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第18話 罠

 俺とハルロートは直ぐに依頼の森へとやってきた。

 この森はかなり鬱蒼としていて、何か出てきてもおかしくない雰囲気。

 だが、静まり返っているところがかなり不気味だ。嵐の前の静けさという言葉も存在している。この森だったら何が起こったとしても不思議ではないだろう。


「ハルロート離れるなよ」

「はい」


 ハルロートは昨日作りだした弓を持っているものの、矢を持っていないので、今回の依頼でも同行するだけで俺が守るという形になる。

 よほどこの森が怖いのか、俺の服をキュッと掴んで震えている。


 昼でも光が地上に届かないこの森は、流石に俺も恐怖を感じてしまう。ことは無いけども、いつも以上に警戒をする。


「…………」


 それに、もうこの森の異様な気配には気がついている。俺たちを狙う視線をひしひしと感じる。

 獣? 魔物? いや、違うな。この視線はあいつらのような俺たちを獲物としてみている視線とは違う。


「はぁ……本当に厄介なことになった」


 思わずため息をついて後頭部をかいてしまう。


「サツラ、どうしたんですか?」

「……絶対に離れるな。俺の半径十メートルから出られたらカバーしきれないからな」

「う、うん」


 ハルロートも俺の言葉から何かを感じとったのか、更にピッタリとくっついてくる。


「……我が知識から呼び覚まし、複製せよ」


 コピーを使用して銃弾を複製しておく。

 やはり、この魔法は使用魔力量が少ないようで、少し疲労が俺を襲ったものの、十分なくらいに銃弾を増やすことが出来た。これで戦える。


 さて、この状況を考えてみよう。

 相手はかなりステルススキルが高いようで、俺でも相手の位置を正確に掴むことが出来ない。

 こんなことは相手が殺し屋じゃない限り今まで無かった。相手は俺とおなじ殺し屋と同程度の力があるかもしれないと考えてよさそうだ。

 それに加えてここは異世界だ。この前みたいに魔法で動けなくされるかもしれない。


 その時、空気を切る音が斜め後方から聞こえてきた。


「ちょっと捕まってくれ」

「え?」


 咄嗟に俺はハルロートを抱えて、地面を蹴ってその場から離れる。

 次の瞬間、俺たちの元いた場所は大量の矢の雨によってボロボロになっていた。回避しなかったらあの地面が俺たちになっていたということだ。


「しかし、確実だな」

「こ、これは……間違いありません」

「あぁ、人の仕業だな」


 一番恐れていたことが起こってしまった。

 恐らくあの依頼は罠だ。前の世界でもあった。俺を捕まえるためにわざと嘘の依頼をしてきた事が。

 ただ、その時、俺はまんまと嵌められて何度かピンチになった。それは、相手を殺すことが出来ないからだ。

 今回のこいつらのミスは魔物だけに限定しなかったことだ。


「へっへっへ、罠にかかりやがった! 捕らえろ! 身ぐるみ剥がして男の方は殺せ、女は拘束しろ!」


 盗賊だ。

 一人のリーダーのような男が指示をすると大勢の盗賊たちが俺たちに襲いかかってくる。

 だが、俺は容赦なく拳銃を取り出すと襲いかかってきた男たちに次々と発砲していく。

 ハルロートを抱えているので左手が塞がっていてナイフは使えないものの、問題は無いだろう。


 そして俺の銃弾を食らって次々と俺に襲いかかってきた奴らは声を上げるまもなくどんどんと倒れていく。


「な、なんなんだあいつは!」

「近づく前にこっちがやられてしまう!」

「……その程度か。面白くない」


 俺が人と戦ったのはもう随分前のことだが、そいつはものすごく強かった。だと言うのに、こいつらは俺たちを嵌めてまで襲いかかってきて、このザマとは情けない。


「ん?」


 すると、体がピクリとも動かなくなってしまった。辛うじて口は動くものの手足は動かない。どうやら、本当に動けなくなる魔法を掛けられてしまったようだ。


「手強いやつだが、動けなくなったらどうって言うこともないだろう。お前ら、やれ!」


 この魔法は厄介だな。だけど、俺の感だと解除の魔法もあるはずだ。じゃないとこの魔法を使うやつに誰一人として勝てなくなってしまう。

 ここに来る前に会得しておくべきだったな。


「自然よ、その突風で私たちを守り給え」


 ハルロートが小声で何かを唱え始めたかと思うと、突然周囲に突風が吹き荒れ始める。

 これがハルロートの魔法か。


「大地を駆け抜ける風よ、我が力となり敵をうち倒せ」


 今度はハルロートの手のひらの先から緑色のレーザーが飛び出して目の前の盗賊たちを次々と倒し始めた。


「はぁはぁ……」


 ただ、かなり体力を使ってしまったらしく、息切れをしてしまっている。

 だけど、これはかなりいい行動だ。今の攻撃によって相手は思わず俺の固定を解除してしまったようだ。


「今度は止められる前にお前を殺す」


 何となく魔力の流れがわかる。集中しないと見えないのだが、それでも目に見える。本当に薄い線でしかないのだが、目視できる。

 さっき、固定された時に見えた魔力の流れ、その線の修着地点の奴が俺に魔法を使ってきたやつだ。


「さっきから移動して逃げているようだが、プロの殺し屋の俺から逃げられると思うな」


 しっかりと狙いを定めて引き金を引く。その瞬間、勢いよく銃口から銃弾が飛び出し、真っ直ぐ木のスレスレを通って飛んでいく。


「ぎゃぁぁぁっ!」


 少し場所が悪くて瞬殺とは行かなかったようだが、直ぐに声が聞こえなくなった。

 これで懸念点は無くなっただろう。


「お、おい、逃げるぞ! あいつらヤバい!」

「狙う相手を間違えた!」


 逃げ去っていく盗賊たち。その後ろ姿を見て俺は銃を背中にしまう。

 今回の依頼は殲滅が目的では無いので別に逃がしても問題ないだろうと考えてのことだ。


「さて、俺達も帰るか」

「は、はい。でもその前に下ろしてください」

「あ、悪い」


 そう言えばずっと抱えてたんだったな。

 気がついて俺はハルロートを地面に立たせてから二人で街へ戻るために歩き始めた。

 魔法を使われピンチになってしまった殺羅ですけど、ハルロートの機転で助かりました!

 どうしてハルロートが腕を動かせたのかと言うと、固定の魔法は対象を一人しか固定できないからですね。

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