第8話 登山
セーフティエリアから山のほうへ向かっている途中に襲ってくるモンスターが居なくなった。あの笛を持っているせいか、ボスモンスターを倒したからなのかわからないが、ウルにとっては登山が残っているのだ。楽でいいと森で採取をしながら進んでいくと、森を出た。
目の前にはとても大きな山で、霊峰とまでは行かないが、とても大きな山で山頂まで登るのは大変というのは一切登山を知らないウルでもわかることだ。
「サクラちゃん?どうやって登るの?」
「うーちゃんは面白い、普通に登る。」
すたすたと山登りを始めるサクラにワン太たち、それを見つめてしばらく呆然としたウルであったが。
「え?ま、まってー。」
そうやってウルも果てしない登山に参加するのだった。
地面は土でできており、石もごろごろとあるため歩きづらい。歩行スキルのレベルがかなり高いことに今ほど感謝したことがない。
森は初心者向けであることが、この山でわかった。本格的に強くウルたちだけではかなり厳しい相手なのだ。
石で出来たミニゴーレム。石の鎧で出来ているダンゴムシ、火の玉を吐くトカゲなど出てくるのだ。
ミニゴーレムは石の身体で物理攻撃に強く、魔法攻撃も弱い魔法なら軽減してしまう。腕を振り回したり、地面に叩きつけることでボスザルのように範囲攻撃をしてくるのだ。
そしてHPも高く、戦闘時間も長くなる。その間にダンゴムシやトカゲが来てしまうのだ。
しかし、今回から戦闘に参加したサクラのおかげでどんどんモンスターを倒していく。
ミニゴーレムも物理に強いはずなのにサクラのスキル【貫通攻撃】により、防御無視の連続切りにより簡単に倒してしまう。それはダンゴムシも同じことだった。
「あっという間に倒しちゃった。」
「私は最速の戦いが好き。」
「そ、そうなんだね。」
「どうしたの?」
「私たちの戦い方に遅いなーって思ってないかなって。」
「人の戦い方にケチをつけるほど狭量じゃない。」
「ならよかった。」
「それにうーちゃんはゲームはほぼ初めてなのに上手い。」
「本当?それは嬉しいな。」
「最近は少しずつモンスターも倒せるようになってきたから。こうやって色々な場所に行けて楽しい。」
「よかった。」
サクラに褒められたウルは有頂天となり、山をどんどん登っていく。
リアルなら絶対登れないはずなのに、ゲームの世界とスキルというのはとても凄まじい。少し息切れをしているだけで簡単に頂上まで行けてしまった。
「ここまできた!」
「うん。頂上付近。」
「でもここには噴火口しかないけど?」
「うん。マグマが見える。」
「本当だ。怖いからあまり近づかないようにね?みんな。」
「入ってもデスするだけ。戻ってくればいい。」
「ダメ!ワン太たちも駄目だからね?」
ワン太たちにしっかり注意をするウル、それもそうだ。
活火山のように火口にはグツグツと煮えたぎるマグマがあり、そこに落ちたらひとたまりもないことは見てわかる。
先ほどの堅牢なモンスターもここに落ちたらお陀仏だろう。
それ以外には何もみつからないかと思ったら。
「あっちに看板があった。」
「そうなの?」
「うん。うーちゃんたちも見る。」
「わかった。ってこれ?」
木の看板には簡素な文が書いてあった。
【マグマ危険 落ちたらダメ】
「え?これだけ?」
「簡単な文、わかりやすい。」
「そうだけど〜、でも落ちたらダメって。死ぬって書かない?」
「ん。これはもしかしたら。」
ずんずんと火口まで近寄っていくサクラ。ウルは慌ててサクラを止めにいく。
「サクラちゃん!!だめー!」
「ん?」
慌てて抱きしめようとすると、くるりと振り返り、何と言わんばかりの顔をしていた。
「もう!マグマに入っちゃうかと思った!」
「入る。」
「ダメだよ!私たち死んじゃうよ!」
「でもあの文は変。なにかある。」
「確かに私が変なことを言っちゃったけど、マグマあっつあつで…って暑くない?」
「ん?」
「サクラちゃん。火口付近に居たら絶対熱々だよね?なんで私たちは今暑くないの?」
「! 論より証拠」
「掴んで飛び込まないでー!!」
「わん!」「ちゅん」「ちら!」「モウ!」
「あー。みんなも着いてきちゃダメー」
サクラに掴まれたウルは火口に飛び込んでしまった。慌ててワン太たちも一緒に来てしまった。
目の前に広がるマグマに恐怖を感じるウルは、目を閉じリスポーンを舞っていた。しかし、いつまで経ってもその気配がない。
「おい!俺様を前に寝てるとは良い度胸じゃねーか。」
唐突に男性の声が聞こえた。ウルに話しかけているのだろう。
「え?ご、ご、ごめんなさい。」
目を開け謝ると目の前に居たのは、赤い髪が逆立ち、青色の肌と筋肉質な身体はとても男らしい。
しかし、一番の特徴は四つの手と額の第三の目だろう。
この特徴は一人、いや一柱しか居ないだろう。
「シ、シヴァ様…?」
「おうよ。創造と破壊の神のシヴァだ。」
ウルは、この世界で、二回目に神に出会うのだった。




