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中継場料理人クルトゥーラ  作者: 榛名のの(春夏冬)
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2話 何だと?!

「おとうたん!おなかすいた!おっきして!」


体の上に何か乗っている。

俺はそれを体の上から退けて目を閉じる。

外は暗い。つまり、起きる時間じゃない。

しかし、幻覚はしつこく、俺を「おとうたん」と呼び揺り起こす。

あんまりしつこいので俺はキレた。

カッと目を開き口を開け、閉じる。


全裸の7才児が見覚えのあるブルーグレーの髪とネコ耳と尻尾を生やして俺を見てる。


「昨日の?」


「おとうたん!おなかすいた!」


おを?!女の子の獣人!!下着、下着、は、無い!シャツ着せとくか!襟ぐり開き過ぎ!詰めて、袖も長過ぎ!切って纏って、久しぶりの針仕事に腕が鳴る!裾は帯でたくし上げて、下着はギルドの直営店で買うか。


ハッ!?そうじゃない!!

獣人の幼児の運命に干渉してしまった!!

どうしよう?!死ねない体になってたら!


「おとうたん、ドレスありがと!」


「……名前は?」


「ネノモノ」


「根の者?!それって……」


エンパイシャーダ共和国連邦の暗殺部隊じゃないか!!こんな小さい子が?


「俺をおとうたんにして生きるか?そうしたら、何者からも守ってやる!」


「……おとうたん、おとうたん!こわいよお」


必死でしがみつくこの子を守ってやると決めた。


「ちょっと鑑定するぞ。お名前わかんないからな」


さっき7才なのは、鑑定してしまった。了解を得て鑑定する。


 ※※※※※

名前/根の舌

年齢/7才1カ月

職業/アサシン

HP 4000 ・MP 20000

スキル/暗殺術、暗視、忍び足、記憶術、気配察知、探索

状態/クルトゥーラの施術により、根の者組織の暗示から解けたばかり。漠然とした不安を感じている。3日間食べていない。超腹ペコ。


 ※※※※※


まともな名前じゃない!


「俺が、名前付けていいか~?」


「おとうたん!なまえなに?!」


「あ、そうだな~。俺の名前はクルトゥーラ。お師様から付けて貰った~!だから俺もお前に名前を贈る~。いいか~?」


猫獣人は頷いた。


「お前は今日から、マールだ~。お前の髪の毛が冬の海の色に似てるからな~。マール、飯食いに行こう~!」


マールのお口からよだれが滴る。

おいおい、獣か!

手巾でお口を拭ってやるとマールは俺の体をヒョイと上り肩車した状態になった。さすがアサシン。背後を取るのが簡単。でも、肩車されたら、服を着られない。

 仕方なく肌着にマントを羽織ってギルドの酒場に行くといい話のネタにされた。


「とうとう、カツアゲが誘拐して来やがった!」

「よ!誘拐犯」

「で、どうしたんだよ?ホントは」


「ちょっと注文させろ!3日も食ってないみたいなんだよ~」


「フーン、これ食え。美味いぞ!」


コメールのヤツがツブ貝の串焼きを一本くれたら、他の酔っ払い共もマールにいろんな串焼きを貢いだ。


マールがそれにかぶりつく前にお礼を言わせた。


「マール、ありがとうは~?」


「おとうたん、ありがと!」


「男は皆、おとうたんか~……お兄ちゃんありがとう、だ~」


「おにいたん、ありがと?」


「そうそう。良く出来ました~!食べて良いぞ~」


肩車から俺のひざの上に座らせて貢ぎ物を食わせてる間に酒場のマスターのレールにシチューとパンをオーダーした。

 すぐに用意されたシチューと黒パンに齧りつき、皿ごとシチューをすするマールの豪快な食事に皆が呆気に取られている。

 もちろん顔はシチューでドロドロだ。

レールがおしぼりで顔を拭いてくれた。そしてシチューの2杯目に木のスプーンを付けてくれた。スプーンやフォークやマグカップは、皆が自分の物を持っていて当たり前なのだが、食べさせてやるつもりが手遅れだった俺。スプーン付きの代金を支払ってレールにマールを少し見ててくれと言い、冒険者ギルドの直営店【マゼマゼ】に行く。

