるこのスキルは不要とされていることを知っていた。 医療従事者が軒並み失業する昨今、それ程までにこの世界にポーションは普及しているのだ。
そんな彼は、ソロで探索する勇気もなく、僕と同じように探索者となる道を断念していた。 それん、母子家庭で、病気がちの母親を支えるためにバイトを掛け持ちしているカツオさんには好感が持てた。
事前にリリアから、この回復というスキルは、高レベルになればアンデッド系に無敵の特性を持ち、さらには能力向上のバフも使用できるようになると聞いていた。 彼は大人しめの口調で面談を終え、リリアを主とする首輪の装着にも快諾した。
「くれぐれも、リリア様に変なことはしないでくださいね!」
同席していた世話役のお姉さんがそう釘を刺すと、彼は背筋を伸ばして宣言した。
「大丈夫です! ノンタッチは紳士の嗜み! どのような状況でも貫く所存です!」
急にハキハキとしゃべりだしたその言葉に、僕は少しだけ不安を感じた。 リリアの語る過去話から推測すれば、僕より遥かに年上のはずだが、彼女の見た目は少女。 だけど、「彼の忠誠心だけは本物だ、首輪もあるし大丈夫だろう」と、そう考えた僕は、深くは考えないようにしていた。
二人目の仲間は、リリアが少し前に話しかけ、気になっていたという女子高生だった。
井上ハルカちゃん。 常にスマートフォンを手放さない、内気な印象の少女。 彼女のスキルは「煙幕」で、周囲に黒い煙を出すだけのものである。 魔物は視覚以外で標的を捉えるため、探索者の間では「邪魔なだけ」とすぐにパーティから追い出されたようだ。
だが、レベルが上がれば「対象者を指定して視界を奪う」ことが可能になるとリリアから聞き、魔物以外、つまり人間からの襲撃を防ぐには、これ以上ないほど有用なスキルだと感じ、ぜひ仲間にとお願いした。
「ダンジョンは怖いけど、佐藤さんが一緒なら……頑張ります!」
そう言われ、なぜ?と頭を捻りながらも歓迎する。
さらにリリアから、「成長すれば毒ガスとかも飛ばせるようになるんだよー!」と言われると、彼女は少しだけ頬を緩め、僕の方をじっと見ていた。 背中に冷たいものを感じた。
彼女もまた、カツオさんと同様にリリアへの隷属をすんなりと受け入れた。 むしろ、首輪を嵌める際に鼻息を荒くして興奮しているように見えたのは、きっと僕の気のせいだろう。
三人目の仲間は、二十二歳の女性、遠藤カオリさん。 彼女は丸の内の商社で経理を担当していたが、残業続きの生活に限界を感じていた。 スキルは「牙突」という、鋭利な武器の攻撃力を激的に高める優秀なものだった。
便利な攻撃スキルで、前線で活躍している探索者も持っているスキルだったが、彼女自身が極度の「先端恐怖症」であり、尖ったものを見るだけで卒倒してしまうため、スキル発動には至っていないようだ。
「お姉さんすっごいねー! これ、レベルが上がれば、まーるいものでも突くことができるんだよー!」
嬉しそうなリリアの言葉に、彼女は悲壮な覚悟で頷いた。
「もう後が無いのよ、カオリ! 今やるの、そうここで! やってやるわー!」
自らを鼓舞するそんな気合の叫びと共に、隷属の首輪を受け取った彼女は正式に仲間となった。 こうして、探索者を諦めていた三名を加えた、新たなパーティが結成された。
僕は明日から始まる新たな冒険に、大きな期待……そしてほんの僅かな不安を感じながら、恒例となったリリアとのゲーム大会に興じた。
僕たちの冒険はこれからだ!
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