16話 神事に向けて
師匠とようやく神社を作り終え、牧場も子供たちがしっかり働いている。
ようやくウルは一息を突こうと思っていたが、それはまだまだ先になりそうだった。
神社を作り終えると、神様を呼ぶ神事、神楽舞を披露しないといけない。
ウル自身は神楽舞についてはずっと練習をしており、ワン太たちに披露をする分には上手に出来ている自信がある。
しかし、神事となると神や他の人に見せることになり、それはまた別の緊張がウルには生まれるのだ。
本来踊りなどしたこともない上、人前で何かを披露することなど得意ではない。
学校の見知った間柄ですら、緊張でどうにかなりそうなのだ。
しかし神楽舞の重要性はかなりあり、マリーが言うには
神様はこの地にはたくさんいるが、その中でも虫や小さな動物の神は私達を見れるが、
大きな神などはこの世界は小さすぎるのだ。
大陸でもじっと目を凝らして見るのだ。それも一つの国の小さな町など顕微鏡がないと見れないと話していた。
しかし目印があれば上級神も見つけられるとのこと。
アークビショップのマリーが神殿で教えてもらったことらしく、創造神もこの世界は小さいが、神器という目印があるので、王都やオブロンの結界も可能になっていると。
神事、それも神楽舞というのは神への直接的な交信であり、神が一番見つけやすいらしい。神殿も年に何度か大規模なお祭りを開き、その民の祈りや奉納物を神に送っている。
なので神楽舞をしないという選択肢もなく、しばらく後にすることも不可能だ。
神の存在しない神社はあっという間に破邪の力を失ってしまうというのだ。
ウルはいつ頃やればいいのか、悶々と考えをしていたが、こういう時にこそ、マリーに聞いてみるのがいいだろうという結論に達した。
早速孤児院に向かったら庭のほうでマリーを見つけた。
そこにはマリーと孤児院の女の子が5人居た。4人はひたすら神楽舞を踊っているようであり、一人は笛で音色を奏でていた。前にマリーからもらった楽譜にもあった神楽舞の楽譜だろう。
ウルはなぜみんなが舞を練習しているのかわからなかった。
なので聞いてみることにした。
「マリーさん?これはいったい?」
「ああ、ウルさんいいところに来ましたね。はい!みんなやめる。」
「「「はーい。」」」
神楽舞というのは一人でも出来る。
しかし、出来るだけであり、本来であれば数人、歌も合わせるならば数十人で披露するものである。
それもあり、マリーは一つ考えていた。牧場はこれからさらに動物が増え、力仕事がメインであり、男の子が汗水たらして働いている。
ならば女の子はどうだろうか。牧場で共に働くことも素晴らしい。しかし得手不得手があるのだ。
特別器用であり、小さい時からシスターの真似事をしている。
神社というのはただ作れば良いというわけではない。管理が悪ければ神が弱り、それは聖域が汚れるということだ。
これから先ウルが町をしばらく離れているときに、管理をする人を前々からウルに話していた。その時にマリーさんに任せるといってくれた。
日々の舞は聖域の管理としては必須であり、これからの事を考えたらこの子達を巫女見習いにするのが一番良いとマリーは結論付けた。
「そういうことだったんですか。」
「ええ、相談はしていませんでしたが。あなたが駄目だというのなら、この子たちは神社の管理のみにしましょう。」
「巫女が嫌ではないなら、私は構いません。男の子たちは牧場で働いて生き生きとしていますし。」
「やはりウルさんは良い人です。自身が必要とされる場所があることが幸せなのです。」
「ではウルさんを中央に舞をはじめますよ。」
「え?私が中央ですか。」
「当たり前です。あなたの神社。あなたの神楽舞です。」
「そうですね。私もしっかりがんばってきましたから。」
「そういえば、ウルさん?この神事のことは町の人へ伝えましたか?」
「え?私はこっそりやろうと…」
「それは残念です。ダイタスが周りに言いふらしていますよ。弟子が素晴らしい舞を披露すると。」
「え…」
「ダイタスもわざとではないのです。舞を披露するのにウルさんのように恥ずかしがり屋はいないですからね。」
その言葉を聞き、兄弟子が大勢来ることが頭の中に浮かんでしまった。唐突に恥ずかしくなりました。
「なぜ狐面を付けるんですか?」
「冷静ではないからです。顔を見られたら爆発しちゃいそうです。」
その日の練習からウルは狐面を付けて舞をすることになった。本番でも絶対つけることになるので今のうちにお面に慣れておきたいからだ。




