2話 犬飼さんの世界
あれから教室に戻ってももう終わった話になっており、ざわざわすることはなかった。
ありがたいけど同時にもっと何してるのって言われる人になるとさらに決意を固めたところで授業が始まった。
授業はここで話すことは別になかった。家に早く帰ってゲームをプレイしたいと何度も思ったくらいだ、ゲームもVRMMOも珍しくなく、ここ10年で100個近く出ているため最新ソフトも限定1万個ということはないため安心してプレイできるのだ。
放課後誰とも話すことなく家に帰る、友人はすべて別のクラスになっているのでラインで用事がなければ一人で帰るのがここ最近の話だ。
凛の家は学校から電車と徒歩で30分程度の近場で駅に本屋があるため、そこで月に数回購入するのが楽しみであるが、今回は話が別とばかりにすぐ電車に乗り帰路についた。
「ただいまー。」
静寂の中、凛の言葉は真っ暗な部屋にこだました。
二階建ての一軒家、小さな庭にはハーブが育ててある、一階はリビングにキッチンと両親の部屋、二階には凛の部屋と物置と凛の本部屋となっている。妹の部屋もあったが隣の県の高校に進学しており、寮生活のためすっかり二階は寂しいものになっていた。
両親は二人とも共働きであり、妹が中学生になるのを皮切りにさらに仕事に没頭していたが、無理もない
生活力が皆無な両親は掃除は自動掃除機に、洗濯は自動で乾燥して干す必要もない、洗い物は飲み物はペットボトルで外食と弁当のみを食べるため置物となっている食器洗い機だった。
そんな生活を妹ともども過ごしていたが、凜は大人しく、わがままを言う性格ではなかったが、ある日決意をしたように家事をすると息巻いた。
両親は危ないからと止めるがわがまま慣れをしていない凜は泊まることを知らずに料理作りに没頭した。高校にもなってその生活は続いて、プロまでは行かないが、一般人の到達点には立っていた。
家族は食べられればどうでもいいとばかりな生活をしていたが、凛の料理を食べてから、一切の外食や間食をしなくなった。
妹からは食べたいというラインが二日に一回は来ている。
手洗いうがいをしていた凜は冷蔵庫を見て、昨日作っていたおかずを確認して、少し足りないかなと、サラダと炊き込みご飯を準備し、家事も終わったところで二階の部屋に上がった。
自分の部屋に着いたら早速部屋着に着替えて制服をかけ、ヘッドギアを付けてベッドで電源をオンにした。
ゲーム機というものは10年たてば大きく変革をするが200年もたてばもはや別物だ。
ヘッドギア一つをかぶって電源ボタンを押せばVRの世界に一瞬で移動してしまう。
VR世界ではまた別の世界があり、一人一人個人の部屋があり、それはカスタマイズできるが課金が必要のため、凜のVR部屋はソファーと机にベッドのみとなっている
さてスマホ、スマホはどこに置いたっけ?
「検索 私のスマホ」
「凛様のスマホはベッドの下です。」
「私の手に頂戴。」
AIとの会話を終え手元にスマホが出現した。スマホでアプリを入れる容量でエボアドを入れた。
ダウンロード完了まで20分と出たため、先ほどクラスメイトが話していた実況者を思い出して、動画を見ることにした。
検索したら一番上に出ている好青年が話しているサムネイルがあったため、それをみた。
「はーい、どうもどうもー、ゲーム実況と解説なら俺に任せてよ。」
軽快な挨拶とともにエボアドの注意点を話しているのは30万登録者のルナシーでエボアドを含めて様々なゲームをプレイしており、卓越したPSに甘いフェイスで女性ゲーマーに大人気である。
「まず、このゲームとか難しいのね?なんでもリアルと似ているっていうの?剣をリアルで触れる?無理だよね?」
「そこでゲームアシストがあるんだよ、これがあれば斬りたい方向に体が動くんだよ。」
なるほど、ゲームアシストは必須だと理解して次に行く。
「スキルも豊富で必ず一個は武器のスキルを取らないといけないんだけど、おすすめは剣かな?」
「個人的には体幹スキルとか意外といいよ?」
「でも魔法はそれぞれかっこいいから魔法については別動画で。」
いろいろ話していたが、スキルの話をしていたところでダウンロード完了の通知が来たため動画を切った。
「一番大事なスキルがあって、これがないと不便すぎるーーー」
何か話していたが凛はもう前のめりなのだ、ほぼ猪な彼女を止めるすべがなくそのままゲームの世界に行ってしまった。
「アイテムボックスというスキルがないとカバンでいろいろ持つ羽目になるからね?しかもレベルアップでもらえるSPではこれが取れないのよ〜、ね?リセットしないといけないわけ?」
初心者が初心者講座を見逃すと大変である。