第12話 シーテンさん
遭難した男はシーテンといい、町でも有名な船大工でかなりの実力者だというのだ。
しばらく忙しくしていたが、久々の休暇で趣味に興じようとしていた。
それが釣りだ。自分で作り上げた船に自分が作った釣り竿、それで釣りをするのが大好きなのだという。
しかし、シーテンの日常も唐突に別れを告げる。シーテンの船大工の実力に嫉妬した人たちが船に細工をしていたのだ。しかもバレないように、そして船を出して数時間後に気付くようにしていたのだ。
竜骨が割れ、対処しようとしていたら、紙が流れてきた。どこかに貼っていたのだろう。
【ザマァみろ!】
絶望に打ちひしがれたシーテンであったが、船大工、そして操舵手としての実力があり、どうにかウルたちが来た島にたどり着いた。
島の中央には泉があり、水が湧き出ていた。果物があり、魚も取れる。どうにか栄養不足にならずに生きてきた。
しかし、ずっと町で過ごしてきたシーテンにとって誰とも会えず、いつ助けが来るかわからない環境にそうとうのストレスを感じていた。
その生活を続けていると、サクラたちが来たのだ。ちょうど離れたところで釣りをしていたところであった。
ゆっくり近づくとサクラの殺気にビビってしまい、奥に隠れていたらしい。次にウルが来てみんなの殺気が無くなり、ウルを一目見た時の毒気の無さに助けを求めるしかないと。
そう話しているシーテンであったが、ウルには成人男性という一番苦手な人で、ずっと緊張していた。
しどろもどろになりそうであったが、この人の話を聞いてあまりの不憫に心配になった。そのため自身の都合など関係ないと頬を叩く。
とりあえずは食べられていないだろう穀物と肉のサンドイッチを渡す。
久々の手料理、しかもとても美味しいのだ。涙を流しながらどんどん食べていく。
「すまねえ。本当に美味い飯は久々だったぜ。助かった。」
「いえ。それで助けるといっても何をしたら?」
「とりあえず、ここからは離れたい。あっちの島に行けるんだろ?」
「そうだよね。サクラちゃん?」
「住民は無理。ポータルでテレポートできるのは来訪者のみ。」
「え?本当なの?」
「そうか、やはりそうだったか。」
「何か手はないの?」
「ない。」
「いいんだ。こんなに美味い飯を最後に食えて満足だ。」
サクラに不可能と告げられ、シーテンは目に見えて落ち込んでいく。ウルに何かできるのだろうかと考えて、考えて、
「あります。シーテンさんがこの島から出る方法。」
「本当かよ!なんだ!」
「うーちゃん。適当な発言はダメ。この人に希望だけ持たせるのは酷い。」
「ううん。シーテンさんだから助かる方法。私たちが居るから助かる方法があるんだよ。」
「うーちゃん?もしかして。」
「ここで船を作り上げる!」
しばらくウルの発言に皆が静かになった。
それもそうだ、船など簡単に作れるものではない。丸太と紐で作る簡素なイカダですらまともに作り上げるとなるとしっかり考えないといけないのだ。
船としてシーテンが町に戻れるものを作ることなど、不可能に近いのだ。材料も加工ができるものもない。
沈黙の時間は長かったが、それを破ったのはシーテンだった。
「船だ?そんな簡単なもんじゃねーぞ。」
「だからシーテンさんが頑張るんです。」
「木だってこの島にまともなものがねーぞ。」
「あっちの島へは私たちが行きます。木の伐採道具は持ってきてます。」
「大工道具が足りねぇ。」
「船ではないですが、大工の道具なら私は持ってます。」
「つ、作れるのか?この俺がまた船を。」
「はい。この島で船を作りましょう!」
ようやく希望が出てきたシーテンは涙が流れてしまう。
「よし!乗ってやろうじゃねーか!ウル、お前ってやつは本当にすごいやつだ!」
「え?そんなことは…」
「うーちゃんは凄い。私は最初から知ってた。」
「サクラちゃん!!」
「仲が良いな!よし!ウルも手伝え、大工の仕事できるなら船にも活用できる。」
「は、はい。」
【特殊クエスト:遭難した名匠を救えを開始します】
特殊クエストのアナウンスが流れたウルは、クリアできたらシーテンは助かることがわかり、気合が入っていく。
サクラは今回のことはウルが無理やり引き受けたことだ。ずっと伐採したり、加工したりと暇な時間が多いことが気になった。
「サクラちゃんはどうする?」
「うーちゃんは酷い人。私も手伝うに決まっている。」
「ごめん。じゃあ一緒に頑張ろうね?」
「うん。」
少し頬を膨れて拗ねているサクラを宥めながら、これからどうやって船を作ろうと思案しているウルであった。




