8話 切実な願い
「罠って壊れるんだね。」
「ワン。」
目の前にあるズタズタになった括り罠をワン太郎が足でげしげしと踏みつけている。今までは獲物がいないことはあったが。壊されることはなかった。
理由を考えてもたぶん見つからないだろうと思い、新しい罠を見つけることにしたが、あんまり効果がないように思えた。
ワン太をテイムしてから私の生活は少し変化した。なんといってもずっとギルドの中でログアウトをしていたが、ワン太を残しておくのもかわいそうだとアリアさんに相談した。
王都から離れているこの土地は安く、一軒家程度なら10万円で購入できるらしい。
老夫婦が住んでいたらしい部屋は小さい一部屋であったが、暖かさがあって私は気に入ったが、同居犬のワン太の確認も必要だと思ってワン太を見たらかなり気に入っているため、決定した。
お金の心配はあったが、ワン太を飼った手前ある程度は許容していたが。ずっとポーションを作っては売っていたし、買い物を極力減らしておいたため、15万円は持っている。
ワン太は部屋を駆け回り、外にある小さな庭でも駆け回り。元気な子だと椅子を作りながら思った。
木工は矢や弓を作ることが出来るスキルだが、あくまで自分の力も必要なためいろいろなものを作って、木工スキルのレベル上げをがんばっていた。
椅子はNPCに売れるものもあり、困ったら壊して薪にしたらいい。薪は良い。薪は絶対売れるから。
ワン太に冒険ギルドに行ってくると伝えた。資料室で本を読み終えた私は一言。
「鉄がほしい。どうしても鉄が欲しい。」
と嘆くしかなかった。鉄があればトラバサミが作れるし、それを最初の町近辺で壊すものはあるのかと、絶対ないと思ったため鉄が欲しくなった。
鉄は始まりの町にはあるが、原産は別の町で【石の町 ダンケル】にあるという。鉱業がメインで鉄鉱石や石炭。たまにミスリルが取れることもあるのだとか。
だが隣町にはボスモンスターが配置されており、ぶん投げ岩でかなり硬く魔法への耐性もあるため、プレイヤーもかなり手を焼いており、なんらかの弱点となるものが見つかるかもと始まりの町の周りを捜索するプレイヤーも増えたらしい。
Dランク程度の冒険者なら軽く倒せるアリアさんがこのモンスターを野放しにしている理由として、まず倒しても無限に出てくるらしい、レイピア使いのアリアさんなら連続突きで1分もかからず倒せるらしいが、倒しても意味がなく、住人たちは少し回ればぶん投げ岩と戦わなくても済むらしい。
その上この程度を倒せないと次の町へ行く意味あるのかと議題が上がり、確かにという声が全会一致して次の町へはぶん投げ岩を倒すことがプレイヤーに義務付けられた。
そしてもう一つの理由としてはモンスターへは深淵のオーラが出ており、倒すとプレイヤーはレベルが上がるが、住民はあのオーラが体内へ入ると倦怠感や気持ちわるさが出るらしい、各町へ教会やシスターが存在している理由のでもある、浄化魔法や浄水などを口にしないと最悪死んでしまうらしい。
ぶん投げ岩と呼ばれるモンスターは、ゴーレムに近い岩の塊で地面に固定されている大きな岩のモンスターで、土魔法で岩を作ってそれを投げて攻撃するらしい。
防御力が高く、攻撃してもしてもあまり効果がなく、ジリ貧になり負けてしまうらしい。岩の中にはばくだんする岩もあるため見極めが大変との話が冒険ギルドのプレイヤーの愚痴からわかったことだった。
私がエリアボスのことをなぜわかるかというと先ほどのアナウンスがあったからだった。
【ぶんなげ岩を初めて討伐したプレイヤー【アーサー】が登場しました。次回から弱体したぶんなげ石が登場します。】
アーサーというのは掲示板を見てみるとエボアド最強プレイヤーでいろいろなゲームで最強をほしいままにしている最強ゲーマーらしい。
卓越したプレイスキルに甘いフェイスで女性人気が高く、今回も自分以外は女性のパーティーでいるのだとか。
まだソロでプレイしているが、そのうちパーティーメンバーの女性達とプレイするのだろう、すごいことだ。
(まるでハーレム主人公だよね、すごいなー)
あくまで漫画やゲームの主人公だからこそ出来ることを、現実世界でできることにウルは尊敬をしているのだ。お近づきにはなりたくないが。
