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第15話 魔法

 食べ終わって俺たちは店を出た。


「ご馳走様でした」

「今日は君の活躍でこの街は救われたからこれくらいお易い御用だ。何かあったら言ってくれ。できる範囲で手伝ってやる。それと――」


 そこでハルフはハルロートに何やら耳打ちをし始めた。

 ハルロートに何を吹き込んでいるのかと思っていたら急に顔を紅潮させた。本当に何を吹き込んだんだ……。

 ただ、悪い話ではなさそうなのでそんなに気にしないでおくことにする。


「それじゃあ俺たちは宿に向かうわ。やりたいことがあるからな」

「やりたいこと?」

「そうか、じゃあまた今度、何かあったらこっちも頼ませてもらうよ」


 それを最後として俺らは解散して俺とハルロートは近くの宿へと向かった。

 宿へとはいると、何やら冒険者らしき人達がまだ明るい時間だと言うのに酒らしきものをあおっている姿が目に入る。

 どうやらこの宿は一階に食堂、二階に部屋があるようだ。この宿も格安なようで冒険者御用達って言ったところか。


 早速部屋を取る事にする。

 カウンターへと向かって金を四百レンを出して口を開いた。


「二部屋で頼む」

「あー」


 すると、受付のお姉さんは何かを渋るようにこっちを見た。

 その視線はハルロートを見ているようで、俺はある一つの可能性が浮かんだ。それは、前にいた確かカロンという名前の国で人種差別された件を考えて、この国でも人種差別をされているのではないかということだ。


 その事を考えると、あまりこの場にいるのもハルロートを傷つけてしまうと考えて、良くないことを言われたら出ていこうと思っていたのだが、お姉さんが言った言葉は予想外の言葉だった。


「すみません〜。現在一部屋しか空いていないんです。それでもよろしいでしょうか?」

「そう……なのか?」


 一瞬、予想外の言葉を言われたので、思考が停止してしまった。

 だが、二部屋空いていないのか……俺たちが同性ならば一部屋でも良かったかもしれないが、俺たちは男女だ。一部屋なんてできるわけが無い。


「それじゃあ、違う宿に行くか」


 諦めて宿を後にしようとすると、背後から袖をきゅっと引かれる感覚があった。

 見てみると、ハルロートが俺の袖を摘んでいた。


「どうしたんだ?」

「一部屋でいい」

「はぁっ!?」


 突然、ハルロートから爆弾発言が飛び出した。

 こいつには男女であるという自覚は無いのだろうか。それとも、俺は異性とは思われていないのだろうか。それはそれで悲しいんだけど……。


「いや?」

「嫌って訳じゃないが」

「じゃあ、いい?」

「はぁ……俺の負けだ。これで二部屋頼む」

「それじゃあ、これなら四泊できます」

「ん? 一泊百レンじゃないのか? 俺たちは二人だから二泊だと思うんだが」

「いえ、一部屋換算ですね。なので、一部屋を四泊借りると四百レンとなります」


 なるほど、そういう換算となるのか。

 本来の予定とは違うものの、これは嬉しい誤算となった。これならば、節約ができる。

 あまり金のない今は、ハルロートが一部屋でいいと言ってくれたことに感謝することにしよう。


 それにしても、上目遣いで消え入りそうな声で「いや?」は流石に反則すぎる。

 可愛すぎるだろうが……。

 これで断れる奴がいるものならば見てみたいものだ。まぁ、俺が暫く女の子と関わっていなかったから、慣れていないって言うのもあるかもしれないが、あれは破壊力が強すぎた。


