14話:ポスト1301-1400
この作品はXへのポストのまとめです。https://x.com/hyogen_tokku
一般的な小説の書き方を大きく逸脱しているため、可読性が著しく劣ることにご注意ください。
本鳳「ストーリーやバトルを後回しにすればサービス開始を年単位で前倒しできるメリットもあります」
本鳳「以前、テレビ番組に出演した時にサービス開始は数年先だろうと申し上げましたが、これなら年内にでも可能かと考えています」
本鳳「どうかこのメリットをもって、面白味に欠ける状態でのリリースにご納得いただきたいのです」
本鳳「ちなみに、いわゆるログインボーナスもありません。ログインしただけでポイントをもらえたり、ボーナスを受けられたりはしません」
本鳳「人はしきりに使うもの、見るものに対して親近感を持ちます。大抵のソシャゲのログボはそれが目的ですが、依存症の入口となり得ます」
本鳳「強く依存するほど多額の課金をしてしまいます。特区ソシャゲは非営利なので、ログボによってそれをあおる必要がありません」
本鳳「二つ目は、既存のすべてのソシャゲに大きな悪影響を与えることです。つまり民業圧迫です」
本鳳「はっきり言えば特区ソシャゲのせいで収支が悪化し、サービス終了にまで追い込まれるケースも多発するのではないかと考えています」
本鳳「民間の営利企業しかいない市場に、政府事業として営利を目的としない、赤字だろうが存続するライバルが現れるのですから当然ですね」
本鳳「もちろんこれまでのご説明どおり、特区ソシャゲは一部の方法を除けば課金がありません。しかし現実での消費をうながす仕組みはあります」
本鳳「その分だけプレイヤーの可処分所得、いわゆるお小遣いが減り、既存のソシャゲへの課金も減るのが必然でしょう」
本鳳「この問題については全く申し開きのしようもございません。既存のソシャゲの運営関係者やプレイヤーの皆様に恨まれるのも覚悟の上です」
本鳳「しかれども私は経済のために必要と判断し、そういった問題をうれう政府を美辞麗句で懐柔して実行に移す運びとなりました」
本鳳「三つ目は、ソシャゲがけだしくも陽下全体に大きな影響を与えてしまうことです」
本鳳「無論それは主に良い影響ですが、逆に特区ソシャゲがなくなれば経済は立ち行かなくなるほどに依存する事態となるかもしれません」
本鳳「これは目に見えて悪いことは起こらないため、わかりにくいはずです。ただ国家の構造として心もとないのではないかと私は考えています」
本鳳「遅まきながら便宜上ソシャゲ、石、課金、天井、レア、ミッション、ログボなど意味が不明瞭な言葉をこれまで多用して参りました」
本鳳「内容が煩雑だったこともあり、正確にお伝えできてない部分もあったかもしれません。至らない点が多いことにお詫び申し上げます」
あえてイメージダウンにつながるような説明をした。ソシャゲの仕組み自体も穴だらけだ。そして民業圧迫とはあまりにも悪辣な所業である。
ここまで育った民間市場を官業の巨大な力で刈り取っていくなど道義上、許されるはずがないだろう。
経済政策の一環をうたっているが、血税を使ってゲームを提供するのは、いかにもうわついており暴政と呼んでさしつかえない。
特区内で好きなだけ塩からポイントに両替できてしまえば身を滅ぼす者も多発するはずである。
それでは結局、作品投票の票購入と投票者名の公表の時と同じてつを踏んでおり、ソシャゲ依存者を量産するに決まっているではないか。
依存者を生む悪質な仕組みが他にいくつもある。なにが「ソシャゲを生活の中心にしてはいけない」だ。白々しい欺瞞を堂々と弄したものである。
批判できる点をいくつも作ったつもりだが、世間はそうするだろうか。望み薄である。私の一挙手一投足が称賛されるようになってしまっている。
既存のソシャゲを運営している民間企業の関係者から糾弾の声が上がるはずだ。しかし気の毒だが、すぐ大人しくなるのも分かりきっている。
道義には反しているが法には反しておらず、特区ソシャゲの方がおそらくプレイヤーの満足度が高く、公利にも結びついているのだから。
国全体に益する策を打ち出しながら私個人は難じられるという矛盾に満ちた状況を作り出すことなど、土台無理なのだろうか。
そうした本鳳の予想どおり、世論の多くは大絶賛だった。既存のソシャゲにない長所があまりにも鮮烈で、短所を気にする者は少ない。
「なんかすげーいろいろ説明してたけど結局どういうソシャゲなの?楽しめるものになりそう?」
「普通のソシャゲとして楽しむのは無理そう。最初はストーリーやバトルが無いらしいし。けど明らかにゲーム単体で楽しむためのもんではないね」
「リアルで他人と協力することを楽しむゲームって捉えるべき」「ガチャで物がもらえるんだもんな。楽しむっていうか得するってことだよな」
