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[完結]ダンジョンができた世界で、屑スキル持ちの僕は異界人と仲良くなれました。  作者: 安ころもっち


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No.05 敵対者の影


 源ちゃんに叩き起こされた昼。


 昼食を済ませると、すでに元気いっぱいとなったリリアと共にダンジョンへ向かった。


 護衛の三人の見守る中、5階層での修行は夕方まで続き、僕は効率よく剣を振れるようになってきた現実に、気持ちを高揚させていた。


 夕方、早めに切り上げると、食事をとりながら再びリリアとゲームに勤しむ。 世話役のお姉さんから「ゲームは十時まで」と深々と頭を下げられ、リリアもそれを了承した。


 時間ぴったりに迎えに来たお姉さんに抱えられ、連れ去られるリリア。 お姉さんが部屋を出る際、リリアがこの後、入浴と体のケアを済ませてから眠りにつくのだと、彼女の日常業務の流れを説明された。


「だから貴方は、絶対にこの部屋を出ないように!」


 冷たい目で見下されながらそう言うお姉さんに、少し良いかもと思ってしまう。 それと同時に、まったく信用されていないのだなと感じつつも、僕自身もそれに倣うよう、規則正しい生活を心がけようと、早めに布団に潜り込んだ。


 それから三日ほど、朝からダンジョン、夜はゲームという日々が続いた。


 夜、源ちゃんがややかしこまった様子で、ゲストハウスを訪れた。


「明日より、我々は同行しません。すでに佐藤さんは、それなりの技術を身につけています」


 彼の言葉に驚きつつも、僕は耳を傾ける。


「ですが、過信はしないでください。常に慎重に、厳しいと思ったら前の階層に戻ること。 決して、リリア様を危険にさらすことのないよう、お願いしますね!」


 徐々に語尾が強くなる源ちゃんの言葉に、僕はまたも首振り人形と化した。


「僕も死にたくはないので、善処します」


 源ちゃんを安心させようと精一杯の笑顔を作ったが、返ってきたのは冷ややかな反応だった。


「ちっ、お前が死んでもリリア様だけは守れ!」


 舌打ちと共に放たれた言葉に心が折れそうになったが、日々の修行のおかげか、なんとか持ちこたえることができた。


「以前の僕なら、今の言葉で心が死んでいただろうな」


 彼が去った後、僕は一人でそう呟いた。


 そして翌日。 ついに彼女と二人だけのダンジョン探索が始まった。


 入り口の転送陣を使い、六階層へと転移する。 そこで早くも、あの痺れ毒蛇(ビッグバイパー)、さらには巨体猿(ビッグフット)と遭遇した。 緊張に身を固くしながらも、僕は二匹と対峙する。 敵の動きが見える。不思議と体が動く。


 迫力の欠片もなくなった二匹の攻撃を受け流し、何度かの斬撃でそれらを狩り取っていった。 弱体化させれば、僕でも十分に戦える。 そんな確信を胸に、一歩、また一歩と階層を上げる日々が続いていった。


 だが、僕が「リリアの唯一のパートナー」として周知されてくると、周囲の環境は一変した。 「なぜ屑スキルのあいつが!」「あんな奴に塔の存続を任せていいのか?」と、嫉妬する探索者たちが陰口を聞こえるように囁かれることもあった。


 そしてある日、そのリリアという異界との繋がりが、僕の命を危険にさらす、強大な敵対者を呼び寄せてしまう現実を、知るのだった。


 事件が起きたのは、僕が独りでコンビニへ買い物に出かけた時のこと。 突然背後からの衝撃を受け、意識を失った。 目を覚ますと、そこは見知らぬ施設の中だった。 もしかしたら、マンションの外では常に監視されていたのかも? そう思った。


 頭の痛みに思わず声を漏らし、縛られている手足を確認する。 振り子のように勢いをつけ上半身を起こす。 すると、監視でもされていたのか、正面にあったドアが開いた。


「目が覚めたようだな」


 高そうなスーツ姿の見知らぬ男が、僕を見下ろし頬を緩めている。 その背後には探索者と思われる装備を身にまとった男たちが、僕を威圧するように睨みながら立っている。


 そして、僕を見下ろしていた男が手に持っていた輪になった何かに視線を向ける。


「これはダンジョン産の魔道具だ。弱い魔物なら、これを着ければある程度言うことを利かせることができる、隷属装備といったアイテムだ」


 その言葉に背筋が寒くなる。


「これ、人間が付けたらどうなるのかな?」


 背後にいた冒険者の男たちが、下卑た笑いを浮かべながら近づくと、僕を床へと押さえつける。 強く押さえつけられ、息が止まりそうになる。 必死の抵抗も空しく、僕の首には、首輪がしっかりと装着された。


 その瞬間、吐き気を覚えるような不快感を感じ、思わずえづく。 だが、それはすぐに改善した。 何事もなかったかのように気持ちが落ち着いてくる。 これがこの首輪の効果なのか? そう思った時、僕は男たちにより縄を解かれた。


「じゃあ、あのリリアって女を手玉に取って、ここに連れてくるのが、お前の初めての仕事だ! 分かったらワンと鳴け!」


 スーツの男は高圧的にそう言って笑う。


「わ、わん? ……あれ?」


 思わずわんと鳴いてみたが、特になんの感情も湧かず困惑する。 そして手足の動きを確認するように動かしてみる。 これは、どういうことだろう? 命令が強要されるような感覚も特に無いように感じた。


「じゃ、じゃあ、リリアを迎えに行ってきますね?」


 とりあえず逃げ出す口実を作り、僕は男たちの横をゆっくりと歩き、ドアの方へ……。


「ぼやぼやしてんなっ! 早く行けこの、無能者が!」


 男はそう言って僕の尻を蹴る。


 僕は尻を抑え男を睨んだ。 すぐにハッとして気持ちを切り替え苦笑いをしながら、足早にドアへ駆ける。 だが、あと一歩というところで、僕は探索者の一人に引き留められた。


 ドアの前に立たれ、進路を絶たれる。 


「おい。 お前、本当にその首輪が機能してるのか?」


 目の前の長身の探索者は、僕の目の前まで近づくと、睨みつけるように見下ろしている。


「いやー、ちゃんと効いてると思いますよ? なんだかリリアを連れてきたくなってますから」


 そんなことを言うが、納得していないような様子の男は、もう一人の探索者を呼びつける。


「こいつの首輪、外してみろ!」


「えっ、でも……」


 命令された細身の男は、僕の首に嵌っている首輪を凝視し、緊張した様子で喉を鳴らした。


すでに人間には使ってみたことがあるようですね。


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