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KWAIDAN  作者:
1/21

01.むらさき色の



「怖い話?」

「そう。別に震え上がるような話でなくても全然いいんだけど」

 盆休みのなかば、いつもの男三人で久々に集まった居酒屋。突然そのうちの一人、Kが怖い体験談を話せと言いだした。まだ酔っているようには見えなかった。

 少し考えて、ひとつ心当たりに思い当たったので、怖いかどうかはわからねえけどと前置きだけして話してみることにした。




 彼女と別れてから週末暇になってさ、またゲームとかやるようになったんだけど、やっぱりハマると深夜までやっちゃうんだよね。まあ翌日何もないしいっか、なんつってさ。

 それで夜中の…2時ぐらいだったと思うんだけど、ちょっとぼんやりしながらやってて、なんか見たことないステージに入り込んでたんだよね。そのゲーム自分の行動によって行ける場所とかが変わって来るから、その時は深く考えずに続けてて……見た事ないとこに来れたじゃんくらいの気持ちで。

 出てくる敵とかもさ、大体新しいステージに入ると知らない奴とか出てくるもんなんだけど、全然そんなのなくて、見たことある奴ばっかり。音楽は聴いたことないやつで、雰囲気は似てたかな。

 でも勘違いとかじゃなくて、新しいステージなのは間違いなかったんだよね。色も見たこと無い感じの色で……色って背景とかの色なんだけど、全体に濃いめの紫っていうか、赤紫っていうか……普段他のステージであんまり見ない雰囲気でさ。

 せっかくだしそのまま進めたんだけど、面白い事に全然次のステージにいけないんだよね。このゲームだと大体中ボス倒して次のステージとか、今まで行けなかったとこに行けるようになったりするんだけど、そのボスが出てこねえんだよな。クリア条件が違う時って普通アナウンスがあるもんなんだけど、全然無いし。

 おかしいなってウロウロしながらそのへんの敵を倒し続けて、気付いたら別のステージにいたんだよ。前クリアした所。そういうふうにいつの間にかステージ変わるって言うのも変だし、いつそこに移ったのかわかんないだよね、全く。結局1時間くらいウロウロしてたんじゃねえかな。

 で、そん時は見間違いかなくらいで深く気にしなかったんだけど、その何日か後、またそのステージに入り込んじゃって、その時もやっぱりボスも見つけらんないまま小一時間ウロついたのかな、これもう気のせいじゃ無いだろと思って、攻略サイトとか色々見てみたんだけど、そんな場所どこにも載ってないんだよ。もしや新発見てやつか!なんつってちょっと興奮したんだけど、冷静に考えてみると発売から2年近く経ってるからさ、今更発見てこともないよな。

 最近そのゲームあんまりやらなくなったから見てないけど、4、5回は迷い込んだんじゃないかな……やっぱ毎回夜中で、昼間だと見ること無いんだよな。あとなんでかはわかんないけど狙って探すと絶対見つからない。何なんだろ。ネットでも全然何にも見つからないし。怖いっていうか、ちょっと気持ち悪いよな。




「それって、探しても見つからないんだよね?」

 そこまで話し終えたとき、今まで黙って聞いていたもう一人の友人Dが不意に口を開いた。

「うん、何故か狙うと無理」

「……で、色が紫っぽくて…」

そう言って少し考え込んだ様子のDにすかさずKが食い付く。

「何、何? Dくんも何か見たとか? 同じゲーム?」

「実は、僕も変なダンジョンに入った事あって……そのゲームとは多分違うやつで……それアクションだよね?」

「なにそれ、教えてよ」

「…今のと、ほとんど同じだよ。ただ僕のはダンジョンRPGで、新しいダンジョン行けるようになるとマップの上にアイコン表示されるんだけど……やっぱ夜中にやってると、見たことないアイコン表示されてて、入って見ると、背景が紫色で、音楽もよく知らないやつで、敵は変わらなくて、狙って行こうとすると行けない……っていう。ただ違うゲームだけど。ジャンルも全然別物だし。それアクションだもんね」

「うん。ボスは?」

「出ないんだよね。マッピングも出来るんだけど、次やった時はそのマップも消えてるし……検索してもやっぱり情報ない。全然」

「……ゲーム違っても詳細はほとんど同じって事か」

「色もね。紫色の背景」

「……面白いこともあるもんだなあ」

 Dの話に黙って頷いていたKがそう言って少し笑いながら携帯を取り出し、何かを書き込み始める。

「なに? ラインでも来たの?」

「いいや。せっかく面白い話聞けたから、メモっておこうと思って」

「こんなのメモってどうすんだよ、どっかに発表でもするのかよ」

「うーん、そういうんじゃなくて」

 そこでKは少しだけ考えると、また口を開いた。

「最近こういう変な話聞くこと多かったからさ、どうせなら集めてみるのも面白いんじゃないかと思って。発表とかはとりあえずその後かな……もし百話とか集まったら、何か起きるかも知れないじゃん」

「百物語ってやつか」

「でも怖い話なんてネットなんかにいっぱいあるでしょう」

「いや、直接聞くのがいいんだよ。意外性とかありそうだし……お前達もさ、なんかまた聞いたり体験したりしたら教えてくれよ。今日のやつ凄く良かったし。ささいなことでもいいから」

「うーん……又聞きとかでもいいの?」

「俺が聞いたことなくて面白いなら」

「何だよそれ……でもまあわかった、なんかあったら言うわ。でも具体的にどんな?」

「そうだな……こないだ、会社の先輩に聞いた話なんだけど……」

 Kは携帯を机の上に置くと、おもむろに話し出した。Dも興味深そうに頷きながら聞いている。

 やはり夏の夜の怪談なんて盛り上がるに決まってる、今夜はちょっと遅くなるかも知れないな、そんなことを頭の隅で考えながら、彼の話に耳を傾けた。



宜しくお願い致します

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