17話:ポスト1601-1700
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
本鳳「個人の消費者、つまり利用客がチェックするのです。市場のサービスは消費者に向けたものなので、消費者目線であることが大事でしょう」
本鳳「要は口コミです。小売店でも飲食店でも交通機関でもそれ以外の施設でも、実際に訪れ利用し口コミとして評価してください」
本鳳「そのための専用アプリを開発し、アプリによって施設を口コミ評価した人がソシャゲのボーナスをもらえるようにします」
本鳳「口コミアプリの一番の特徴は、その施設のサービスが以前と比べて良くなったか悪くなったか評価するボタンを併置する点です」
本鳳「一般の口コミサイトなどでは星1から星5で5段階の絶対評価ボタンがありますね」
本鳳「口コミアプリにもそれは付けますが、さらに5段階の相対評価ボタンも付けるのです。つまり絶対評価と相対評価をするのです」
本鳳「絶対評価の基準は人によってバラバラでしょう。接客態度、清潔さ、雰囲気、価格、品質など重視する項目にも個人差がありますね」
本鳳「相対評価はその施設全体のサービスが以前と比べて良くなったか悪くなったかです。あくまでも所感なので、厳密でなくとも結構です」
本鳳「できればその施設を利用した日時や頻度も記入していただいた方がよいでしょう。口コミ内容の信頼性に関わる有意義な情報です」
本鳳「絶対評価、相対評価、日時、頻度はそれぞれ必須ではありません。抜けていてもボーナスはもらえます」
本鳳「わからない場合は頭を悩ませてまで書かなくともよいのです。初めて利用する施設なら、以前との比較などできるわけもないのですから」
本鳳「さて、現在は施設の利用でポイントやボーナスが得られ、その状態でガチャを回せばレアなキャラやアイテムが当たる可能性が上がりますね」
本鳳「キャラやアイテムは施設の事業者や管理人がある程度は選べますが、あまりにレアなものは対象ではありません」
本鳳「今回導入する口コミシステムによって多くの客から高評価を得た施設は、このレア度の上限が上がるようにします。選択肢が広がるのです」
本鳳「ソシャゲプレイヤーはボーナスのために施設を適切に評価し、施設は高評価を得るためにサービスを良く保つことが重要となります」
本鳳「ソシャゲのせいで市場サービスが損なわれるのが問題でしたが、この方法ならば上手く解決できるのではないでしょうか」
本鳳「首相から拝借した知恵の概略は以上です。何かご質問はありませんか?」
「嘘の口コミを書いてもボーナスを得られるのですか?施設を利用せずに書いてボーナスを得る不正な客、というかプレイヤーが出てきそうですが」
本鳳「得られます。ただし嘘が続くようであれば、相応のペナルティをお覚悟いただかねばなりません」
本鳳「口コミが本当か嘘かは主に二つの根拠から判断されます。一つ目は端末のGPS機能による位置情報とその履歴。二つ目は口コミ自体の内容」
本鳳「実際に施設を訪れたかどうかは位置情報ですぐにわかるのです。口コミに利用日時と頻度を記入していただくのは、そのためでもあります」
本鳳「言わずもがな、口コミの内容が同じ施設の他の利用客と比べてあまりにもかけ離れていれば嘘の可能性が高まります」
本鳳「ある口コミに対して他の利用客からの意見を書けるようにもしましょう。口コミが妥当かどうかは他の利用客からも判断してもらうのです」
本鳳「それらはAIで分析され、怪しいものは候補として挙げられ、本人に警告し、改善されない場合はペナルティという流れになるでしょう」
本鳳「ただ、あまり厳しくは取り締まりません。たとえば端末を家に忘れたなら、施設を利用しても位置情報の履歴には残りませんね」
本鳳「口コミは個人の自由な感想なので、他人と同じ感想を書く必要はありません。自由でなければ口コミの意味がないのです」
本鳳「施設のサービスに求める基準が厳しい人もいればゆるい人もいます。たまたまその時だけ万全のサービスが提供されない場合もままあります」
本鳳「それらの単一なケースだけで人のすべてを判断してはなりません。今回の措置も誰かを罰する目的ではないのです」
本鳳「施設側についても同様です。多くの人から大量に、長期間にわたって、あまりにも悪い評価ばかりされない限り、メリットが得られるのです」
本鳳「たとえば、天候不順によって農作物の収穫量が落ち、価格が高騰することがあります。トラブルで機材が故障することもあります」
本鳳「それは利用客から見ればサービスが落ちたとも言えます。しかし口コミ運営はその程度の事態をいちいちそのようには捉えません」
本鳳「サービスは大きく落ち続けなければいいのです。短期で少し落ちるのは仕方ありません。企業努力ではどうにもならないこともあるのです」
