『清範、速記無双の文殊の化身たること』速記談3034
清範律師は播磨国、大和氏の出身で、興福寺、法相宗、空晴僧都の孫弟子、守朝已講の弟子である。もろもろの仏法に通じているだけでなく、速記の知識においても実力においても並ぶ者もなく、文殊菩薩の化身と言われていた。不思議、奇跡のたぐいは数え切れないほどであった。御堂入道藤原道長公は、清範律師の実力のほどを試そうとなさって、多くの僧をお招きになって仏事を催され、次の間に半畳畳を、一枚だけ文殊と書いた札を縁の中に隠してつけて、混ぜて敷いたところ、清範律師は、私の座席はどこか、といって、既に座っている者たちをかき分けて、文殊と書かれた半畳を選び抜いた。このことがあって、道長公も、清範律師を文殊菩薩の化身とお思いになった。
教訓:試そうとする道長が、それっぽくて嫌らしい。