13話 舞の披露とお面
ウルのスキルレベルで1番高いのは、今では木工になってしまったが。それまでは別のものが一位だった。
舞と歌だ。ずっと人知れず練習を繰り返していたので、戦闘には使っていないのにレベルは高いのだ。
しかし、錫杖を手にしたので本格的に練習をしていた。それは大工の弟子の時もこっそりやっていたのだ。
そのおかげもあり、なんとか形にはなってきたのだ。ぷるぷる震えることもなく。
これで舞の一段階は終わった。しかし神社を作った後の神事にはこの程度ではダメだとウルは思っていた。
では、どの程度であればいいのか、それもわからないため、知っている人に聞いてみることにした。
「マリーさん。少しいいですか?」
「もちろん構いません。その代わり、話が終わったら子供達の相手になってくれますか?」
「もちろんです。」
足にしがみつく子供たちにしっかり後で遊ぶことを伝え、もしものために連れてきていたワン太に任せることにした。
遠くで逃げるワン太がこちらを軽く睨んでいたが、しょうがないと諦め、話し始めた。
「舞のことなんですが。」
「舞ですか?私はそこまで詳しくはないですが。」
「でも、私の中では一番詳しいんですよ。少しはお見せできるようにはなったんですが。」
「それは素敵ですよ。」
「ですけど、神事の時にするにはどうなのだろうと思いまして。まだまだ不足かと思ってしまうんです。」
「なるほど、ウルさんのことはわかりました。しかし見ずに判断はできません。」
「見せてください。」
「あの?なんで子供達の前で?」
「本来の舞ならみんなの前でするのが当然です、これでやってみるのがいいですよ。」
してやられたと思ったが、子供達のみたいみたいとキラキラした目で見られたら断る人は居ないだろう。ウルにはその選択肢はなかった。
ウルは錫杖と、元々着ている巫女服のため、見た目はもう元々の美しさもあって子供達はもう口々に綺麗と言っていた。
ウルはもちろん急な疲労にドギマギしている。
どうしよう。ここでみんなに披露するとは思ってなかったよ。ミスしたらどうしよう。一人ならできるようになったからこそ緊張する。
指先が軽く震えているのを感じていた。その時、ウルの目線の先にはワン太が居た。
力強く、自信を持っている目。まるでウルは成功するのは当然のような顔をしていた。
そんな顔をされて、ワン太の期待に応えられないパートナーではないと証明したい。気持ちも少し落ち着いた。できる。
しゃらん。錫杖の鳴る音がした。先ほどのウルとは違い、目を伏せながらしっかりと舞っていた。
ゆっくりと、それでいてとても綺麗に、体全体を使い踊っていく。
くるりと回るところも、腰を低くし、足を使い移動するところも前回はうまく行かなかったが。今回は成功した。
最後までミスはなく、終わらせられた。
目を瞑ってたからわからない。みんなの反応が全くないのが気になるよ。
うっすら目を開けると、ポカンと子供達は口を開けていた。ワン太はヨシヨシと頷き。
マリーさんはにこやかな顔をこちらに向けていた。
「どうでした?」
その言葉に子供達はそれぞれすごい、かっこいい、綺麗、最高と口々に教えてくれていた。
ウルは良かったと、胸を撫で下ろす。前回はあんまりだったので。ここで成功できてホッとしていた。
「ウルさん。子供達といっぱい遊んだら、渡したいものがあります。」
そういうと、マリーは孤児院の奥に入って行った。
その言葉を聞いた子供たちは一斉にウルに飛びかかった。
もっぱら冒険譚を聞きたい、歌って?踊って?この三つであったが、最近はかなりキツい冒険に、修行のようなことばかりで癒しが欲しかったウルにとって楽しい日になった。
1時間と少し遊んだら、子供達も眠たくなったのだろう。目がしょぼしょぼしているので寝かせた。
みんなぐっすり寝ているのを確認したので、ウルはマリーさんに会いにいくことにした。
「マリーさん?子供たち寝ちゃいました。」
「あら、ありがとう。それでこちらにきてください。」
椅子に座ると、目の前に分厚い紙の束と箱があった。
「これはなんですか?」
「神社のレシピです。これがあるとしっかりとした神社が作れます。神器が必要になりますけどね。」
「神器というのは?王国の?」
「違います。あちらは王国創設から続いてるもので、途方もない力を持っています。」
「しかし、神器というのは神様の器であり、なんでも良いのです。」
「そうなんですか?じゃあこの弓とかでも?」
ウルはたまたま片づけ中に魔法袋に入れてしまった初心者の弓を取り出した。
「はあ。こちらはなんだか神聖なものですね。神様が作られたのかも知れません。」
「なら神器としては使えないんですか?」
「そういう訳ではありません。それに弓となると…これはぜひ神器にしてみてもいいかも知れませんね。」
マリーに勧められて、ウルは神器に弓を選択することにした。
「それで、神社のレシピってこれだけあるんですね。」
「当たり前です。本殿以外にもたくさんあるんですよ?」
「でも、こんなにたくさん作らないですよ?」
「今は無理でも、これからがあります。神様を身近に感じる様になったらそんなこと言えなくなりますよ?」
「マリーさんは感じるんですか?神様を」
「ええ。とても」
「とりあえず持っておきなさい。私には必要ありません。」
「あ、ありがとうございます。」
ありがたく、ウルは紙の束をしまっていった。
「それでこれは?箱の様ですが?」
「開けてください。中身が重要ですから。」
「これは?お面ですけど。」
「ええ。」
「なんでお面なんですか?」
「ほら、前回かなり子供達に不評でしたから、少し面で顔を隠すのも手かと。」
「それで狐の面ですか?これでなんとかなるんですか。」
「まあ今回は綺麗でしたから。それに必要になる可能性はありますからもらってください。」
押しが強いマリーにウルが勝てるはずもなく、口元が丸見えの狐面を鞄にしまう。
「では、また来てくださいね?」
「もちろん。しばらくはこの町でゆっくりしたいです。」
マリーと別れると、ワン太と足早に家に帰る。家に着いたら
「う、嬉しい。やっと舞が出来た。マリーさんも認めてくれた。」
あまりの嬉しさにつーっと涙の粒が落ちた。
ようやく、ようやく全ての準備ができた。この後は神社作りと牧場作りができる!
その後は最近遊んであげれていない、おちゅんさんとチラリンとアルデと庭で遊んだ。
子供たちと遊んでみんなと遊んでウルはクタクタになっていった。
ウルはログアウトをしたが、最近の疲れがどっとでてしまっていた。どうしても睡魔を我慢できずに寝てしまった。学校帰りですぐゲームをしていたので、6時を超えて起きたときには、夕飯の準備がまったくできていないと気づき、慌てて作り始めた。
こういう時のために両親が買ってくれたレトルトの主菜と軽いサラダと和え物を作り、そうこうしていたら帰ってきた。
凛の慌てようにびっくりしていたが、ゲームをやりすぎて寝てしまっていたとしっかり伝えたら生暖かい目でそうかとウルの話を聞いていたのだった。
ゲームを切り、この日は寝てしまい。慌てて夜ご飯を作った。レトルト多めで両親に心配をされたが、しっかり話して事なきを得た。