 店主のサペールを見つけた。


「よお!クルト。食材は無いぜ。何買いに来た」


「獣人の7才児用の下着と服を!女の子だ~!」


「おいおい、誘拐か?」


「宿舎裏で拾った~。俺の娘にする~」


「獣人か。ボディーガードにいいんじゃないか。ちょっと鍛えれば駆け出しの冒険者くらいになるだろう。ほれ、コレも付けてやる」


それは俺の手のひらサイズの竹細工の籠。


「何コレ~。もらうけど~」


「クルト、お前さん給仕しながら金貰うのが大変だ、って言ってたろ?その娘に籠持たせて集金させろよ」


「サペール!天才か!ありがとう~」


「マグカップとフォークとスプーンもいるな?箸はどうする?」


「付けてくれ~。さっき忘れてて、シチュー口付けて飲まれた~」


「そんな感じか。躾が大変だぞ。お父さん」


小山になった衣料品とマントとブーツを見て一つ頷くと会計だ。銀貨9枚支払ってマジックバッグにそれをしまうと急いで酒場に戻る。

 そこには号泣してる幼児マールをあやす、酔っ払い共達がいた。


「どうした~?マール。ご飯が足りないか~?」


マールは、えぐえぐ言いながら俺に手を伸ばす。


「おとうたん!いなくなった!メッ!!」


「おお~、それで泣いてたか~。すまん、皆。マールもごめんな~」


テーブルの上には、汚れた木皿が天井に届くほど積まれていて獣人は燃費が悪いのは本当だったとドン引きしてるとマールがお腹を抱えて苦しみ出した。


「おとうたん…おなかいたい、いたいよ!うわぁあああん」


ポッコリ出たお腹を擦って治療すると【状態/食べ過ぎ】と表示される。痛みが引いたら寝た。これだから、子供って侮れないびっくり箱だ。


「で?マールは、どういう事情でどうするつもりだ?」


「宿舎裏のどぶ川で死にかけてたのを拾った~。その時は獣化してたから、ただの子猫だと思ってたんだ~。……それが、今朝起きたら人化してて、獣人と判明~。もう手を掛けちゃって仕方ないから、育てることにした~」


「「「「「「「バカ!子供育てるのは大変だぞ!」」」」」」」」


「でも、俺さみしい~」


「だからといってガキ育てるなよ!孤児院にやれ!お前の相手は俺らがしてやるから!」


「でもマールとも約束した~。俺が守ってやるって~」


5人の子持ちのお父さん、コメールにこんこんと説教された。

 責任持てよ!と。投げ出すなよ、と。


「ま、何か困った事あったら、言え!先輩として相談に乗ってやる」


「コメールありがとう~。お前良い奴だったんだな~」


「フン!!お前がいつも一人でいるからいけないんだ!いつも俺らが誘ってるのに、一緒に飲み食いしねぇし!メシと酒ぐらい付き合え!」


「今付き合ってる~」


「今付き合ってるのは、説教に、だ!バカ!住民登録するから、マール持ってギルドの受付行くぞ!」


「うん~」


夜の受付は熊の獣人のペペール。ゴツカワイイと冒険者のお姉さん達に人気の成人したての男前。まだ成人前からギルドの仕事を手伝ってたので、事務処理能力も抜群のギルド職員だ。


「クルトゥーラさん、珍しいですね、夜にここに来るなんて…って、その子どうしたんですか?!」


「俺が拾ったから、俺の~。住民登録する~」


ペペールはカウンターから出てきてマールの匂いをかぎはじめた。


「おいおい、何すんだよ~」


「薬臭いです。何かしら違法な物使われてる可能性が高いです。彼女の素性は?視たんでしょう?」


ギルド職員の皆は俺のスキルを知ってる。

ペペールに耳打ちする。


「実は、俺殺しに来たアサシン。道に落ちてたから拾った~。あ、変な暗示はもう無いから大丈夫~」


ペペールにドン引きされた。

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