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ダンジョンができた世界で、屑スキル持ちの僕は異界人と仲良くなれました。  作者: 安ころもっち


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No.13 最凶の悪魔


 連携により、男の横っ腹を抉ることに成功した。


 だが、僕の追撃を籠手で受け流しながら、男はすぐに傷に手をあて回復されてしまった。 男の表皮を覆うようにスキルを展開しているが、どうやら先ほどの攻撃と同様、回復程度は使えるようだ。


 その後も、三人と息を合わせた連携を繰り返すが、辛くも膠着状態は続くばかりだった。


 背後ではリリアが誰かと話をしているようだが、聞き入るような余裕は無かった。 どうやらエミリカと通信で話をしている程度のことは確認できた。 もどかしさを感じながらも、目の前の男を倒すことに集中した。


「サトウ、エミリカのパパさん、塔の入り口で、悪魔族の人たちはなんとか止めてるって! だから、その人を倒せば大丈夫だって!」


 叫ぶリリアの言葉を聞き、さらに集中を高める。 対して、目の前の男は焦りを感じているようだ。


「何たることだ! 使えない奴らだ! せっかく我が道を切り開いたというのに。 まあ良い。 この虫けら共を殺し、この世界を手中に収めた後には、使えない奴らも皆殺しにしてくれる!」


 高笑いする男に、躊躇なく刃を向ける。 連携は上手く行っているが、決定打がないのがもどかしい。 ほとんどの攻撃が男の両手にある籠手により防がれている。 圧倒的な戦闘経験の差だろうか?


 まるで未来を予測されているような感覚に、つい動きが雑になる。 何度か蹴り飛ばされるたびに、カオリさんを危険にさらしてしまう。 今のところ決定打はカオリさんしか与えられていないのだ。


 もう手段を選んでいられない。 強くそう感じ、痛む体を奮い立たせた。


「ハルカちゃん!」


 そう声をかけると、男に向かって煙幕が飛ぶ。 何十回と繰り返すその攻撃に、男は嫌がる素振りをして横に飛ぶ。 その動きに合わせるようにカオリさんが槌を真上から叩きつけ、男に左足は大きく抉られた。


 悲鳴をもらす男に、僕は飛び掛かる。 この程度の傷であれば、またすぐに回復されてしまうのだ。 僕は覚悟を決める。 この一撃にすべてをかけるのだ。 みんなを、守らなくては……。


 僕は、切り札となる短刀を腰のホルダーから抜き、男の胸に深く突き刺した。 リリアたちの悲鳴が聞こえる。 僕は……胸に痛みを感じながら、込みあがってくるどろりとした血液を吐き出した。 全身の力がぬけるような感覚に身を任せ、そのまま地面に体を投げ出した。


「ぐはっ……」


 地面に倒れた僕は、男の漏らした声を聴きながら、ざまーみろとつぶやいた。


「カツオ! すぐに回復を!」


「わ、わかってる!」


 リリアの言葉を聞く前に動き出したカツオさんが、僕の体に暖かな光をもたらしてくれている。


「佐藤さん、なんでですか!」


「え、なに? どういうこと?」


 地面にうつぶせで横を向く僕の顔を泣きながら覗き込むハルカちゃんと、状況を理解していないであろうカオリさん。 そういえば、この短刀の鑑定をしたときに、カオリさんは席を外していただろうか?


「お、お前、何を……何をしたのだ……。 傷が深すぎて、これでは回復が間に合わぬ……」


 男はさぞかし悔しそうにこちらを見ているのだろう。 残念ながら反対側を向いている僕に、その顔を拝むことはできない。


「カオリさん、あの男に止めを、ぐっちゃんぐちゃんにしてやって!」


「わ、わかった!……後で説明してよね!」


 そう言った後、ドカドカと床に打ち付ける槌の音と共に、男の断末魔が聞こえた。 ああ、良かった。 僕は、やり遂げたのだ……。 暖かい気持ちに包まれたまま、僕の意識は途絶えていた。




 意識が戻る。


 ここは、天国だろうか? それとも地獄? 身体のそこかしこに感じる熱に、安心感を感じる。 二つの世界を救ったのだ。 天国だったらいいな。 そう思いながら、目を開ける。 覗き込むリリアの顔が見えた。



「サトウ! 目が覚めた!」


 その言葉で、僕は死に損ねたことを知る。 いや、良いんだけどね? 死ななかったんだから大成功だということだ。


 僕はそう思いながら体を起こそうとするが、どうやらまだ体を動かせるほど回復はしていないようだ。 ……と思っていたが、次の瞬間、ガバリと音がして、ハルカちゃんと目が合った。


