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[完結]ダンジョンができた世界で、屑スキル持ちの僕は異界人と仲良くなれました。  作者: 安ころもっち


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No.01 ダンジョンの出現


 20XX年、東京お台場。


 台場公園のすぐ横の海面に、突如として海底を揺るがす轟音と共に、天を突く巨大な塔が出現した。


 海中から突き出したその漆黒の尖塔は、現代科学の粋を集めた自衛隊の捜索により、異世界の資源が眠る「ダンジョン」であると正式に認定された。


 塔の内部には「魔素」と呼ばれる特殊なエネルギーが充満しており、これに触れた人間は、稀に「スキル」という超常の力に目覚めることが分かった。 魔物から得られる未知の素材は、それまでの不況を吹き飛ばすほど日本に未曾有の好景気をもたらし、世は一攫千金を夢見る「大探索者時代」へと突入した。


 小学生以上の希望者は男女問わず一度はダンジョンへ入り、授かったスキルによって探索者の道を模索する。 才能があれば専門の訓練所へ進む道も開かれようとしていた。 さらにはダンジョン新法も即座に取りまとめられ、探索者の育成制度や、取り扱いに関する条例、ダンジョン内の素材に対する取扱いなども次々と決められていった。


 そんな激動の中、高校三年生の僕は、何の取り柄もないまま卒業を迎えようとしていた。就職先も決まらず、将来への不安で押し潰されそうになっていたある日、ついに業を煮やした両親から最後通牒を突きつけられた。


「隆司、いいから一度、ダンジョンへ行ってきなさい! そこでお前の人生を決めなさい!」


 怒れる両親に命じられ、僕は見物者用の受付を済ませ、数ヶ月に及ぶ長い順番待ちを経て、ようやく職員に連れられ塔の内部へと足を踏み入れた。


 そこで僕が授かったのは「魔力無効」という、この魔法全盛の時代において最も無用とされる屑スキルであった。 魔法で魔物を倒し、魔法で自身を強化し、身を守る探索者にとって、魔力を打ち消すだけの能力など、味方の邪魔にしかならないゴミ同然の扱いだった。


 僕は探索者への道を早々に諦め、家を追い出され、時給千円にも満たない深夜コンビニのバイトで食いつなぐ、孤独な一人暮らしを始めた。


 そんな世界に変化が訪れたのは、塔の出現からちょうど一年が過ぎ、世の中がその異常な風景に慣れ始めた頃のことだった。


 一階層の壁面に突如として出現した巨大な「異界の扉」から、一人の少女が現れた。


 彼女はエルフという長命種のリリアと名乗り、その美しい金髪を指でいじりながら、丁寧にお辞儀してみせた。「鑑定」という相手のスキルを読み取れるスキル持ちの職員が確認すると、彼女自身に備わっていたのは、「強運」というスキルのみであった。


 この異界の少女に、政府はすぐさま接触、交渉を始めた。


 彼女は多くのことは知らされず、ただただ「異界の様子を見て来て欲しい」と、塔の作成者である魔界の王の娘、エミリカに送り出されたのだと語った。


 その際に、魔界の王が「物欲センサーがどうの」と嘯きながら送り出されたという話も、交渉に当たった担当官に話していたという噂がまことしやかに囁かれていた。


 彼女から聞いた話で、この塔はお試し期間というもので、彼女はこの世界が交流に値する世界なのかを確認するため、自由に世界を見て欲しいと言われているようだ。その期間はなんと100年。


 その言葉に安堵した政府だが、彼女が何らかの事件事故に巻き込まれ死亡でもしたら、即座に塔は消失する事実は揺るぎなく、そもそも彼女が早期にこの世界に見切りをつける心配もあった。


 彼女の機嫌一つで塔の存続が決まるという事情から、政府は彼女に最高級の自由な生活を認めざるを得なくなる。


 塔の作成者である王の娘エミリカの真の目的は、異界の魔素汚染を防ぐこと、そして異世界を繋ぐことで魔素を浄化し、この事態を終息させるための異世界人を招くことにあった。それには塔を完全攻略し、最上階にある未登録状態のダンジョンコアの管理者を登録する必要があったのだ。


 だが、そのことを一切聞かされていないリリアは、東京の街を天真爛漫に楽しみ尽くしていた。


「これは何? どうやって使うの? すごいっ! 日本、強いね!」


 彼女は黒服の護衛を引き連れ、行く先々で出会う人々に人懐っこい笑顔で話しかけて回る。


「ねえ、あなたのスキルは何? そう、除菌? すごいのね、便利だわ!」


 そして運命の日。


 僕が薄暗い深夜のコンビニでレジに立っている時に訪れた。


 自動ドアが開くと、屈強な男たちに守られたリリアが、キラキラとした瞳で店内に入ってきた。


 彼女は棚に並ぶおにぎりやスイーツに感嘆の声を上げていたが、ふとレジに立つ僕と目が合うと、楽しげに駆け寄ってきた。


「ねえ、あなた! あなたのスキルは何?」


 背後の護衛たちの射抜くような眼光に気圧され、僕は絞り出すような声で自らの呪わしい能力を告白した。


「魔力無効です。 何の役にも立たない、屑スキルです。 だから、もう僕のことなんて放っておいてください……」


「えっ……」


 屈辱に耐えながら俯く僕の前で、リリアは驚いたように目を丸くして固まった。


「待って! 私、それ詳しく聞きたい! もしホントなら、ダンジョンに、一緒に行こう?」


 彼女は、猛烈に興奮していた。


 戸惑う僕に、彼女はさらに話を続ける。


「魔力無効って、おとぎ話の世界のスキルなの! 私、それ持ってる人、初めて会ったわ!」


 彼女のキラキラした視線が、僕には眩しかった。


 僕は突然の誘いに戸惑いながら、助けを求めるようにバックヤードからこちらを睨む店長に視線を送った。


 しかし、店長はリリアの背後に控える護衛たちが提示した「政府特殊警護班」という黒い手帳を見た瞬間、顔を青ざめさせた。


「佐藤、お前、仕事中に何を揉めてるんだ。 早くその方たちについて行け。 なんなら、二度と戻ってこなくていいぞ?」


 店長は僕を激しく睨みつけ、厄介払いをするような勢いで僕の背中を押した。


 こうして僕は、バイトをクビ同然で放り出され、二度目のダンジョンへと連行されることになった。


 僕を連れてダンジョンの入り口へ向かうリリアは、上機嫌で鼻歌を歌っていた。


 彼女はまだ知らない。 僕の「魔力無効」が、魔界を救う切り札になることを。


 そして僕自身も、自身がリリアという少女と共に、世界の命運を握る重責を担うことに気付いていなかった。


 お台場の夜景を背景に、塔まで設置されている通路を歩く。 そして、塔の入り口が怪しく光り、僕たちを飲み込んでいった。


始まりました。よろしくね。


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