「無料で毎日数回ガチャ引けて日用品とか当たるってすごすぎじゃね?しかも設定で絞って欲しいものを狙える」「っつっても排出率次第でしょ」
「博戯法違反になったりしないの?品示法とかも」「政府がやるって言ってるんだから法的な問題はクリアしてるに決まってるだろ」
「ソシャゲと呼ぶには異質な部分が多いですね。ツールというか福祉というか公共サービスというか経済政策というか、色々な要素があるような」
「ソシャゲじゃないなら他のソシャゲは悪影響を受けないってこと?」「普通のソシャゲと競合する要素も多いからそうはいかないだろう」
「今まで特区観光で通貨をチャージするのは無意味だったけどこれで意味が出てきたね。票買い、てか寄付もちょっとは自分の利益になる」
「相変わらず観光予約が取れないほど特区は混雑してるのにもっと酷くなるんじゃないか?」「全国どこでもチャージできるようにしてほしい」
「ソロプレイでも充分に得なのにパス認証する人の数が多いほど得も大きくなるってのが画期的。そりゃ誰でも他人と協力するようになる」
「特定の時期に特定の場所でミッション達成したらボーナスだっけ?明らかにデカい需要喚起、地域振興になるよね」
「ゴルフで良いスコア出したらゴルフクラブもらえるとか、山奥のゴルフ場でもパンクしそう」「競技人口減ってるスポーツも盛り返せるかも」
「そういうのってやっぱスポーツ関連の協賛企業が特区に金払ってミッションイベントやってくださいってお願いすんのかな」
「それでソシャゲのイラスト入れた自社グッズ使ってもらえるんだから良い宣伝になるだろうね」
「運営である特区が利益を追及しないって言ってたし、その分だけ協賛企業やプレイヤーに還元されるってことだよな」
「キャラ数が既存のソシャゲより多くなるって話だけど具体的にどれくらい?ていうか既存のソシャゲはどれくらい?」
「10000人以上のソシャゲもあるよね。同キャラの進化段階とか衣装違いとか抜きだと最高3000人くらい。それを越えるってかなり大変だと思う」
「まあ特区内はイラストレーターもゴロゴロいるしな。そいつらに描かせたら、あっという間だろ」「絵柄バラバラになるってことか」
「つかソシャゲってそんなにキャラ多いの?3000なんて覚えられないじゃん」「大抵のソシャゲは300人ぐらいだし数十人覚えれば充分」
「キャラが多いのは別にいいけどストーリーもバトルも無いってのはどうなのよ?何も楽しくないでしょ」
「私はソシャゲのストーリー面白いと思ったことないから無くてもいい」「ストーリー楽しんでる奴って少ないよな。みんなスキップする」
「戦闘も自動と倍速で味気ない作品ばかりだから不要だよ」「は?バトルはソシャゲの醍醐味だろ」「育成メインのゲームはバトルが億劫になる」
「PvP実装しろよ。特区行って課金するわ」「プレイヤー間の協力をアピールしてたし競争は無いんじゃないかな。無課金で楽しめるシステムだし」
「まだ稼働すらしてないゲームにお前らは何を言ってんだ。とんでもないクソゲーかもしれないんだぞ」「本鳳プロデュースだからそれはないだろ」
「本鳳さんは全体の仕組み考えてるだけであって詳細な部分まで調整してるわけではないと思うが」「それでも本鳳なら神ゲー確定」
「ストーリーもバトルも実装されてないうちは必死こいてガチャ回さなくてもいいのかな」「てか回す気起きないよね。集めるだけなんて」
「実装されたら集めたキャラやアイテムが役立つに決まってるから最初から回せるなら回しまくった方がいいと思う」
「うちは飲み会好きが多い職場だからボーナスも大きくなってガチャ有利なはず。キミらにはすまんが先で待ってるよ」
「仲の良い知り合いがいない俺詰んでる」「だからボーナスを口実に他人と仲良くなれって話だろ。相手も仲間が増えれば得なんだから」
「陰気な私にも友達百人できるかな」「友達どころか恋人も作れるかもな」「特区ソシャゲのおかげで結婚できましたってか?」
「それより今のソシャゲが全滅するってマジ?そうなったら本鳳さんを憎むと思う」「さすがに全滅はない……多分……おそらく……きっと」
「全滅しちまえばいいんだよ。射幸心あおって大量課金させる悪魔のシステム。それで人生ぶっ壊された奴が大量にいる」「自己責任じゃん」
「ソシャゲはソシャゲ以外のゲーム文化を破壊した。ゲーム好きだった奴がソシャゲにハマってるのを見ると悲しくなる」「ソシャゲもゲームだろ」
「しかもサ終後には何も残らない。特区ソシャゲは物品が当たった時点でそれが確実に残る」「サ終後にオフラインアプリ化するソシャゲもあるよ」
「楽しませるっつか人の欲に直接働きかけて搾り取る集金システムなんだよな。なんでこんなのが未だに合法なのか理解に苦しむ」
「薬物中毒者が薬物を取り上げてくる者を憎むのは当たり前。本鳳さんは社会を浄化するためにその憎まれ役を買って出たってこと」
