09.黒いやつ
よく行く飲み屋でたまに一緒になる女性に職業を聞いたところ、看護師さんであるとのことだった。
病院で何か怖いとか奇妙な話なんてありますか? と尋ねてみたところ、個人的には人間が一番怖いと思ってるんですけど……奇妙っていうかちょっと気になることならありますね、と言って聞かせてくれた話。
ちなみに怖い人間の話は差し障りがあるとか何とかで話してくれなかった。
去年の暮まで急患の受け入れをする部署にいたんです。
そういうところってとにかく時間との戦いなので、患者さんの服とかもゆっくり脱がしてる暇なんてないから、切っちゃったりするんですよね、服を。申し訳なくはあるんですけど、命がかかってたりするし。
そうすると女性の患者さんの、下着とか見えちゃうんですよね。あーいや、見たくて見るとかではないんだけど、全く。
そこで、気になる事があって。
喘息で運ばれて来る方の下着の色って、もう圧倒的に黒が多いんですよ。
他の色がちょっと思いつかないくらい。本当に多い。
まあ珍しい色じゃないって言えばそうなのかも知れないですけど、他の病気の人だとこういう偏りって無いんですよね。
凄く偏った偶然、みたいな事かもしれないけど、どうも気になって。家族とかにも黒はやめたほうがいいよなんて言ったりしてね。
……何ていうか、もともと悪かったのは悪かったところで、最後の駄目押しみたいなことを、その色にされてるみたいに思うことがあるんです。
もちろん黒の下着着けてても、全く健康的で何も無い人もたくさんいるでしょうし、むしろそういう人のほうがずっと多いと思うんですけど……もし違う色にしていたら、もう一歩のところで踏みとどまれたりして……なんて、ぜんぜん根拠があるわけじゃないんですけど、気になるんですよね。凄く。
もし体の調子が悪いと感じたら、身につけるものの色を変えてみるのもいいのかも知れない。もしかしたら、いい方の結果へのあと一歩をもたらしてくれるかも知れないのだから。




