第11話 別の島
ウルはしばらく呆然としていた。最初に居た砂浜、ボスザルと戦った場所。もしかして山の頂上に飛ばされるのではないかと思っていた。
それすら良かったと思える場所に飛ばされた。ウルが居た島が見える孤島に飛ばされたのだ。
神の尺度からしたら大した距離でもない上、同じだろうと思ったのだろう。さすがにしっかりしてほしかったと内心苦言を思ってしまうウルであった。
しかし、この孤島は無人島ではなかった。
「うーちゃん大丈夫?」
「サクラちゃん!ここってどこなの?」
「あれを見たらわかる。本島から少し離れた孤島。」
「場所がわかっても…私たちって最後までここにいるってことなのかな?」
「ポータルはある。戻れる。」
「そうなんだ。良かった…」
ペタンと座り込むウル。別の島に飛ばされた上、サクラちゃんにも迷惑を掛けてしまったと思ったが。なんとか戻る手段があることにほっとしたのだ。
それに神様と面と向かい、ずっと話し合っていたのだ。仲間もおらず二人っきりで話していたのでその緊張も解けたのでもう立てない。
座り込むウルを励ますようにワン太達がウルの周りを囲んで身体を摺りつけると。サクラがウルの頭を撫でる時間がしばらく続くのだった。
のんびりしたウルは気力も戻り、シヴァに送られた後のアナウンスを思い出した。アイテムバックをごそごそすると。
「うーちゃん、何してるの?」
「えっとね、さっきシヴァ様にあった事言ったでしょ?その時に貰ったアイテムがあるから見ようかなって。」
「そうなんだ。ってそれは?」
「え?ダマルって言われた。神器なんだって。」
「やばいもの。見ただけでわかる。神器を持っているプレイヤーはまだいない。」
「そうなの?断れなくて貰ってきたけど。私にもったいない気持ちも…」
「神が送ったもの。必要だから貰えた。」
「そうだよね。しっかり使わないと。」
「鑑定した?」
「していないよ?したほうがいいよね?」
「もちろん。」
サクラに勧められて鑑定をしてみる。
ダマル 神器 品質:G
シヴァが持つ太鼓型の神器、鳴らし続けると世界は終わり、音と共に世界は誕生する。
プレイヤーが持つことで以下の踊りに補正が掛かる。
所有者が固定になり、奪う、落とすことは不可能になる。
【破壊の踊り】
【再生・成長の踊り】
「え?本物の神器なの。」
「うん。プレイヤー補正で超弱体化している。」
「初心者の弓を神器にしているけど、鑑定したけど何もなかったよ?」
「神器といっても千差万別。シヴァの神器と出来立ての神社の御利益もない神器。うーちゃんの弓はこれからの神器。」
「そ、そうなんだね。でもどうしようかなこのダマル。」
「使えばいい。貰ったものは使うべき。」
「そうだけど、この破壊の踊りって私以外のすべてにダメージが出るんだよ?」
「ソロ専用だけど、ソロなら踊る的になる。」
「シヴァ様だからこそ使えるものかも?成長と再生の踊りが気になっているんだよ。」
「農場に使える、仔牛を育てるのも、小さい木とかもあっという間に伸びる。」
「え?それは凄い。神社や牧場が少し寂しい感じだと思っていたから果樹を植えたかったんだよ。」
「お誂え向き。ダマルを使ってこれを育てる。」
ウルのバックに入っていたのは、シヴァから頂いた果物だった。リンゴやブドウなどたくさんの果物があり、それこそアイテムカバンにぱんぱんに入っている。
これは持ち帰って、いつでも食べられるようにしないとウルは固く決意した。
しかし、アイテムカバンをいっぱいにするのも何も採取できなくなるので、サクラに果物はすべて持ってもらった。一部をもぐもぐとサクラたちは食べているが、ウルもシヴァの素でたくさん食べていたので見逃した。
「これで終わりだね!でも太鼓の神器でよかったよ。」
「なんで?」
「本当はトリシューラという三又の槍?のレプリカをあげるっていってたんだよ。」
「トリシューラは絶対強い武器、うーちゃんがトップレベルのプレイヤーになっていたかも。」
「私は冒険には行くけど、凄い武器でどんどん倒していくとかできないよ。」
「ゆっくり旅をしてもいい。うーちゃんはイベントが終わったら第三の町に行く。」
「うん。町のことを知ったら行きたくなっちゃった。」
「うーちゃんは好きかもしれない。私もこの服新調した。」
第三の町はリンネルというのだが、住民すべてが裁縫の職業という裁縫の町であり、色々な素材から糸や布を作り、服を作るリンネルはこの国の8割の服を作っているというのがすごいところだ。
サクラの和服も防御力は高いが、上質な布を使ったもので触り心地も最高で、触った瞬間に欲しくなってしまって、色々サクラに聞いていた。
巫女の服や牧場の服、普段着など数着欲しいウルはこのイベントでは積極的に前にでてレベルやスキルのレベルを上げていた。
森で戦っていたのもそのためだ。
第三の町の話をしていたが、それよりイベントの話だと考えていく。この島に居たところで小さな森と海に面しているだけで何もない。
釣りスキルや船を持っているなら少し遠出をしても面白いのだろうと思ったが、ポータルで戻ることに決めた。
次は北側にぐるっと回ることもありだとサクラたちと話しているとワン太とおちゅんさんが森のほうに何かがあるとじっと見ている。
ウルの気配察知にもようやく何者か居たことがわかった。そのなにかはゆっくり、しかし確かにこちらへ歩いてくる。
何があるかわからないと弓を持ち、いつでも打てる準備をしているウルの前に現れたのはおじさんだった。
小汚いおじさんで、まるで遭難者のようで
ウルは何かあったのだろうと、話を聞くために弓を下ろした。
サクラはいつでもおじさんが襲いかかってきても切り伏せるようにウルの後ろに立っていたが、ようやくぽつりと話しだす。
「遭難した。助けてくれ。」
「え?」「ん?」
「船を無くしてずっとここにいるんだ!助けてくれ!」
孤島に一人のおじさんに助けを求められるウルたちであった。




