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KWAIDAN  作者:
2/21

02.ナンバープレート



 出張帰りの高速でのことだった。

 その日は金曜の夜なのにもかかわらず、道はずいぶんと空いていた。先刻まで前を走っていたトラックの姿が、いつからか見えなくなった。どこかで高速を降りでもしたのだろうか、そう思いながらトンネルに入っていった時、バックミラーの中にも車が1台も見えない事に気がついた。


 この薄暗いトンネルの中、見える範囲で車は自分だけだ。


 奇妙な事もあるものだ、と思った。仕事もプライベートも含めて高速にはちょくちょく乗っているが、こんなことは初めてだった。

 それが何なのだ、と言われても答えようはないのだが、首の後ろ辺りがなんとなく薄ら寒い感じがする。

 腹の底からゆっくりとせり上がってくる不安感と戦いつつもトンネルから出た、その時数百メートル先に1台のバイクが走っているのが見えた。


 なんだバイクがいるじゃないか。1台だけど。

 安堵を覚えつつ走れば、そのバイクはこちらよりスピードが遅いらしく、ライダーの背中が徐々に近づいて来る。

 若い頃、自分もバイクに夢中だったことがある。懐かしさと、そして安心感も手伝ってだろうか、近づいて来るそのバイクの機種を追い抜きがてら確認してみようという気になった。


 ある程度近づいて追い越し車線に入る。

 バイクの斜め後ろあたりにつけ、横目でふと見たそのナンバープレートに強烈な違和感を覚えた。見たことのない色、それに通常のものよりずいぶん横に長い。さらには数字の横に、アルファベットらしい文字が2、3……。

 どこかの御当地ナンバーというやつだろうか? それとも海外のものだとか?

 走りながらの事で上手く確認出来ない。しかし御当地ナンバーとはいえサイズというか縦横比がこうまで違うと言うのはありえるのか? それに海外のナンバーで日本国内の高速なんて走ってもいいものなんだろうか?


 結局そちらに気を取られたのもあって、バイクの機種もおそらく1000cc前後の見慣れない大型だろうと言うことくらいしか分からなかった。さらには追い越した直後に入ったトンネルの中で見失ってしまい、もはや確認は不可能だ。

 何だったのかとまばたきを繰り返しながらトンネルを出た。日は暮れてもまだ深夜と言うには程遠い。多少疲れてはいるだろうが夢や幻覚をみるほどではないだろう。何より運転中なのだ。

 腑に落ちないながらふと周囲に目をやれば、いつの間に現れたのだろう、少ないながらも何台かの車が素知らぬ顔で走っているのが見えた。


 その後はなんということもなく、いつものインターで高速を降りいつも通りに帰宅した。そのみちすがらも横目であらゆるナンバープレートを確認してみたが、同じどころか似たものも一切見つからなかった。


 やはり見間違いであったのか。


 しかしそれにしてはいやにはっきりしたそのナンバープレートのイメージが、今でも時折ふとしたことで脳裏に浮かぶ。



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