「佐藤さん!」


 涙声のハルカちゃんに抱きしめられる。 突然のことで恥ずかしくなるが、どうやらハルカちゃんが抱き着くような形で僕の上にいたような、そんな感じだったのかな?と想像する。


 未だに両手が動かせず、さらに困惑するが、そのまま右を向けば、そこにはカオリさん。 僕の手を両手でぎゅっと握っているようだ。 暖かい温もりにどうしようもなく顔に熱が集まってくる。


 だが、温もりを感じるのは右手だけではない。 やっと体を離してくれたハルカちゃんに照れ笑いを返し、そっと左を見る。


 そこには、泣きはらした目をしたカツオさんと目が合った。 彼はまた泣き顔になってしまった。 カツオさんの手からは幸せと照れを感じるが、こちらはちょっと不快感を感じてしまう現実に、さすがに失礼だなと心の中で反省する。


 何はともあれ、僕はカツオさんの懸命に回復と、大量のポーションにより一命をとりとめたようだ。 無意識下にも関わらず、どうやら魔力無効を緩めることができていたようだ。 それでもかなり効きにくかったようだが。


 僕はゆっくりと上半身を起こし、胡坐をかきながら肩や腕をほぐすように動かすが、特に不調は無いように感じた。




「じゃあ、説明してくれますか?」


 怒りを前面に押し出したカオリさんの質問。


「僕は倒れている間に、誰か説明してくれてたりしないの?」


 そう首を傾げると、他の三人も僕を睨みつけるような視線を向けてきた。


「聞きました! そのうえで、なんでそれをつかっち(・・・・・・・・・・)ゃったんですか?(・・・・・・・・)と聞きたいんです!」


 カオリさんからの質問に、他の三人も同意するように頷いている。


「ま、まあ……全員死んじゃうよりましかなって。 必ずしも相打ちになるってこともないようだし? 実際こうやって死ななかったんだし? 結果オーライだよね?」


「なにが結果オーライですかぁ! 佐藤さんが死んじゃったら……私だって、私たちだって後を追っちゃうんですからねぇ!」


 涙を目にためたカオリさんが、そう言いながら僕の胸に拳をあてて、下を向く。 他の三人も同様に同意の言葉を投げかけてくる。 泣きそうになる。 というか涙が流れることを止めることはできなかった。


 あの切り札として用意していたのは、80階層付近で入手した呪いの短刀だった。 『裏切りの刃』という自己主張の強いその名に恥じぬ、立派な呪いの効果が付与されている逸品だった。


 その効果は、どんなもんでも貫きとおし、その痛みは自身にも返ってくるというもの。


 鑑定結果に『※反射ダメージは80%~100%』となっていたそうなので、すべてのダメージが返ってくるわけではないようだが、120%死ぬであろうダメージを与えた場合は、80%の反射ダメージを引いたとしても死ぬよねと?という結論となり、使わないことにした武器だった。


 それを僕は、念のためと思って隠し持っていたという。 結局使う羽目になったそれにより、僕は瀕死の重傷。 かろうじてカツオさんにより助けられたのだ。


 僕が意識を失っていたのは凡そ1時間ほど。 すでに政府には詳細を報告済みだった。 そして、僕が意識を取り戻った時には、すぐにでもダンジョンコアの管理権を得て欲しいとのこと。


 ちなみに、政府はすぐにでも管理権を取得して欲しかったようで、三人の内の誰かに取得するように行ってきたが、他の三人は管理権を得ることに反対したそうだ。 僕が持つのにふさわしいと、そして、絶対に意識を取り戻すのだと。 そう言って政府に反発したと、また不機嫌になってしまったカツオさんが熱弁してくれた。


 あの影渡りスキルを所持する男も、野党第一党の参奪党の党首である秋羽波という議員が傍に置いている探索者であることも分かり、秋羽波議員は責任を追及され、議員辞職の上で投獄する予定とか。


 異界でも、エミリカパパ、つまりは異界の王ハデス様たちが奮闘したようで、そのほどんどを取り逃したものの、なんとか塔へと侵入することを阻むことができたようだ。 ハデス様から、早く管理権を得て、こっちの世界の魔素を消し去って欲しいと、心待ちにしているのだとリリアから聞かされた。


 僕は気合を入れて頬を叩くと、ダンジョンコアの前へと脚を進めた。


いよいよ、佐藤が日本を支配する時が……


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