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第16話 図書館

「ご飯が出来ましたよ」

「ごはん!?」


 そこへ宿のお姉さんがやって来て夕飯を告げてきた。

 俺はついさっき食べたばかりなので、腹はそんなに減っていないからテンションは上がらないものの、ハルロートはものすごく嬉しそうにベッドから飛び起きて部屋から飛び出して行った。

 多分、今までずっとまともなものを食べられなかったから嬉しいのだろう。


 俺もその後をゆっくりと追って一回に降りて見ると、未だに酒を飲んで大騒ぎしている冒険者たちがそこに居て、その中の一席にハルロートがぽつんと座ってスープとパンを食べていた。

 スープはコンソメっぽい感じで、パンはコッペパンだろうか。


 俺もハルロートの席の隣に座ると、お姉さんが俺の前にもパンが三個入ったバスケットとスープを置いてくれた。

 そして微笑んでから再びカウンターの方へと向かっていく。


「美味いな」


 そのスープはとても美味しいものだった。

 冒険で疲れた冒険者たちを労わるように、少々塩分が強めだが、これが美味い。

 俺も俺でこんなに充実した食事は久しぶりなので、かなり感動している。ただ、腹があまり減っていないせいで、パンは一個食べただけで腹がいっぱいだ。

 ただ、残すのも悪いだろう。そう考えて隣で美味しそうにパンを頬張っているハルロートへと目向けた。


「これ、食うか?」

「え、いいんですか?」

「あぁ、俺はそんなに食えない」

「じゃあ有難く頂きますね」


 俺からパンが二個入ったバスケットを受け取ると、そのパンも美味しそうに食べ始めた。

 それを見て俺は微笑ましくなる。多分、子供が出来たらこんな感覚なんだろうなっていう気分だ。

 まぁ、年齢差的には妹くらいだろうけど。俺が年齢的には高校三年生って言うのもあるけどな。


「ハルロート、明日は図書館に行こう」

「図書館ですか?」

「あぁ、少し魔法を調べたくてな」

「……サツラさんの魔力の謎を知りたいのでご一緒します」


 俺が悪い訳では無いけども、ハルロートに睨まれていると辛いので、謝りたくなってきてしまう。

 でも、確かに不可解ではある。ハルロートはこの世界の住人だから恐らく魔法になれていることだろう。そして、魔力とやらは魔法を使えば使うほど鍛えられて容量が増える。

 だが、ハルロートは一発使ったら倒れたというのに、俺は倒れなかった。ここには何か理由があるはずだ。


「そういえば、クリエイトで弓を作り出せたって言うことはハルロートは弓の作り方を知っていたのか?」

「はい、そうですね。私の住んでいたエルフの村では弓が主要武器でしたので、逆にあの村で弓の作り方を知らない人はいないという程ですね」

「そんなにか」


 となると、ハルロートの武器はあの弓がいいかもしれない。

 後は矢があればハルロートは弓で戦えるのだが、戦闘がまともに出来るくらいに矢を作るって言ったら、倒れるじゃ済まないかもしれない。

 俺もさっき使ったからわかるけども、魔法を使用したあとの疲労感は凄まじいのだ。使いすぎたら気を失ってしまうかもしれないな。


 となると、銃弾を同じ方法で作り続けるのは不可能に近いな。

 とりあえず、さっき作った出した銃弾はサンプルとして保管しておこう。そして、明日図書館で何か便利な魔法が無いか探すという流れになるな。


「それじゃ、それ食ったら明日のためにゆっくり休むか。今日は移動ばかりだったから疲れたろ」

「少し、疲れました」


 そして俺たちは飯を食い終わると部屋に戻って直ぐに寝ることにした。

 ハルロートは一緒にベッドで寝ようと言ってきたものの、俺がそれを断固拒否して床の上で寝ることにした。

 少し固くて寝にくいものの、外で寝るよりはマシだと考えて床で眠った。


 次の日、目を覚ますと驚くべき光景が視界に広がっていた。


「……お前何やっているんだ?」

「え、えーと……そ、そうです! 人間観察です!」

「夏休みの自由研究にでもするのか?」

「なつやすみ? じゆうけんきゅう?」

「……気にしないでくれ」


 起きてみると、俺の視界いっぱいに俺を見つめているハルロートの顔が飛び込んできた。

 俺が目を開けた瞬間、耳まで顔を紅潮させて丸わかりの言い訳を並べていた。

 今言ったことが嘘だということは分かるものの、どうして俺を見つめていたのかということまでは分からない。


「と、とにかく今日は図書館に行くんでしょ?」

「そうだな。顔洗ってくる」


 どうやらこの宿はトイレも洗面所も共用となっており、どちらも二階に備え付けられている。

 ただ、風呂だけは無かった。城には浴室があったことから、一般人には湯浴みの権利もないらしい。

 入りたかったら自分で作れということなのだろう。


 そして顔を洗ってからハルロートと共に宿を出る。

 この街の地図を見てみる限り、この街にも中央に冒険者ギルドが存在していて、その隣に図書館もあるようだった。


 その地図を頼りに向かうと確かにそこには図書館があって、その中には魔女のような格好をしている人が多く居た。

 普通の冒険者もいるが、ほとんどは魔法使いの見た目だった。


 図書館は好きだ。この場所は前の世界と同様かなり静かな場所のようだ。

 静かで、疲れている時に自分だけの空間を作れるところが良い。ただ、前の世界では自分だけの時間を作ることなんて出来なかったけどな。


「あ、これ風魔法の魔導書です!」

「魔導書?」

「はい! 魔導書っていうのは魔法のことについて書かれている本で、この本のとおりに練習すればその魔法を会得することができます!」

「なるほど」


 教科書のようなものか。

 見てみると、棚には大量の魔導書がぎっしりと並べられていた。

 確かに元の世界にもあったような本もあるものの、ほとんどの割合で魔導書があった。それだけこの世界では魔法の需要が高いのだろう。


 その中で気になる魔導書を見つけた。それは製造魔法の魔導書。

 その中には昨日、ハルロートに教えてもらったクリエイトもある。その中で一番気になったのはコピーの魔法。

 所持している作り方が分かっているものを複製することが出来る魔法だ。しかも、これはクリエイトよりも消費魔力が少ないもの。

 これならば、銃弾不足を回避出来るかもしれない。


 だが、今回来た理由は俺が何故クリエイトを使って倒れなかったかということだ。

 その事について書かれている文献がないか探してみる。だけど、そんなことはどこにも書かれていない。

 単純に俺が初期魔力容量が多いだけ? いや、そんな簡単な問題じゃないような気がする。ハルロートが知らない何か重要な事が魔力容量には隠されている可能性があるな。

 大輝なら分かるだろうか。だけど、連絡をとる手段がないんだよな。今更あの国に帰る訳には行かないし。暫くは何もわからない状態かな。


 俺は異世界に対する知識が乏しすぎる……。

 実はこの図書館にいた間にハルロートはいくつか魔法を覚えたようですよ。

 さすがエルフ、才能があったようです。

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