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KWAIDAN  作者:
19/23

18.歩く人



 父から聞いた話。


 父の仕事はシフト制で、帰宅時間はまちまちである。

 その日は夜11時までの勤務の日で、後始末などをして会社を出たのは日付も変わろうかと言う頃のことだったそうだ。


 帰宅途中には橋がある。

 その橋は歩道と車道が別々になっていて、その間には1、2メートルの隙間があった。


 その橋を渡っていると、暗闇の中、ヘッドライトの明かりに歩行者の姿が浮かび上がった。

 こんな時間に珍しいな、そう思うと同時に違和感を感じた。歩道を歩いているにしては、どうも位置がおかしい気がする。後続車が無かったこともあり、何となくスピードを落とした。


 ちょうどその時、橋の向こう側から対向車が来た。父と同じことを考えたのか、その車もスピードを落としたそうだ。

 2台分のヘッドライトに、前後から照らされたその歩行者を見て息を飲んだ。


 その歩行者は、歩道と車道の間の隙間を歩いている。


 確かに歩道でも車道でもなく、その間にいる。もちろんそこに床などは無い。驚いて思わずブレーキを踏んだ瞬間、その歩行者が真下にストンと落ちるのが見えた。


 慌てて車を路肩に止めて、歩行者が消えた場所から下を覗き込む。そうすると不意にヘッドライトが当たって、先ほどの対向車が橋のたもとでUターンしてこちらへ来るのがわかった。


 橋の下は暗くて良くは見えなかったが、下は川ではなく河川敷のようだっだ。

「あの……ここからだと下、見えないですよね?」

 車から降りてきた若い男性がそう声をかけてきた。

「たしかあっちの方から河川敷の方降りられるんですよ、もしだったら降りてみませんか」

「あ、ええ、そうですよね」

 もし本当に人が落ちたりしていたらこのままにはしておけないだろう。暗い中ひとりで行くのはいかにも心細い。礼を言って車を移動させ、河川敷へ向かった。


 車を降りると、先ほどの青年がランタンのようなものを持って車を降りてきた。父も車に積んであった懐中電灯のスイッチを入れる。

「あの辺でしたよね」

「この辺、お詳しいんですか?」

「いや、前にちょっと来たことあるだけで……」

 聞けば、この青年はここから車で10分ばかりのところに住んでおり、今日は友達のところで遊んだ帰りだと言う。

「そうしょっちゅう通るわけじゃないんですけど、夜中に人見ることってなくて」

「確かに、私も仕事帰りにここの橋を渡るんですけど、この時間に誰か見ることはないですね」

「真っ暗ですもんね」


 そんな会話で気を紛らわせながら、しばらくそのへんを照らすなどして見てみたが、人の姿はおろか気配も感じられない。

 橋の真下に入って見てみても、結局何も見つからなかったそうだ。

「見間違いだったのかな、ずいぶん暗かったですし……」

「でも歩いてる人がいたのは確かなんですがね……私の方からだと、歩いて行く後ろ姿しか見えなかったが」

 父のその言葉に、青年は顔色を変えた。


「そんなはず無いですよ……自分が見た人も、後ろ姿で、そっちに向って……」


 父は橋の東側から、青年は西側から来て、歩く人を見てからすれ違ったのに、二人とも歩行者の背中しか見ていない。歩いていた場所も不審である。

 その人は一体どこをどうやって、どちらを向いて歩いていたのだろう。


「か、帰りましょうか……」

「……ええ、お互い気をつけて……」

 そう言い合うと、いそいそと車に乗って帰るほかは無かった。夜中のことだしきっと2人で勘違いでもしたのだろう……そう言い聞かせながら。


 しばらく地方紙などを注意して見ていたが、その橋の付近で事故や事件が起きた様子は無かったという。



青年はキャンパーだから車にランタン積んでる。

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