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中継場料理人クルトゥーラ  作者: 榛名のの(春夏冬)
3/3

3話 住民登録と出発

ギルマスの元へペペールに引きづっていかれた。


「カガン様、コイツ、自分を暗殺に来た獣人育てるつもりです!」


コイツって、俺のこと?


ギルマスのカガンは秀麗な顔を歪めるように笑うと、俺の後頭部をしばいた。


「痛ってぇ!何すんだよ~!」


「捨ててこい!ウチのシマに入れるな!」


「イヤだ~!俺の、だもん~!マールは捨てない~」


前髪を掴まれて顔を上に向けられた。


「もう一度言う。捨ててこい!」


「イヤだ~!マールは俺の~!マール捨てるなら俺、ここの支部から出てく~!俺も一緒に捨てられる~!」


「チッ!ペペール、放り出せ!」


え?!本気か?


「うわぁあああん!ごめんなさい~!!ごめんなさい~!!捨てないで下さい~!マールも助けて~~~!!カガン様ぁ~!」


カガン様は、俺の手からマールをひったくると念入りにマールを観察した後、返してくれた。


「ガキの責任はテメェが取れ!……わかったな?」


「あい!わがりまじだ~!」


「契約書を作るから、そこに座ってろ」


「おで、契約書意味ない~」


カガン様は、眉間にシワを寄せて俺の頭をフルスイングで叩いた。


「痛ぁっ~!」


「オマエは本当に面倒臭い!絶対イタイ事するなよ?!」


「ばい~!」


そこからは普通の住民登録で、何処でどういう風に拾ったのか、事細かに書かされた他は、順調に進み待ってる間に下着をマールに履かせてたらペペールが真っ赤になって怒った。


「獣人は5才で成人です!公の場ではしたない真似をしないでくれますか?!」


「そ、ソレはごめん~!」


「……おとうたん、おはよごじゃます」


「起きたか?!うるさくしてごめんな~、マール」


「おとうたん、でる」


何が?!あ、ウンコか?トイレに連れて行こうとしたら、ペペールがマールをつかんで投げた。するとマールは、華麗に宙返りして見事に着地した。


「おい!何すんだよ~!ペペール~」


「おとうたん?成人した獣人がそんな甘えるわけないでしょう!まさかまだ、コイツを狙ってるんですか?!立ち去りなさい!」


「オマエは敵!殺す!」


ペペールに跳びかかるマールを慌ててキャッチしてマールに言い聞かせる。


「マール、幼くなくても俺はマールが、好きだ~。等身大の自分を見せてくれ~!」


するとマールは、一気に大人びた表情で小さな声を出した。


「クルトの側に置いてくれる?」


「もう、養女にした~。問題ない~。ただな、気に入らないから殺すって言うのは辞めよう~?」


「わかった、ガマンする」


今はそれでヨシ!

俺はマールを子供抱っこしてペペールを見た。


「な、何ですか?!」


「ペペール~。マールに【ごめんなさい】は~?」


ペペールは、一礼して大きな声で謝った。


「ごめんなさい!」


「うん、ありがとう~。マール許してあげな~」


「わかった。許す」


「マールいい子~」


頭を撫でると頰を赤らめてジッとしてるマール。きっとこの子には愛が足りなかったんだ。額に口付けてギュッと抱きしめてやると俺の背中に手が回る。

子供抱っこして宿舎の部屋に帰る。


「マール、明日から仕事何だが、手伝ってくれ」


ベッドの端に座らせてシーツの上にお金を置く。


「これが大銅貨。こっちの銅貨10枚で、大銅貨1枚になる。小銀貨は大銅貨10枚で小銀貨になる。わかるか?」


「わかる!」


「俺の出す食事は、朝も夜も1食、大銅貨1枚だ。もし、小銀貨1枚貰ったら、いくら返せばいい?」


「大銅貨9枚!」


「大当たり!賢いな!マールは」


頭を撫でると心地よさそうに目を細める。算数を教えて接客態度を叩き込むと、タライにお湯を張り、俺がお風呂に入る。

マールはトイレに行った。……一人で大丈夫かな?20分後に部屋に帰って来たマールは、何故かメイド服と白いエプロンを持っていた。


「どうした~、それ~?」


「サペールさんがくれた」


ああ、アイツ、メイド服に萌える男だったよな?


