第1話 世界最強の殺し屋
遂に本編開始です。
殺し屋というものを知っているだろうか?
殺し屋というものは、他人から殺しを依頼され、そのターゲットを代わりに殺すという職業だ。
そんな職業は実在する。
現にこの俺、一殺羅も殺し屋を営んでいる。
今までに何件もの依頼を受けてきて、そして、何人もの人を殺めてきた。
そんな俺に普通の人間の感情である恐怖というものはなくなっていた。
ターゲットが居たら殺すだけ。俺にとって殺しはその程度のものでしか無くなっていたのだ。
当然殺しをしているのだから、警察に追われることが多々ある。そして、警察に捕まったら確実に死刑になるだろう。
だが、俺は死に対する恐怖というものが無くなっていたのだ。それゆえ、俺は警察のことなんかお構い無しだった。
警察は俺のことを捕まえることは出来ない。俺の逃走術に警察は一向に敵う様子はない。
そんな俺も殺しにルールを設けていた。
一つ、綺麗に殺し、ターゲットを苦しませないこと。
一つ、ターゲットを無闇に怖がらせないこと。又は、ターゲットに見つからないように暗殺すること。
一つ、ターゲット以外を殺さないこと。
この三つだ。そして、この中でも大事なことは、最後の『ターゲット以外を殺さないこと』と言うルールだ。
つまり、依頼された人間以外は殺してはならない。自分の勝手な感情や、目撃者がいたとしてもターゲット以外は殺さない。どんな事があってもだ。
他の二つに関してはやむを得ない場合があるので、かなり緩いがこのターゲット以外を殺さないって言うのは絶対厳守だ。
こんなルールを儲けているせいで、かなりピンチになったこともあった。
しかし、警察は俺の敵じゃなかった。
警察は俺のことを捕まえようと必死になってどんどんと戦力を注ぎ込んで来る。しかし、一回とて俺に危害を加えられたことはない。
そんなことをやっているうちに、俺はこんな通り名で呼ばれるようになった。
『最強の殺し屋』
俺は別に最強になったつもりはない。だが、殺し屋をやっているうちに誰もがそう呼び、俺のことを恐れるようになった。
そんなある日のことだ。
「行ってくるからな」
俺は棚の上に置いてある写真立てに入れられている写真に挨拶してから家を出た。
俺の家はボロ屋で、正直幽霊が出たとしてもおかしくないと思うくらいの家だ。
俺がこの家に住んでいる理由は警察から逃亡するため――では無い。逃亡もそうだが、警察に俺の家が突き止められたことは一度もないので俺はこの家にずっと住んでいる。
まぁ、住んでいる理由を言ってしまうと俺は貧乏だからだ。
殺し業という大変な仕事だからかなりの報酬を頂いている――訳では無い。他の殺し屋がどうなのかは分からないが、俺の報酬ではこのボロ屋で生活するだけで精一杯だ。
そもそも、毎日依頼が来る訳では無い。
この世界には殺し屋なんてごまんと居る。その中で俺を選んでくれることはなかなかないので、本当に依頼がない時は一ヶ月ないこともある。
そんな中で普通の家に住むなんて事は出来ない。そもそもとして、そんな家に殺し屋が住んでいたらいやでも目立ってしまうだろう。
なので、このボロ屋が最適なのだ。
現在、あの家には俺一人で住んでいる。昔は親とも住んでいたが、親は俺が幼いころに他界した。
死因は他殺だ。とある殺し屋に殺されたらしい。そして、当時の恋人すら殺された。
親は死に、金もなくなった俺は当然進学など出来るわけが無い。だが、その事はもうどうでもよかった。
そこで俺は殺し屋を営むことにしたのだ。
何故殺し屋を選んだのか。親の敵である職業を何故選んだのかと言うと、殺し屋をやっていればその内にその殺し屋に会えるかもしれないと考えたからだ。
親には善人になれと言われたが、今の俺には復讐心しかない。親には悪いが、俺は殺し屋をやってあの殺し屋を見つけるまでは辞めるつもりは無い。
幸いにも俺はいつも顔がバレないように変装して殺しをしているので、顔バレはしていない。
そのため、普通に生活していても殺し屋だという事はバレる心配がない。
今日、俺が出てきた理由は、近所のスーパーに買い出しをしに来たのだ。
「ありがとうございました〜」
俺は大量のもやしを手に、スーパーを後にする。
「これだけあれば暫く飯には困らないだろ」
俺の主食はもやし。好物はもやし炒めだ。
ほとんどもやしで生活しているため、かなり食費は抑えることが出来ている。
でも、たまには美味いものとか食いたいんだけどな……。
一週間連続で依頼が入った月なんかには焼肉でも出来るだろうが、それじゃないとそんな贅沢はとてもじゃないが出来ない。
そして、俺は家に帰って買ってきた買い物袋を床に下ろす――その瞬間だった。
バンッという破裂音とともに俺の背中に鈍い衝撃が走った。
力が抜けていく、そんな感覚に立っていることは出来ずに、その場に倒れ込んでしまった。
背中に手を伸ばしてみる。すると、俺の掌にはべっとりと赤い液体が着いた。俺はこの液体の正体に直ぐに気がついた。
そして、あの鈍い衝撃の正体。背後を見てみると、そこには一人の男性が立っていた。
手には黒い物体が握られていて、あれでやられたんだと直ぐに把握出来た。
「お、おおお、お前、『最強の殺し屋だろ』。これで俺は大金持ちだっ!」
この男の言っている意味が分からなかった。
俺の見つからないようにする工作は完璧だったはずだ。
それだと言うのに、こいつは俺の事を『最強の殺し屋』だと断言して、その手に握られている物体で俺を攻撃してきやがった。
警察でも見つけることは出来なかった俺のプライベートの状態でだ。
確かに俺は懸賞金をかけられているため、一般人にも狙われる可能性はある。だが、この家だけは誰にも知られていないはずなのに……。
段々と意識が薄くなっていく。その瞬間、一気に視界が真っ暗になった。
「約一名、もう死にかけている人がいますっ!」
周囲が騒がしい。もう警察が駆けつけてきたのか?
静かにしてくれよ……俺はもう静かに眠りたいんだ。
そうして俺は意識を手放した。
この日を境に『最強の殺し屋』はこの世から姿を消した。
この事は直ぐに全世界に知れ渡ることとなる。しかし、一つ妙なのは警察が現場に駆けつけた時にはもう死体はなかったのだ。
殺したと証言した男性は急に死体が変な光に包まれて消えてしまったと意味の分からない証言をしている。
果たして殺羅はどうなるんでしょうか!?
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