 そんな訳で俺たちは部屋の鍵を借りて部屋にやってきた。

 そこで早速作業を始めることにする。


「何をやっているんですか」

「ん? あぁ、銃弾を作っている」


 さっきの戦いで銃弾は全部使い切ってしまったので、新しく作らなければならないのだ。

 だけど、十分な材料は無いので、クオリティーとしてはかなり低いものとなってしまうものの、やっと一つ作ることに成功した。


「これが銃弾……ですか?」

「あぁ、銃……そういえばこの世界に銃って存在するのか?」

「銃ってなんですか?」

「なるほどな」


 どうやらこの世界に銃っていうものは存在しないらしい。

 となると、俺の武器はこの拳銃一つのみということになるな。


「まぁ、これは弓で言うところの矢みたいなものだ。これを放って攻撃をする」

「そうなんですか!」


 ハルロートの目がキラキラとしている。そういえばこいつには武器はなかったっけ。だから武器が羨ましいのだろうか。

 なら、ハルロートも自分の身を守れるようにならないといけないから何か武器を買ってやるか。


「そういえば、サツラさんは魔法って知ってますか?」

「魔法? 魔法ってなんだ?」


 なんか大輝の話に出てきていたような気がするが、あの頃は大輝の話を聞き流していた節もあるから、覚えていない。

 こんな状況になるんだったらもう少し真剣に聞いておくべきだったか。


「魔法っていうのは魔力を使って放つ技みたいなものです。基本的なのは攻撃魔法と回復魔法ですね。その他にも色々なジャンルの魔法があるのですが、ものを作る際に役に立つのは製造魔法です。クリエイトという魔法を使えば、自分が構造や、作り方を知っているものならば素材なしでも何でも作ることができるようになります」

「そ、素材なしでもか?」

「そうですね。ただ、かなり魔力を使うので、そんなに乱発は出来ませんが」


 乱発できないにしても、それが使えるならばかない良い。

 今この状況だと素材がなくて銃弾もどきしか作れない。石を基調とした銃弾だが、あまり威力は出ないだろう。


「魔法ってどうしたら使えるようになる!?」

「興味津々ですか?」

「あぁ、教えてくれ」

「そうですね。魔法には詠唱が必要となってきます」

「詠唱?」

「はい、クリエイトなら確かこんな感じだったと思います。我の記憶を呼び覚まし、再現せよ」


 なにやらハルロートが厨二っぽいことを呟いた瞬間、目の前に弓が出現した。

 それと共にハルロートは力が抜けたように床に倒れ込みそうになったので、咄嗟に腕を伸ばして支えた。

 恐らくこれが魔力なるものを使った代償なのだろう。なにやらハルロートの表情を見ているとかなり疲弊しているように見える。つまり、魔力を使うと疲れるということなのだろう。


「このように魔法を使えます」

「今の、詠唱って必ずやらないといけないのか?」

「はい、こうしないと魔力を操作出来ませんので」


 できないならば仕方が無い。

 とりあえず、今ハルロートがやったように俺も口ずさんでみることにした。


「我の記憶を呼び覚まし、再現せよ」


 銃弾を思い浮かべながら唱えると、体から力が抜けるような感覚が走った。

 何かが体の中で動いて、その何かが手のひらから出ていくような感覚だ。俺の仮定が正しければこれは魔力だ。

 そして手のひらを何も無い床へと向ける。

 すると、そこに俺の想像する忠実な銃弾が出現した。


「くっ、はぁはぁはぁ……」


 確かにこれは疲労が凄い。何回も使っていたら倒れてしまってもおかしくないだろう。

 ちらっと横目でハルロートの顔を見てみる。すると、物凄く驚いたような表情でこっちを見ていた。


「初めて魔法を使ったんですよね」

「あぁ、それがどうした?」

「なんですかその魔力容量は!」


 さっきまで疲弊していたのが嘘のように声をはりあげて驚きを露わにするハルロート。

 初めてこんな姿のハルロートを見たので、流石に俺もビクッと肩を震わせて驚いてしまった。


「魔力っていうのは魔法を使っていくうちに鍛えられて増えていくものなんですよ! なのになんですかその魔力容量は! 既に私よりも多いじゃないですか!」

「そんなことを言われても」

「分かっていますよ! 私が才能ないことくらい!」

「そ、それは違うと思うんだが……」


 ハルロートはいじけてベッドの中に潜り込んで行ってしまった。

 うーん。どうして俺の魔力容量が多いのか……魔力に関してはもっと謎があるって言うことなのか?

 まだこの世界に来て間もないからまだ分からないことも多いな。図書館なんかがあったら調べてみる価値はありそうだ。

 遂にここから魔法が出てきます。

 果たして殺羅は初めての魔法を使いこなすことが出来るのでしょうか?

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