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誰かが作った怖い話 Part2 「盲地蔵」

作者: SAGULOVE

連休が手に入ったのでド田舎の地元に帰ってきた。


実家の爺ちゃん婆ちゃんに会えて嬉しかったが他愛もない世間話をしたら後はやることが無い、ここにまで来て携帯を弄るのもアホらしいので散歩に出掛けることにした。

と言っても何も無いこの田舎、散歩する場所さえ思いつかない。それほど良くない頭をフル回転させて思い出深い場所を記憶から探す。

「そういえば…」


俺はアレを思い出す。

盲地蔵、小学校の裏の林にあるお地蔵さん、両目に傷がある。元は普通の地蔵だったが昔あった戦争で傷ついてしまったという。

俺が子供の頃、爺ちゃんや学校の先生が盲地蔵に供え物をしてはいけないとか言ってたっけ。

理由は教えてもらってないが、誰も裏山の気味悪い地蔵に行こうなんて考えてなかったし、なにより地蔵について話す大人達のガチな顔が恐ろしかったからだ。


盲地蔵…大人になった今ならソイツの所にお供えしたらどうなるか見当はつく、どうせ目が見えなくなるとかそんなんだろう。


ちょっと見に行ってやろう。

馬鹿馬鹿しい。


「怖ぇ…」

さっきまでの威勢はどこへ行ったんだ、情けねぇ…


昼なのに薄暗く、風が殆どない林の小道にポツリと佇む小汚い地蔵、この地蔵がヤバいと言い伝えた奴の気も少しは分かる気がした。


しゃがみこんで顔をよく見る。


林にいた鳥が一斉に飛ぶ。


一瞬驚いたがすぐに状況を理解して地蔵を見直す。

目が無いはずなのに目が合っている気がして気味が悪い。


バックから握り飯を出す、こんなもの入れた覚えはないが特に気にもしなかった。


ほれ、なんかしてみろよ?

地蔵を煽りながら握り飯を地蔵の足元に置く。


帰ろう。


何か起こると思った俺が馬鹿だった。

膝に力を入れて立ち上がる。


「うっ…」


目が痛い、今まで感じたことの無い痛さ。

この地蔵の仕業か?

こんな都市伝説、信じてなかったがここまで都合よく目が痛いとなると盲地蔵のせいだろう。


車の方へ全力で走って逃げる。


目が破裂しそうな程の痛さ。

「やべえ!!これはマジでヤバい!!」

「痛てぇ!!痛てぇよ!!」

「イタイ!!イタイ!!イタイ!!」


アホみたいにデカい絶叫を発して目が覚める。

視界には婆ちゃんが正座して俺の顔を覗き込んでいる。

「あら?おはようさん」

「婆ちゃん…」

「俺、あの地蔵の夢を…」


夢だ、本当に良かったと心の底から思った、今考えたら俺が散歩するなんておかしな話だからな。

スマホを弄ってるうちに寝落ちしたんだろう。


「…やっぱりかい、そうだと思ったわ、目がどうのこうのずっと言ってたからねぇ…ここら辺の怖いものとして盲地蔵は有名だから、久しぶりにここに来て夢に見てしまったんでしょう」


婆ちゃんは子供をあやすような優しい顔と言動で俺を見つめる。


「でも…夢なのに実際に痛みを感じて…」

「今なんて?」


婆ちゃんの顔が一瞬で変わる

「いや、だから夢なのに目が痛くて…」


「まさか!!あんた夢の中でお供え物でもしたの!?」


「あぁ…確かした…」


次の瞬間婆ちゃんが俺の腕を掴んでこう言った。


「今すぐ地蔵の所まで行くよ!! 」


婆ちゃんのあまりの気迫に俺は従うしか無かった。


車で15分、そこそこ遠いな、夢のなかだったら1秒もかかんなかったし、余計そう感じた。


地蔵の前まで婆ちゃんと早歩きで行く、不思議なことに夢で見た場所と全く同じだった、1度も来たことがないのに…


婆ちゃんは地蔵の前まで来たかと思うと、地蔵の足元に手を伸ばす。

そう、握り飯だ、俺が夢でみた握り飯そっくりだ、何故!?アレは夢のはずなのに!?


「あんたねぇ人の目玉取ってる暇があるならさっさと朽ちて壊れたらどうなの!?」

と説教垂れて握り飯を遠くに投げた。


俺には1度も怒ったことの無い婆ちゃんの迫真の怒りに少々びっくりする。

もっとびっくりするべき物が沢山あるのに。


「………」


婆ちゃんが地蔵に何か小声で言ったと思うがよく聞こえなかった、どうせまた地蔵になんか言ってんだろうな、そう思って聞き流すことにした。


「婆ちゃん…ありがとう…か、帰ろうぜ?」

俺の為にしたこととはいえ凄い剣幕で怒鳴っていた婆ちゃんにビビりながら帰るのを促す。


婆ちゃんは少し遅れて口を開いた。

「ちょっと待ちなさい」

そういうと腰についた小さなバックから握り飯を出し地蔵の足元にゆっくり供える。


「これでよし」

よく分からないがどうやら婆ちゃんは地蔵の呪いを追い払ったらしい。


「いやぁ、婆ちゃんありがとう、これでこの地蔵の呪い?的な奴は無くなるんだよね?」


「ええ、あなたはもう大丈夫よ」


そういうと婆ちゃんはさっきみたいな子供をあやすような笑顔で俺を見た、いつもよりじっくり、長く、まるでもう一生俺の顔を拝めないとでも思っているような感じだ。


小さな間が開き、俺は理解した、涙が止まらない。

「あ…ごめん…婆ちゃん…」

「あんたは何も悪くないのよ…」

「ごめん…ごめん…」

地蔵関係の怪談ってよくありますよね、適当になんとか地蔵って付けるとそれっぽくなるので結構好きです。

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