本鳳「同じ業種の多くの事業者が一様に落ちていた場合など共通の遠因があるかもしれません。あらゆる事情が充分に考慮されます」
本鳳「それくらい甘くとも市場サービスは維持、向上されるでしょう。そうした方が施設にとってメリットが大きくなるよう調整します」
本鳳「また、絶対評価は肝心ではありません。相対評価、つまりその施設のサービスが過去より向上したかどうかが重視されます」
本鳳「大きく向上している方がレア度の上限はより大きく上がり、新しく追加していくキャラも多く選べるようになります」
本鳳「というわけで、ネガティブな面について心配する必要はないものと考えています。他に質問はありますか?」
「客が口コミ評価をして得られるボーナスはすべて一律ですか?どんな種類の施設でも、高い評価でも低い評価でも変わらないのですか?」
本鳳「評価のしかたでボーナスは変わります。しかしそれに施設の種類や規模や地域は、直接関係ありません。星1でも星5でも関係ありません」
本鳳「大切なのは口コミの信頼性です。頻繁に利用する近所のお店を口コミ評価すれば、その情報は信頼性が高いので大きなボーナスを得られます」
本鳳「同じ施設を毎日利用し、そのたびに口コミ評価してもよいのです。ただしボーナスが得られるのはひとつの施設につき一日一回までです」
本鳳「しかし、そうするとやはり長く経営している施設が有利で不公平でしょう。多くの固定客を抱えていれば高評価が付きやすいのですから」
本鳳「一般に、新規事業者はただでさえ老舗事業者に対して不利なのです。さらにソシャゲボーナスでも不利というのは酷い話ですね」
本鳳「そこで、開業してから一定期間以内の施設について口コミ評価した利用者は大きなボーナスを得られるようにします」
本鳳「さらにすべての利用者はすべての施設についての最初の数回の口コミでは大きなボーナスを得られるようにします」
本鳳「数回も利用すればサービスの水準を、ある程度は把握できるでしょう。その後の口コミの信頼性が高まります」
本鳳「他人の口コミを閲覧した時に、その人にとってその施設についての何回目の評価なのかという情報も併記されるのです」
本鳳「新しい施設が作られたら、どうか利用し、評価してください。それが利用者と事業者の利益となり、サービスの向上に繋がるでしょう」
本鳳「今回の名案は首相によるものです。私ではどうすることもできなかった問題を、陽下のちのうである首相が解決いたしました」
本鳳「ソシャゲのシステムは未完成であり、まだ幾多の問題が潜在しているでしょう」
本鳳「しかし、このように力を合わせれば必ず解決していけるのだと私は信じております。首相がその光を示したのです」
会見に最も肝を潰したのは、やはり東国の外相である。解決できぬ問題を突き付けて打ち倒した相手が、その日のうちに立ち直ってきたのだ。
解決できぬからこそソシャゲを導入せずに済むはずだった。しかし本鳳の説明に大きな穴は見当たらず、解決できてしまうように思える。
筋書きが完全に破綻してしまった。むしろ、この解決策でソシャゲはさらに充実することとなるため、導入賛成派の勢いは増長するだろう。
全く予期せぬ展開だが、まずい事態なのは明らかだ。大見得を切って本鳳と対決した自分の立場がない。
つい先ほどすがしい気分で凱旋したはずが、会見の様子が報じられ奈落に叩き落された。なぜこうなったのか全く理解できない。
外相は酷くうろたえているが、テレビの中の本鳳は駄目押しに新たな案を発表する。
本鳳「さて、口コミとは全くの別件で、今この場である必要もないのですが、せっかくなのでついでにもうひとつ発表しておきましょう」
本鳳「特区、ソシャゲ、口コミ。この三つを海外に輸出できるようにします。と言っても、要は陽下と同じシステムを導入していただくだけです」
本鳳「もちろん、押し売りのようなものではありません。一般的な契約と同じく、両国の自由意志に基づく合意が必須です。条約も発行します」
本鳳「特区、ソシャゲおよび口コミの導入は必ずしもセットである必要はありません。もっとも、口コミ単体で導入する意味は薄いかと思いますが」
本鳳「大変喜ばしいことに、我が国にかんがみて特区やソシャゲを導入しようとの意見が、世界各国で広がっているようです」
本鳳「導入で社会がより良くなると考えていただけでいるのです。いたく名誉なことだと存じております」
本鳳「導入のために各国がそれぞれ、一からシステムを開発し、運用するのもよいでしょう。独自性は尊重されるべきです」
本鳳「しかし、もしそれが難しいせいで導入の障壁になるのなら、差し出がましいのですが我々に頼られることもぜひ、ご一考ください」
本鳳「我々は既に導入に成功しており、知見を蓄えております。マニュアル化し、必要なものはピックアップしました。人員も手配できます」
