第21話 クラーケン戦 その2
HPが3割を切った時、クラーケンは10本の手を引っ込めた。大きな四つの手と数十個の手に変わり、振り下ろすたびに爆発した波がプレイヤーを襲っていく。
サクラもクラーケンの腕を蹴りながら攻撃をしているが、先ほどより自由に動けずにいた。
プレイヤーはかなりの数苦戦を強いられていたが、海に潜り槍で攻撃をしている集団がクラーケンのHPを削っている。
その間にウルは
「ここに居よう?」
ワン太達を引き連れ、孤島に戻っていた。クラーケンの手が浅瀬から海のほうへ移動してしまい、ウルには戦えない上に海は怖いので少し休憩している。
ワン太たちもかなり戦えたのか、ウルの周りでゆっくりしている。
(サクラちゃんにも一応メッセージを送っておいたし、少し休んでいよう)
ーサクラ視点
(うーちゃんはあそこで休んでいる…そろそろ終盤なのに)
サクラは小さい手を切り刻んで破壊しながら小舟に乗る。十個は用意されていたが、残り三つになっている。
しかし、連続攻撃をしているためサクラに向けての攻撃が多く、手を振り回したり、海に手を叩きつけて大爆発を起こしたり、口から水魔法を連続で出し続ける。
神速で攻撃を回避しているが、地面がないため攻撃メインではなく、回避メインになっているためダメージが稼げない。
サクラは一撃離脱と高速移動で一撃必殺を連続するのがメインであるが、海の上では難しい。
しかし、終盤ということもあり、本気で戦うことにした。
(私の本気、ようやく楽しめる)
アイテムボックスにしまったアイテムを何個も取り出して使っていく、ステータスなどを上げるポーションやアイテムはかなり高価であり、ウルなら震えてしまうほどのアイテムを使う。
アイテムの効果で銀のオーラに包まれたサクラは大太刀をしまったままクラーケンに向かうと
「抜刀術 地平切り」
音速の抜刀術は空気を切ったようだが、その斬撃は地平の向こうまで続いていった。
その力に耐えられるはずもなく、パリンと大太刀が壊れてしまったが、その威力は絶大であり、クラーケンの大きな手を二つ切り飛ばしながらクラーケンにもかなりのダメージを与えていった。
着地をすると、サクラはウルのほうへ帰っていった。獲物は壊れたが、久々に本気の抜刀ができ、満足そうではあった。
ーウル視点
しばらく作業をしているとサクラが帰ってきた。
「あれ?サクラちゃんはいいの?」
「うん。本気で戦った。うーちゃんも気になったし。」
「そうなの?私は別に大したことはしていないよ。」
「でも何か作っているけど。」
「大きい鉄の槍だよ。イカだし〆ることができるかもって思ったけど。重すぎて私は投げられないや。」
ウルが帰って作ったのは全長3メートルの鉄の槍だ、中は空洞で作り、鍛冶場ではないため粗末なものではあるが、うまく刺されば〆ることはできそうな大きさではある。
「どうしよう。」
「だったらプレイヤーに渡せばいい。上げる武器に困る人はいない。」
「え。渡すって誰に…。」
「良いから行く。」
サクラに連れられ、また戻ったウルであったが、クラーケンに攻撃しているプライヤーを見ても誰に上げたらいいのかわからない。
サクラも周りをきょろきょろしているだけで誰がいいとは教えてくれず、ほとほと困っていると。
「困りごとかな?」
とまた後ろから声が聞こえ、さらに男性であったのでウルはドキッと固まってしまった。サクラのほうはなんてことなく。
「どこにいっていた。」とあくまで普通に会話を始めた。
「ダンジョンだよ。最上層で100層までだったね。」
「ダンジョンよりボスキャラが大事。」
「僕だって同じさ、でも行けそうだったから仕方ないだろ?」
「私でもそうする。仕方ない。」
「そうそう。それであのウルさんだっけ?巫女さんはなんで無視するのかな?」
「うーちゃんは人が苦手、特に男は。」
「じゃあ僕じゃなくて仲間と話す?今は後ろで待ってくれているけど。」
「ううん。そろそろうーちゃんも慣れるべき、こっちを向く。」
とサクラに言われて男のほうへ振り返ると、美男子がいた。
あの神社で神楽舞をした時に居たハーレムのパーティーリーダーだ。なぜか恐怖を感じてしまっていたが、今見るとわかる。
(サクラちゃんより強そうだからだ。)
しかし、会話をしないといけない。
「舞…の時いましたね。」
「ええ。素敵な舞だったよ。みんなもしっかり見ちゃってさ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ああ。そういえば一方的に知っていたっけ。僕は知らないよね?」
「え、ええっとー。」
「大丈夫。今日から覚えてくれたらいいから。」
「僕の名前はアーサー、ゲーマー最強のプレイヤーさ。」
アーサーは綺麗な鉱石の鎧を着ており、背中の大剣は並大抵のモンスターは両断をしてしまうだろうと思ってしまうほど強そうであった。