「大きすぎるから直すから~、ベッドに置いてろ~。まだ、出発するには早いから寝てろ~」


「もう、眠れない。クルトの背中洗ってあげる」


ヘチマのスポンジを渡すと少しくすぐったいくらいの力加減で、背中を擦ってくれた。

お駄賃に銅貨1枚渡してお風呂終了。

お金をしまうところに困ってるようなので、メイド服の裁断した布地で巾着を作ってワンポイントの猫の刺繍をしてマールに渡すと跳び上がって喜んでいた。ふふ、かわいい。

2時間くらいで、メイド服とフリルのエプロンを直してマールにぴったりにすると、マジックバッグに旅支度をした物を入れて部屋を出る。

ちなみに俺の格好は、旅の剣士っぽい。背中にマジックバッグのリュックを背負って片手にマールを抱っこして準備万端!


まずは、ルーア市の門まで乗り合い馬車に乗って移動する。

 門番のジゼールが、俺とマールを見て眉をひそめる。


「どこで誘拐した!」


「だから、何で誘拐したことになる~?拾ったの~」


「どうやって街に入った?」


「多分獣化して下水道から入ったっぽい。死にかけてた」


「協力感謝する!下水道も見張りをつける!じゃあな、クルト」


「おう~!ジゼール元気でな!」


町外れまで歩くと迎えが来ていた。

片目の大イノシシのヘクザールだ。大岩程もある巨体を俺に擦りつける。


「ヘクザール、待て!毛が付く~。あああ~!言う側から、もう~!!」


ハミを噛ませて手綱を付けてマールを前にしてヘクザールに乗るとヘクザールは俺の手綱さばきで目的地のカベッサ村まで走り出した。


「うぉおおおお!おう、おう!」


まるで暴れ馬に乗っているような感じで3時間飛ばすと、さすがに俺が疲れた。

お昼のごはんにする。

まずは材料の調達から、小川が流れていてザリガニが取れた!結構大きい!あとはクレソンを摘んで材料調達終了!

ザリガニはシンプルに塩茹でして、熱い内に召し上がれ!クレソンは、即席ドレッシングをかけたら、もう、食べられる。

ピリッと辛いがそれがアクセントになっておいしい!

ヘクザールも大きいザリガニを殻ごと12匹食べてお口の体操をしていた。

 ちなみにマールは、ザリガニの殻で小山を作るほど食べていた。

 俺の分も呆気に取られてる内に食べられたので、クレソンのサラダをお腹いっぱいになるまで食べて殻を埋めて処理したら、再出発だ。


「うおおおおおおっ!おう!おう~!」


慣れている俺の方が叫んでた。

 陽が落ちる前に中継所に到着して竃を組んでいると、マールとヘクザールが狩りから戻って来た。今夜のごちそうは牡鹿。丸々と太っている。解体してるとマールがジッと見てる。これは記憶術で覚えているな。


「記憶術で覚えるのも大切だけど、経験が必要~!わかる~?」


「わかる。お腹空いて死にかけたから」


「そういうこと~!ちょっとづつ教えてあげるから、頑張れ~、マール~!」


その夜は鹿肉のポトフにした。ジャガイモとタマネギとニンジンは中継所に停まってた商会から買い上げた。スペアリブを焼いたものはヘクザールに捧げる。喜んで食べていた。

ヘクザールの影でメイド服に着替えたマールがサペールのくれた竹籠を持って俺の横に立ち呼び込みを始める。


「さあさあ、クルトゥーラの鹿肉のポトフ、ひと皿大銅貨1枚だよ!コレを食べなきゃ一生損をする!買った買った!」


ジャガイモを売ってくれた商会から列に並ぶ。乗り合い馬車の乗客達は、大銅貨1枚という値段を前にあきらめているようだ。


 しかし、あまりにも美味しそうに食べてる商会の者達を見て、護衛の冒険者が鍋を持って買いに来た。どうやら小銀貨1枚分買って皆で分けるらしい。肉の塊は10個しかない。

 ケンカにならないといいね?

ポトフが売り切れたので、鹿肉のミートソースを作りパスタでマールと俺は夕飯を済ませた。

 想像通り、乗合馬車では、肉のことでケンカになっていた。



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