本鳳「各国の事情に柔軟に対応する準備があります。事前のご相談をうけたまわります。アフターケアまで万全の態勢でご提供いたします」
本鳳「たとえばソシャゲのシステムを陽下から輸入するのは、陽下での配信内容をそのままその国でも同時に配信するということです」
本鳳「そして我々の保有している特区作品、ソシャゲのキャラクターイラストなどの膨大な著作物もご提供できます」
本鳳「我々がソシャゲで新たなキャラクターを実装すれば、ソシャゲを輸入していただいた国でも同時に実装されるのです」
本鳳「運用開始時点から充分なコンテンツ量が約束されているのです。かつて我々はその部分で苦労しましたが、そんな苦労はもう必要ありません」
本鳳「これらについて授業料や相談料、コンテンツ使用料のようなものは一切いただきません」
本鳳「各国で独自のキャラやアイテムを追加して国内に配信しても構いません。それを第三国に配信することも可能です」
本鳳「国によって表現をどの程度許容するか異なるため、他国への配信ができない場合もあるでしょうが、我々は可能な限り対応いたします」
本鳳「ガチャで当たる物品も、キャライラストがプリントされたものを各国で独自に生産して構いません。陽下とは違ったものを作ってよいのです」
本鳳「ぜひ各国の特産品にイラストをご利用ください。生産コストは各国の負担となりますが、我が国は著作権利用の権益をいただきません」
本鳳「逆に、物品の生産が国家産業の大きな負担となる場合は、物品の排出率を運営側でゼロにできます」
本鳳「物品の生産が難しいせいでソシャゲの導入を諦めてしまうくらいなら、物品抜きで導入するのも選択のひとつでしょう」
本鳳「もちろん自国で充分に物品の生産力が確保できたなら、後で物品の排出率を上げるのも自由です。各国のご要望は最大限に尊重いたします」
本鳳「ただし、これらの著作物の利用はガイドラインを守っていただかねばなりません。場合によっては法改正も必要でしょう」
本鳳「我々にとっては他国へ著作物を提供する以上、それを守る義務を権利者に対して負うため譲れません」
本鳳「著作物は陽下の創作産業における宝であり、宝は愛でられてこそ価値が高まります。だからこそ他国に共有し、愛でていただきたいのです」
本鳳「しかし価値が損なわれてはなりません。そのためには法を守ってもらうしかないのです。すべてにおいて権利者の利益が優ります」
本鳳「無論、その法律の運用状況は厳しく監視いたします。つまり、きちんと権利が守られているかを陽下が確認するのです」
本鳳「他国の司法機関や行政機関、その実力組織である警察に陽下が介入する場合があるのです」
本鳳「もしも我が国から見て運用状況が好ましくない状態が長く続けば、コンテンツを引き上げた上での違約金の請求も検討いたします」
本鳳「とはいえ、それは最終手段です。仲違いは望んでいません。国家政府として責任を持ってコンテンツを守っていただければよいのです」
本鳳「また、その一環として各国のソシャゲの運営の大本となるサーバーは陽下が管理し、開発も陽下が担わせていただきます」
本鳳「各国に設置されるサーバーは配信内容を中継するだけです。しかし陽下が各国の方針に背いてまでほしいままに開発するのではありません」
本鳳「陽下はできる限り、各国からの要望にあやまたず開発するとお約束します。陽下が責任を持って開発し、開発費用はいただきません」
本鳳「ソシャゲを受け入れる態勢を作って導入を決定すれば、後は陽下に要望を出すだけで万全に運営できるのです」
本鳳「このような仕組みにする理由もやはり我が国のコンテンツを守るため、そして他国を守るためでもあるのです」
本鳳「たとえばガチャを回すためのポイントを、一国だけが自国プレイヤーに無制限に付与してしまえば、他国とは著しい不平等が生じます」
本鳳「他国プレイヤーはソシャゲを楽しむ意欲が失われて、プレイをやめてしまうかもしれません。そうなればその国の政府が困るでしょう」
本鳳「国家間の外交問題になりかねないのです。陽下は、ソシャゲを提供する発起国としてかくのごとき事態は防がねばなりません」
本鳳「ゆえにソシャゲのシステムの根幹である各国の運用サーバーを我が国で管理せざるをえないのです。どうかご理解くださいませ」
本鳳「他にも表現関連で、いくらか法改正しなければならないでしょう。特区指定する土地の新たな開発も必要になるかもしれません」
本鳳「もちろんこれらのために発効した条約の締結が前提となります。本来ならば他国の主権に干渉するなど言語道断ですから」
本鳳「同時に、条約の効力で陽下もコンテンツやノウハウを相手国へ提供する義務を負います。陽下はこれを遵守するとこの場で宣誓いたします」
西国の大統領は野党に詰められ、言葉を失った。彼はつい数時間前、陽下のソシャゲの問題を山ほど指摘できると大口を叩いた。