「お前らこそソシャゲに対する憎悪が強すぎる。他人が何に金を使おうが自由でしょ」「それ搾取されてる奴の常套句な」
「それに比べると特区ソシャゲはクリーン。儲けるためじゃないってのが素晴らしい。光のソシャゲ。さすが本鳳さん」
「陽下経済がソシャゲに依存するようになるって話が気になった。どういう意味なのかよく分からなかったけど本鳳さんの顔が暗かった」
「そういえば本鳳っていつも笑顔なのにな」「良い影響ばかりなんでしょ?気にする必要ないんじゃないの」
「要はそれだけ良い影響が大きいっていう比喩表現だろうね。人間ならともかく経済がソシャゲ依存症になるわけない」
「本鳳さんが最後に謝ってたのは何なの?」「フォーマルな会見の場なのにソシャゲ業界のスラング連発しちゃったって意味だろ」
「ふえんするためだし謝罪するほどのことじゃねーよ。特区公式サイトで公開されてる資料は正確だけど堅苦しい表現でわかりにくい」
「本鳳はソシャゲ業界を潰すことに良心が痛んで、大衆に悪者扱いしてもらうために謝罪したんじゃないか?」「やっぱ本鳳って聖人だわ」
「でもなんでソシャゲなんだ?国全体に向けてのサービスで特区はあんま関係ねーじゃん。その運営を特区運営が兼任するってなんかおかしくね?」
「まあ特区内通貨を使ったり特区在住クリエイターに絵描かせたりって部分は特区と関係あるけど、特区がなくても多分ソシャゲは成り立つよな」
「本鳳は今までほぼ特区内のことだけやってたのに、いきなり全国向けのソシャゲをやり始めた。何か違和感あるね」
「それだけソシャゲが国を良くする見込みが強いってことじゃない?本鳳さんはあれでめちゃくちゃ愛国者だし」
事前登録の受付開始時点で、短時間のうちに陽下中から莫大なアクセスが集中したが、サーバーダウンや遅延などの問題は起こらなかった。
これは盤石な運営体制を示しており更なる信用と期待に繋がった。協賛、スポンサーに名乗りを上げる団体も急増している。
新規発売される端末には特区ソシャゲのアプリがプリインストールされるようになった。サービス開始前だというのに、すでに国民的アプリだ。
また、特区の観光客の中には多額の塩を使って大量のポイントをチャージする者も多い。明らかにガチャ目的である。
一方で、票を購入する者は減少した。特区内作品の投票よりソシャゲのガチャに金を注ぎ込むようになったのだろう。
法改正や中央省庁再編が済む。これまでのソシャゲをめぐる動きは政府のそういった手続きまで十全になされると当て込んでのものだった。
政府の動きが悪ければソシャゲは計画倒れのリスクさえあったが、本鳳肝いりの構想を止められる者など最初からおらず、根回しも万全である。
そして案の定ソシャゲを運営する複数の民間企業が連名で、特区ソシャゲに対する批判声明を発表した。
普段は互いがライバルだが、より強力なライバルが表れて結束が生まれたのだ。しかしこれも本鳳の読みどおり、徒労に終わる。
民衆も政府も味方してくれないのだから、声を上げたところで手応えもない。何の発展も見られないまま機運が消沈し、ただ諦めるしかなかった。
やがて満を持してサービスが開始された。やはり本鳳の宣言どおり開発は短期間で済ませ、ゲーム内容はガチャを回すのみだ。
日付が変わった瞬間から買い物やウォーキングでいち早くポイントを獲得し、ガチャを回すものが多発した。深夜にもかかわらずである。
中には大人数で集まり、パスを認証して大きなボーナスを受けた上でガチャを回した者もいる。皆、我先にその結果をSNSで報告した。
レアキャラが当たったこと、物品が当たったこと、友達が増えたこと、10km歩いたこと……思い思いに自慢して承認欲求を満たしている。
ネット上では情報をまとめた攻略サイトも無数に作られ始めた。攻略も何も、ガチャを回すだけなのだが。
日中には、数万人規模の興業が各地で行われた。各々の主催者がソシャゲのサービス開始に予定を合わせたのだ。
主役である歌手やスポーツ選手が発行したパスを客が認証してその場の一体感と盛り上がりが増し、興業の満足感が向上する。
ボーナスを目当てに興業に参加しておきながらその雰囲気に影響され、ファンになってリピート参加を決意する客も出てきた。
他人の報告を見てさらに興味と関心があおられ、毎日3回分のポイントを稼ぐことに躍起になるプレイヤーが続出している。
必然、人々の運動量と金銭の消費が伸びている。全国が活気づいており、すでに大きな経済効果が生まれているのだ。
利用状況と評判、現実への影響は上々と言えるだろう。もはや特区ソシャゲは社会現象である。
キャラやアイテムのイラスト作成は特区運営が住民を直接指名、あるいは募集した枠に応募してきた者の中から選定して依頼する。
また、1キャラのデザイン原案のみを発注する場合もあれば、複数キャラの原案からイラスト完成までを一任する場合もある。