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第17話 パーティー結成

 とりあえず、調べたいことも調べることが出来たので、俺たちは図書館を後にした。

 そしてそのまま向かったのは冒険者ギルド。

 俺たちは金欠なので次々と依頼を受けないと宿代も払えなくなってしまうかもしれないという危機的状況なので、依頼を受けるために来た。

 ただ、本当の目的は依頼を受けることではない。


「冒険者登録をするか」

「やったぁっ!」


 俺の言葉に本当に喜んでいるのか、年相応に喜ぶハルロート。

 冒険者に憧れて村を出てきたというのに、そこで追放をされてしまったらしいので、憧れの冒険者になることも出来なかったのだろう。


 冒険者ギルドは図書館の隣にある。そのため、直ぐに冒険者ギルドにやってきた。

 冒険者ギルドの内部は前の国と変わらない。

 カウンターがあり、なにやら食事もできるようになっているらしく、食堂も併設されている。日本で言うところの喫茶店のようなものだろうか。

 ただ、こんな店に一般客が入るわけもないから、居るのは冒険者だけだけどな。


「さて、早速登録するか」

「はい!」


 俺とハルロートがカウンターへとやってくると、受付嬢がこちらに気がついて声をかけてくる。


「ようこそ冒険者ギルドへ。今日のご要件は?」

「はい、この子の冒険者登録をしたいと思いまして」

「分かりました。それでは年齢をお願いします」

「あ、はい。十五歳です」

「ありがとうございます」


 どうやら冒険者になるには年齢制限のようなものがあるのだろう。俺はまだしも、ハルロートは年齢以上に幼く見えるので、聞いたのだろう。

 ハルロートから年齢を聞いた受付嬢は俺の時と同じようになにやらカウンターの下にあるであろう棚から何やら色々と取りだしてきている。

 水晶玉と登録用紙、それから分厚い本。


「それではこちらの水晶玉に手をかざしてください」

「はい!」


 ハルロートは背が低いので精一杯背伸びをして水晶玉に手をかざす。気分は子供を見守っている気分だ。一生懸命背伸びをしている姿を見ると微笑ましくなる。

 すると、水晶玉から緑色のモヤのようなものが出てきて、自動的に登録用紙に書き込まれていく。


「緑? 初めて見ましたが……これは?」

「はい、緑はかなり珍しい色ですが、緑は基本的にエルフ族の方々が出される色だと把握しております。エルフ族の方々は潜在魔力量が多いので、この色になると言われております」


 なるほどな。基本の色は白、赤、青、黄だが、他の色がある可能性もあるということか。


「ルーシー・ハルロート。まだ少ないですが、基礎魔力量がかなり多いですね。さすがエルフ族と言ったところです。称号は誘導者?」

「誘導したつもりは無いんですが……」

「あぁ、すっかり誘導されたよちくしょう」


 俺はあの場で戦うつもりはなかったんだが、ハルロートにすっかり感化されてしまったので、誘導されたと言っても過言ではないだろう。

 流石に親しき間柄と言っても、冒険者カード内の個人情報を俺が見ては悪いと思って目を逸らす。

 その間にどんどんと登録が進んでいき、遂に冒険者についての説明が始まった。これに関しては俺が受けた説明と全く同じものだった。


「さて、お二人は仲間のようですが、パーティー登録は致しますか?」

「パーティー登録?」

「はい、登録すれば仲間同士で報酬を分配できるようになります。書面上で保証されている仲間関係ということですね。裏切ると罰があります」

「なるほどな。つまり、これは相手を縛り付ける鎖のようなものか」


 受付嬢の話を聞いて俺は一瞬考え込む。そしてハルロートの表情を見てみる。

 するとハルロートも真っ直ぐとこちらを見てきていた。その目を見て俺は決心する。


「いや、登録しなくてもいい」

「え?」

「いいのですか?」

「あぁ、こいつが裏切るとは思えないしな」


 俺はハルロートの目を見て絶対に裏切ることは無いと確信できた。だからいらないと言ったのだが、なにやら二人とも俺を見る目が不思議な人を見る目になっている。

 今まで訝しまれたり、蔑まれたりしたことはあったが、不思議そうな目をされたことは初めてだ。


「どうして、裏切る裏切らない前提の話になっているんですか?」

「は?」

「これは単純に仲間として公式に認められるようになるというものであって、裏切り者を縛り付けるためのものではありません」

「なんだと!? この世界の連中は人を疑うということを知らないのか?」

「どういう暮らしをしてきたかは知りませんが、一々人を疑ってばかりだと疲れますよ」


 どうやら俺の考えがひねくれてしまっていたらしい。

 俺にとっては仲間は裏切るか裏切らないかの世界だったため、こんな風に考えてしまった。

 殺し屋の世界で仲間というものはいつ裏切られてもおかしくないので、いつでも裏切られることを考えて行動していた。それがここに来て仇となるなんて。


「まぁ、そういうことならばパーティー登録をしよう。俺、一殺羅とルーシー・ハルロートの二人で頼む」

「はい。リーダーは誰にしますか?」

「もちろんサツラさんです!」


 俺が答える前にハルロートが答えた。

 俺はリーダーとか苦手なのだが、ハルロートの声に反応して受付嬢が記入してしまった。

 ただ、二人だけのパーティーなのでそんなに気にする必要は無いだろう。


「パーティー名はどうします?」

「キラーだ」

「キラーですか? どういう意味ですか?」

「今思いついた言葉だ。あまり気にしないでもらえると有難い」


 どうやらこの世界に英語の概念は存在しないようだ。そしてキラーが殺し屋という意味だとも伝わっていない。

 だが、これでいい。俺は殺し屋に誇りを持っている。ハルロートを巻き込んで悪いが、俺は咄嗟にこれがいいと思ったのだ。


「それではこの内容でパーティー登録します。これで登録は完了です。どうします? このまま依頼を受けますか? お二人は今回でパーティーとなりましたので、パーティー依頼を受けることができるようになりました。パーティーランクはEですので、Dランクのパーティー依頼まで受けることができます」

「そうだな、じゃあパーティー依頼で頼む」

「分かりました!」


 そうして提示されたパーティー依頼の用紙。だが、例のごとく俺は文字が読めないので、内容が全く分からないから、選別はハルロートに任せることにする。


「さすがパーティー依頼ですね。報酬が多いです。ですけど、その分難易度が高そうですね」

「それはパーティーで受けることを前提とした依頼ですから」


 暫くテーブル席に座って待っていると、ハルロートが一枚の依頼用紙を持ってこっちに来た。

 その表情は全く心配なんてしていない。俺たちならば確実に達成出来る依頼を選んだのだろう。


「これを選びました!」

「どれどれ」


 差し出された依頼用紙を見てみる。って、差し出されたからついつい覗き込んだが、読むことは出来なかった。

 ハルロートも一瞬忘れていたようで、思い出すと内容を読み始めた。


「近くの森でベアーが暴れているらしいから討伐して来て欲しいっていう依頼みたいです。ついでにその森の敵も討伐してきて欲しいようです。報酬は千レンです!」

「報酬がかなりいいな」


 報酬がいいって言うことは難しい依頼なのだろうか。

 いや、それにしても怪しい。

 敵と書かれている所が怪しいな。もしかして、俺たちに仇なす人間がいる可能性があるのだろうか。そいつらも一緒に討伐しろ……か。人間殺しはこの世界ではしたくないんだけどな。


「それじゃあ行くか」

「はい!」

 遂に二人は正式なパーティーになりました!

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