ずるいずるいとどうして妹が私をうらやむのか? 私はどうも妹の気持ちがわかりません。殿下の婚約者に選ばれたこともずるいといわれてしまい…私はある提案をしてみたのですが。
「お姉さまはお姉さまというだけでずるいのですわ!」
「はあ」
「だから殿下を私に譲ってください!」
妹の思考回路が相変わらず読めない私、ずるいといいますが、両親の扱いは同じですし。
あなたが今回、家の跡取りになったのですから、公爵の家の財産もあなたのものですけど……。
「あなたが跡取りですわ」
「それが嫌なのですわ! お姉さま逃げましたわね!」
私たちは双子、姉と妹といってもどちらかが跡取りというのは特に決まっていませんでした。
婿をとって一人が跡取りに、一人が嫁にいく。
そして私が殿下の婚約者に選ばれたので、今回、妹が跡取りになったのですが。
「跡取りの重責なんて私は耐えられません!」
「有能な人と婚姻すればよろしいのよ」
「そんなのは嫌です!それに私が選ばれるはずだったと思いますわ」
「重責というのは王太子妃でも同じですわよ」
どうしても話し合いで納得しないようですので、それなら入れ替えてみようということになりました。
双子ですし、短期間ならばれないかと。
「……ユーリカ、どうしてお前がここにいる?」
「お父様やはりわかりますか」
「当たり前だ!」
お父様にはばれました。私はあの子も一応侯爵令嬢ですし、うまくやりますわよと笑うと、あれがうまくやれるわけがないだろう、だからお前を王太子妃候補にしたんだ! と怒られました。
ミリカはお勉強が嫌いです。ダンスだけは好きなようでしたが……。
「あれに王太子妃は務まらん! 良い婿を見つければ家を継ぐことくらいは可能だろうが……」
でもねえ、ミリカは諦めないというか、ずるいずるいを言い出すと絶対に手に入れるまで言い続けるのが鬱陶しいのです。私がそれを言うと、それはそうだがあと頭をお父様がかきました。
「お父様がミリカを甘やかすから……」
「ついお前たちの母が死んでから忘れ形見の……」
「そういいましても、あの子のわがままはお父様のせいでもありますわ」
私は実は妃教育半ばで、里帰りで帰ってきたときにずるーい攻撃にあったので、あの子が王宮に行ったらどんな目にあうのかわかってましたが、それは言いませんでした。
でも家は気楽ですわ。あそこは……。
『お姉さま、許してください。もう家に帰りたいです』
この書き出しの手紙がきたのは入れ替わって1週間後でした。ギブアップが早すぎますわ。
『陰口を侍女たちや、ほかの令嬢から言われます。そして虐められて……』
それはいつものことでしたが、妹は心が弱いですからねえ。
王太子妃になる令嬢に対するやっかにはすごいですわよ。
『妃教育をされても、私には理解できません。怒られてばかりです』
まああなたお勉強嫌いでしたし、と手紙を読んでうんうんと頷きます。
『殿下は会いに来てくれません、どうも他に女性がいるみたいで……』
殿下は女好きで有名です。何人もの女性と浮名を流してますわ。私はまあ、それは陛下も幾人も妾をいるので当然かと思っていました。
亡き妻を思い続け独り身のお父様みたいな貴族が珍しいのですわ。
『もう寂しくて耐えられません、家に帰りたいです』
謝られてもねえ、と思います。このままずっと王宮にいてもらったほうがいいかなとは思いましたが、あの子が失態をやらかせばわが家の一大事ですしここが限界ですかねえ。
「お父様、私、王宮に帰ります」
「そうか」
「あの子、たぶん跡取りにはむきませんわ。精神が弱すぎます。だから親戚から適当な人を養子にしたほうがいいですわよ」
「そうかもしれんな……」
私はどうしたって心が弱い人は、重責に耐えられないものですわと笑いました。
でもねえ、ずるいずるいと割を食い続けた私がこれくらいであの子を許すと思いまして?
これからが本当のあの子に対する仕返しの始まりですわ! 私はにんまりと笑い王宮に向かったのでした。
あ、たぶん、殿下が入れあげている女性がいるので私はもうすぐ婚約破棄されるでしょう。
それまであの子と入れ替わったままでも楽しいかもしれませんわね。
人のものは良く見えるといいますが、私は気楽な妹のほうがずるいと思いますわよ。
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