第5話 波乱の森
大きな森といっても、全体像を知らないのであるが、林の民であり、このゲームで森を知ってしまったウルには大体の大きさがわかってしまう。
(この森は大きい。オブロン北の林よりは大きい。)
いつもは隠れて行動をするウルであったが、タンクなどが揃っている上、サクラもいるのだ。今回はサクラに合わせてずんずんと進むことにした。
森の中は草が多く、周りが見えづらく、どこから攻撃が来るのかわからない。気配察知をしっかり使うウルであった。
しばらくはモンスターもいなく、森の中を採取しながら進んでいくと、木の上にリスがいた。つぶらな瞳をして木の実を食べていた。
「可愛い~って痛!」
「油断大敵、可愛くても敵。」
「ちゅん!」
「!」
「モー!」
リスは頬袋に入れていた木の実を思い切りウルに投げつけてきた。
すぐさまおちゅんさんがリスに嘴で攻撃をすると、地面に落ちた。アルデが思い切りリスを踏みつけて倒した。
「いたた。みんなごめんね。」
「いい。次から油断しないこと。」
「そうだね。今度はお猿さん?」
小さな猿が、こちらにとてとてと歩いてくるが、全く敵意のない愛らしい顔でウルを見るのだ。
「もしかして、お腹が空いてるのかな?」
「きー?」
「よしよし。お魚はあるよって「ぎぃ!」怖い!」
「だから油断しない。」
猿がウルの近くまでくると、先ほどの愛らしさが変わり、恐ろしい肉食動物の様な顔になり襲いかかってきた。
ウルにひっかく前にサクラがサルを切り伏せた。
「ここは休まらないよ。可愛いと思ったら敵ばかり。」
「ウルが動物大好きなだけ。」
「ごめんね?みんな。今度こそ気をつけるから!」
「わん?」「ちゅん?」「ちら?」「モー?」
「本当だって!」
怪訝な顔でみんなに見られてしまい。ウルもしっかりすると気合を入れた。
目の前に愛らしいウサギがいた。草をもりもりと食べ、まるで敵意がない。
この森は他と違い、攻撃的というか、敵意がないのだ。こちらに気付くとゆっくり近づき、目の前に来た時に敵意を急に見せてくる。ウルはまだ会ったことのない敵であり、二回もしてやられた。
しかし、ウルもバカではない。二度も騙されて三度目も懲りないとワン太たちに顔を見せられない。弓を引くと。
「不知火!ワン太!お願い。」
「ワン!」
弓の攻撃を食らったウサギは後ろに吹っ飛んだ。ワン太が、ダウンしたウサギに飛び蹴りを喰らわせると、ドロップを残して消えていった。
「うーちゃん。成長。」
「うん。サクラちゃんたちに甘えてたよ。ここも戦場だもんね。危ない危ない。」
「そう。わかればうーちゃんは大丈夫。」
サクラという絶対的な安心、そして南の島でのバカンスという、非日常がウルを楽しい気持ちにさせ、正常ではない状態にしていた。
気合いを引き締めた。もうかわいい動物がいても気を緩めないことにした。
なぜなら
(私がそんなあやふやな状態だとワン太たちにダメージが行っちゃう。それに私は強くないから気を抜いたら動物に負けちゃう。)
しかし、この森の恐ろしさはまだ始まってすらいなかった。
「癒しの舞。みんな大丈夫?」
「わん!」「ちゅーん?」「ちら〜」「モー!」
「「にゃー!」」
「不知火!プラントトラップ!グロウ!」
次から次へと出てくるモンスターの群れである。休む間もなく現れていき、味方へのダメージを回復する余裕もないのだ。
「わん…わん…」
「大丈夫?ワン太。ゆっくり休んでも」
「わん!」
「わかった。頑張ってね?」
「わん!」
この戦いではワン太が一番疲れていた。そもそもヒットアンドアウェイで戦う都合上、ずっと動き続けているのだ。誰よりも疲れるのは当然だ。
いままではバトルの間に休めていたのだが、それが無い。
ワン太達の前に出てきたサクラは、一体のジャギを蹴り飛ばし、返す刀で二体のゴブリンを切り伏せる。横から攻撃しようとした二体のジャギを刀で防ぎ、吹き飛ばすと切って倒した。
「ワン太。私のようにすればいい。」
モンスターの攻撃を受けたり、逆に相手の攻撃前に差し込み、ノックバックや切り伏せて倒したりしていく。
「体力を温存する方法。ノックバックやカウンター型。飛ばした敵はうーちゃんたちが倒す。」
サクラの助言を聞いたワン太はジャギの飛び掛かりにキックを合わせて吹き飛ばす。ジャンプで避けたり、相手の攻撃をすばやい動きで避ける事は減っていった。そのおかげもあり、少しずつ体力が戻り、スピードを活かした攻撃とカウンターを両方使って倒していく。
ウルはこのモンスター集団にある疑問が出てきた。
「サクラちゃん?それにしても敵が多すぎない?」
「うん。黒幕がいる」
「黒幕?」
「そう。モンスターが一方通行でこちらにくる。つまりは指示をしているものがいる。」
「そうなんだ。たまたまでは無いの?」
「違う。その証拠に奥からしか来ない。後ろから来たモンスターは一体もいない。」
「なるほど。つまり?」
「黒幕を倒したらこの戦いも終わる。」
モンスターを倒しながら中央の広場まで来ることができた。そこは開けた場所であり、ゆっくり休憩できそうな場所であった。
しかし、その中央に居た。今回のすべての元凶であるもの。
2メートル近くの巨大なサルだった。筋肉質な肉体で今まで出会ったどのモンスターより強そうであった。
一番気になったのは手に持っている蛇のようなものだ。穴が数個開いてあり、まるで笛のようであった。これがもしかして指示ができるものなのかとウルは思っていた。
ウルの考えは正解のようで、忌々しいという顔を浮かべると笛をどこかへ投げてしまった。ウルはその笛の先を眺めていると。
「ゴガアアアア」
と耳につんざく咆哮をあげて戦いが始まった。