林には罠を壊す存在がいるため、行く気はないが、隣町へ行くのも石相手に弓が通用するとは思えず、とりあえず訓練所で日課をすませてから、今のステータスを見ることにした。
名前:ウル レベル:8
種族:エルフ
SP:6
HP:100
MP:120
攻撃:25
防御:5
魔法:36
精神:36
器用:49
素早さ:24
運:5
スキル【弓】レベル12【罠】レベル7【採集】レベル10【細工】レベル3【木工】レベル7【鑑定】レベル7【調薬】レベル7【探知】レベル7【消音】レベル12【気配遮断】レベル8【歩行】レベル10【遠視】レベル5【集中】レベル6【言語】レベル1【料理】レベル4【解体】レベル4【生活魔法】
称号 来訪者 アルテミスの加護 林の民
(防御と幸運が低すぎるけど、どうしよう)
ステータスをもっと平均的にしようと、久々にしっかりステータスをみたウルは思った。
「そういえば称号ってなんだろう?アルテミス様の称号もあるし。」
称号の名前をタップすると詳細が出てくる
来訪者:異界から降臨したものの称号
アルテミスの加護:狩りと山の女神の加護。植物魔法の習得が可能。狩りのスキルレベルアップがしやすくなる。弓が上手くなる。
林の民:林にずっと居るもの。林においてはモンスターに見つかりにくくなる。先手を取れる。
アルテミス様の称号はかなり効果がすさまじく、プラス効果しかない上に魔法の習得もできるようになるみたいだ。魔法というのは火、水、土、風の四つは汎用属性で誰でもスキルで獲得できるが、光は人族と光の女神の称号、闇は魔人と闇の女神の称号がないと入手できず。植物魔法のようは特殊魔法は指導をされないと入手できないらしい、
らしいというのは先ほどのアーサーが掲示板でいろいろ公表してくれた中に属性のことを教えてくれたのだ。
かなり優良なことをどんどん公表してくれている理由は、みんなに第二の町に来てほしいからというのが本人の談。いい人なんだろう
植物魔法はまだ公表されていないが、ある程度わかる。植物を使っていろいろ相手を邪魔する系の魔法であろう、ゲームでドレインややどりぎなどをしていたイメージがウル自身に根付いているためである
でもこれは朗報かもしれない、罠が聞きづらい現状、さらに相手を拘束できるものは自分に合っている上に、これから罠を強くしても無駄にはならないだろう。
ここで一度魔法について解説をする。魔法は魔法名を唱えることが必須であり、魔法触媒があればプラス効果がある。効果は低くなるが指先などでも魔法は使える。
植物魔法で今使える魔法はプラントトラップだ、設置場所を決めたらそこからつる植物が生えて敵の行動を阻害する。
難点は数秒の時間が空くことであり、動物や低レベルのモンスターなら大丈夫だが、避けられるリスクがある。そのための解決策があるが、豊かな土と植物の種と水分があればプラス効果で素早く、丈夫なツルが敵を拘束する
林や森などの自然で戦う分には大丈夫だが、街や人工物などでは数秒かかる、マグマや火の近くだと耐熱が強くないと出現できない。
使えない魔法かと思い、資料室で調べて、アミンさんに質問をしたら、どうやら訓練所の硬い石の上でやっていたために起きたことだった。
早速林に来たので探知で動物やモンスターを探したが、すぐに鹿を見つけた。ワン太は今回連れていない、だって、吠えて敵にバレたらアホかなと思ったのだ。こちらの考えにハイキックでバカにするなと返答されたが、今回だけ許してもらった。
鹿はノンアクティブでこちらを発見しても逃げてしまうが、一度攻撃をしたらなんだこらとばかりに追いかけるわけだ。なので今回は弓を当てて来るタイミングに合わせてプラントトラップを使った。
タイミングが一度で合うわけもなく鹿に轢かれた。
「うう、プラントトラップ」
攻撃後の隙に放った魔法は効いてツルに足が絡まり動けなくなっていた。
「タイミングが合えばイノシシでも倒せる。ありがとう鹿さん」
鹿狩りとイノシシ狩りをしながら採取でもやろうと思ったが、あくまで普通の女の子であるウルに最適なタイミングは掴めるわけもなく、真正面からイノシシに轢かれてデスポーンしてしまった。
(やっぱりトラバサミが欲しい!もしくは前衛が欲しい!)




