14.使用禁止
妹が高校生の時に体験したという話。
昼休み、トイレに入ろうとしたら中から悲鳴が聞こえた。驚いて飛び込むと、こちらに気付いた友人が洗面台の蛇口を指して言う。
「蛇口をひねったら、あ、赤いのが出てきて……」
「えっ、赤って?」
その蛇口をひねって見ると、確かに赤い液体が流れ出て、洗面台を真っ赤に染めた。水よりはどろりとしていて、止めても洗面台ににわずかに赤みが残った。
「やだ、なにこれ!?」
「ね、気持ち悪いよね……」
その頃には騒ぎを聞きつけたのか、数人の女子生徒たちがトイレに集まってきた。
「わたし先生呼んでくる」
一人がそう言って教務室の方へと小走りで向かって行った。そのタイミングで、個室の方から水を流す音と、驚きの声が聞こえた。
「トイレの方も赤い!」
誰かが試しに流してみたらしい。複数の生徒たちが赤い水が流れるのを見ている。どうやら見間違いではなさそうだ。水道管に何か異常でも起きたのだろうか。
先生はまだだろうか、気になって廊下に出てみると、同じクラスの男子生徒に声をかけられた。
「何騒いでんの?」
「洗面台の水道から真っ赤なやつが出てきて、トイレ流しても同じ感じで……」
「え? 女子トイレの?」
そう言うと彼は不審げな顔で続けた。
「俺今そこの男子トイレ使ったけど、別にいつも通りだったよ」
「本当に!?」
言いながらなんとなくそちらを振り返ると、横の手洗い場が目に入った。
「こっちはどうかな」
「出してみようか」
彼が水道をひねると、きれいないつもの水道水が流れ出た。
「……こっちも普通の水なんだな」
いつの間に来たのか、後ろから化学のY先生が覗き込んでいた。
「さっきは男子トイレの方も大丈夫でしたけど」
「うん、そうみたいだな」
振り返るとY先生の他にも、何人かの先生と事務所の人なんかが集まって来て、トイレに出入りしている。むろん生徒たちもだ。
随分大ごとになってしまったなと思っていると予鈴が鳴り、生徒たちはすぐ各教室に戻りなさいと言うことになった。
授業の終わりに見てみると、その女子トイレの入り口には、
「使用禁止」
の張り紙が貼られて、入れないようになっていた。
その後、修理業者らしき人達が出入りするなどしていたが、一週間ほどすると例の張り紙も剥がされて、普通に使用出来るようになっていた。
洗面台の水道とトイレも、もちろんきれいな水が流れた。
どうして赤い水が流れたのか周囲に聞いてみたりしたが、結局確かな理由は誰も知らなかった。
Y先生と科学部があの赤い水を分析してみたが、成分はほぼ水道水と同じで、なぜ赤かったのかはついに解らなかったという。




