そんな僕の血は百本のバラとなるだろう
[愛されたいと願って何が悪い?]
君を愛したいからって、愛されたいからって渡す愛を間違えた。
君に百本のバラを渡す時、僕はどんな顔をすればいいのだろうか? まずまず僕に渡す権利はあるのだろうか。
君を愛してると叫ぶから耳には届いてくれないか。
君を愛してると叫ぶから世界を変えさせてはくれないか。
すぐに消える夕日のように僕の声はとどかない。すぐに存在を消してしまう。
馬鹿らしい事と分かっていも、無理だと分かっていてもやらずにはいられない。
君を抱きしめたくとも届かない人肌。
君を褒めたくとも届かない声。
目に含んだ涙がポロポロと溢れる。
君に似合うように背伸びして買った腕時計にイヤリング。人間よりも長い耳。耳に穴を開けるのは怖かったからピアスは辞めた。
少しお洒落して煉瓦道をコツコツと鳴らす。低めのハイヒールは君の目に入る事はない。
どれも君の目に入る事なく散っていく。
目に入るのはキラキラと着飾った者たちで僕のような者ではない。
雲から降る雨のように、宙を舞う埃のように。
君に愛されることはないのだろう。
恋は自由と言うけれど、恋愛は自由ではなかったんだ。けして越えられない壁がある。
僕と君の間には、決して消えない気分の差がある。
決して消えない種族の差がある。
昔、僕達の先祖が大量殺人を行った魔法族。
嫌われ者の僕では君のような高貴な人には合わないだろう。共に居ることは許されないだろう。
今日僕は処刑される。
なんで処刑されるのだろう?
その答えは犯人の擦りつけ。魔法が使えるからだろうか?
だけどこの世界を憎んではいない。
また生まれ変わる事ができるのならば、僕は君と恋人になれるのかもしれない。
今世は人と魔法使いであっても、来世ではきっと……。
くだらないこの世界にさようならを告げる。
道端に咲く花のように、僕の存在は忘れられる。
打首の瞬間。
民衆の僕を非難する声、蔑む声。今この瞬間、地球上に住んでいるどの人間よりも価値の低い僕に当てられる声。
全てが批判の声。
何故か他人事のように思える多くの大きな声に僕の小さな声は君に届くのだろうか?
でも試す価値はきっとある。
君に伝えたい事があるよ。
こんな僕から最後のメッセージ。
豪華な椅子にすわる君に、最後にこの言葉だけを渡したい。もう血の味がする喉。
この言葉を最後に、この世にさようならを告げよう。
君にさようならを告げよう。
「君に愛されたかった」
これで『そんな僕の血は百本のバラとなるだろう』は終了とさせて頂きます。
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