金髪碧眼の顔はウルですらイケメンだとおもう程であり、人気があるのもうなづける。
後ろの女性たちはアーサーと毎回組んでいる人たちだった。
先ほど少しだけ話した精霊術師 ティニー
和服と日本刀を携える和服美女 カエデ
シスター服を着る美少女 アルテラ
くノ一の衣装を身に纏う美人 ツバキ
魔女の服装を着た美人 キルケー
それとアーサーの六人で戦っているらしい、先ほどからこちらにニコニコしながら見ているティニーと知らない人たちにウルは許容量を超えてログアウトをしちゃおうかと思っていたが、サクラを置いて逃げるわけにはいかないと踏みとどまる。
「丁度いい。これ上げる。」
「うーん。大きいやりだけど。あいつに刺して来いってことかな?イカの神経締めかな?」
「そう。うーちゃんが考えた。これを投げたら好きにしたらいい。」
「まあ僕ならできるけど。まあいいか、やってあげるよ。」
「うん。いってきて。」
「じゃあ、サクラにウルさん行ってくるね。」
「は、はい。」
そういうとアーサーたちはクラーケンのもとに行くのだった。
「アーサーさんって大剣でしょ?投げやりとか使えるの?」
「アーサーに苦手武器はない。大剣が一番だけど。」
「す、すごいね。」
「うん。私は刀が大好き。」
「しってる。でもアーサーさんってどんだけ凄いんだろうね。」
「見ていればわかる。私を置いて最強のプレイヤーたるゆえんがある。」
アーサーはゆっくりと歩いていくが、クラーケンの攻撃が色々なところから飛んでいく。
しかしおかしいのだ。アーサーは途中でスピードを緩めたり、少し顔を傾けることでクラーケンの攻撃が全て通り過ぎる。たまに剣で弾き飛ばすこともあるが。
「え?どういうこと?」
「アーサーに攻撃は効かない。すべて先を読んでる。」
「未来予知ってこと?」
「本人は否定してる。けど疑われ続けている。」
「確かに、まるで来るってわかっているように見えるもん。」
「前避けれる理由を言っていた。けど忘れた。」
「私もそれを知りたいなー。」
「聞いてみたらいい。」
「ううん。怖いからいいです。」
「そう。」
アーサーは小さい手の攻撃をすべて掻い潜ると大きい手での攻撃範囲に入った。
大きな手がアーサーを潰そうとする。
アーサーは指先を大きな手に向けると、雷が出現してクラーケンに当たる。痺れたのだろう、振り下ろされた手はゆっくりとアーサーに向かうが、その頃にはアーサーは攻撃範囲から外れていた。
「サクラちゃんも攻撃を回避するけど、まったく違うね。」
「うん。私は高速で攻撃しながら回避、アーサーはスピード感はない。けど絶対当たらない。」
「うん、全部避けているよ。」
ーアーサー視点
目の前にいるクラーケンの攻撃方法も動きも全部わかった。海だから大変だけど大きいイカでしかない。水魔法も体積はあるけど特殊効果もない。
ならもう倒せる。
アイテムボックスからウルさんにもらった槍を取り出すと、クラーケンに向かって思いっきり投げる。
「避けられないよね。知っている。」
アーサーが投げた鉄槍は思い切り飛んでいき、クラーケンの眉間にズドンと突き刺さった。
「ギョ―――!!」
鉄槍が深く突き刺さったクラーケンは硬直した。
「うん。ウルさんの読みは当たっていたね。みんな。やっちゃおう?」
「うん。」「そうですわね。」「はーい。」「はい!」「そうだね。」
ーウル視点
それからどんどんクラーケンにダメージが与えられていき、アーサーが登場して30分も経たずにクラーケンは倒された。
「ん。」
「どうしたの?」
「アナウンスが来ない。普通はボスを倒したらアナウンスが…」
「おいおい。俺様の邪魔をするんじゃねーよ。」
サクラの言葉を邪魔するように現れたのは燃え上がるような赤い髪の男の発言だ。
遠くにいるはずなのにウルにもしっかり声が聞こえるのだ。クラーケンを倒した後というのにクラーケンより圧倒的に強い感じがした。
「おいおい、来訪者って雑魚じゃなかったか?まあいい、今回俺様の仕事を邪魔しやがって、死にてーか?」
そういうととんでもなく大きな火の塊を生み出すと海にぶん投げた。大爆発がおき、大きな波でプレイヤーのみんなが砂浜まで持っていかれた。
「次あったら容赦はしねーからな。覚えておけ…。」
そういうと最後に
「雑魚のイカを倒した褒美に俺の名を教えてやる。俺様は四天王直属の配下 八玉の一」
「デミオルだ」
そういうと空に居た男は消えた。
【イベントボスモンスター Sランククリア】
【アイテムを入手しました】
【レベルが上がりました】
【テイムモンスターのレベルが上がりました 進化可能になりました】
【スキルレベルが上がりました】
【魔族がこれから色々なところに現れます ご注意ください】
【イベントは夜の12時に終了します】




